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魔王に転生したけど人間に嫌われ過ぎて辛い  作者: へたまろ
最終章:最終決戦!神と魔神
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黒騎士と天使と木乃伊とついでに創造主

中条視点です。

「創造主様!またアイツです!」

「また来たのか!」


 いつもの調子でテキトウエルが部屋に入った瞬間に、入り口の両脇を固めた重装天使が急いで扉を閉める。

 そしてすぐに破壊される扉。

 前回よりも厚みを2倍にして、材質にオリハルコンをふんだんに使っているというのに、

 漆黒の聖剣……いや、魔剣アロンダイトを構えた全身黒い甲冑に身を包んだ男がゆっくりと部屋に入って来る。


「黒騎士って……カッコいいですよね?」

「だまれ!」


 なんだかんだいいつつも、テキトウエルはこの男に対して好意的に見える。

 というか、うちの常備兵は何をしているんだ。


「今日こそスッピン殿を返してもらいますよ?」

「だあ!本人が嫌がってるんだからしょうがないじゃないか!」


 この男の目的は、俺に仕えている勇者の1人である聖者ヒルデらしい。

 どうやら、惚れているのだろう。


「いや、師匠を救うのは弟子の役割です」

「半人前がでしゃばるな!」


 そして黒騎士の言葉をヒルデがバッサリと切り捨てる。

 いやいや、この男が半人前なら一人前はどれほど?というくらい馬鹿にならない力を持っている。

 元は人間で勇者だと聞いたから、神気を使って操ろうとしたことがあったが……


――――――

「くっ……これは、小癪な真似を!」

「ふははは!いかな田中に降ろうと、所詮は元勇者!その刻印がある限り俺の手からは逃れられんぞ!」


 そう、あと一歩というところまで追い詰めたと思ったのに……


「仕方ない……騎士とは守るもの!そのためならこの程度!」


 そう言って黒騎士の身体から黒い闇が溢れ出たかと思うと、腕に刻まれていた刻印がKNIGHTに変化し、神気を一瞬でかき消された。

 なにそれ?


「ふははは、こうなってしまっては以前のように優しくは無いぞ」

「いや、出会ってから今まで優しくされたことなんてって、危ない!」


 黒騎士の放った黒い斬撃が掠っただけで、神気を大幅に吸い取られた。

 なにそれ?マジで?


「全てを喰らい尽くせ!イビルブレイク!」


 詠唱遅延?

 放ってから詠唱とか、ずるってもう1発撃ったのか!

 慌てて半身をのけぞらせてそれを躱す。

 そして視線を戻すと目の前から黒騎士が消えてた。


「チェックメイト!」

「まだ早い!」


 首筋に剣を当てられてゾクリとしたものを感じたが、首を狩られるより先に何者かが黒騎士を弾き飛ばしてくれたらしい。

 でかした、褒めて遣わす!


「残像だ!」

「こっちもよ!」

 

 ん?

 その何者かはテキトウエルだったが、吹き飛ばされたはずの黒騎士の姿がかき消えたかと思うと、テキトウエルの姿も消え去っていた。

 というか、テキトウエル強くない?


「やるな!」

「そっちこそ!」


 そして適当な間合いを取る二人。

 その間には空気も凍るような闘気がぶつかり合っている。

 そして消える二人。

 何もない空間から聞こえてくる斬撃のぶつかり合う音。

 いや、早過ぎじゃないかな?

 俺創造主名乗ってるけど、全然見えないんだけど。


「そこまでだ!」


 そしてその間に割って入る第3の人物。

 右手の人差し指と親指で黒騎士の剣を掴み、左手に持った剣でテキトウエルの手刀を受けていた。

 うん。木乃伊だね。


「くっ、俺もまだまだという事か?」

「そうだな……それと私は大事な仕事があるから、まだ戻らんぞ?」


 まだってなんですか?

 その大事な仕事が碌でも無い事に思えて仕方が無いんですけど?

 信じて良いんですよね?


「私はそこの中条という男に操られているからな、そこんとこよく理解してくれ」

「えっ?ちょっ!待って!キャー!」


 そう言って左手に持っていた剣を消すと、テキトウエルを掴んで黒騎士にぶん投げる木乃伊。

 そんなカッサカサに乾いた肉も無い皮がへばりついた腕のどこにそんな力がって勢いで、ぶん投げた。


「くっ!」

「馬鹿が!視界を封じられただけで狼狽えるな!ちなみに創造主に操られているからな?」


 テキトウエルを両手で受け止めた黒騎士の背後から、木乃伊が蹴りを放つ。

 防ぐすべもなく弾き飛ばされる黒騎士と天使。


「常に気配感知を発動しとけと言っただろ!足元がお留守だぞっと!」

「その手は食いません!」

「本当にお留守だな」


 木乃伊の言葉に対して、視線を一切下に落とす事の無かった黒騎士が、高速……いや、音速の水面蹴りを喰らってすっころぶ。

 いやだって、足が通り過ぎるコンマ数秒後にシュッていう風を切る音が聞こえたからね。


「未熟者め!出直して来い!ちなみに創造主に操られているからな?私は」


 しつこいですよ?

 なんでそこ何回も強調するの?

 そして光に包まれて姿を消す黒騎士。

 光を操るアンデッドってどうなのかな?

 まあ、聖女で勇者だから良いのかな?


――――――

 という事でこの男はすでに俺の神気というか理というか常識から外れた存在だ。

 その後もこうやって何度も俺からそこの木乃伊を奪いに来ている。

 ちなみにあまりにも鬱陶しいから木乃伊に対しては、精神汚染を解除したにも関わらず。


「うわっ、おのれ中条!まだ私を操るか!」

「くっ!スッピンさん前より強くなってないですか?」

「それは、そこの男のせいだろう。腐っても創造主!配下の勇者に対して絶大な強化を施しているのだろう!やめろ!うわあああ!ブレイブスラッシュ!」


 うん、操ってもなければ強化も施してないからね?

 というか、いま貴女が使ってるブレイブスラッシュの神気は、自前の神気だよね?

 まあ、突っ込んだら、なんかよく見破ったなとか言って襲ってきそうだから、あえて突っ込まないけどね。


「あっ!カインさんだ!」


 そしてタイミング悪く入って来るチビコちゃん。

 彼女もどこかおかしいんだよね。


「あっ、チビコちゃん!久しぶり!」

「よそ見とは余裕だな!」

「えっ?ちょっ!」

「侵入者は排除ですー!【田中火球(ファイア~ボ~ル)】」

「あぶなって、今度はチビコちゃんの魔法か!くっ!ってうぎゃっ!」

「未熟者が!出直して来い!」


 一瞬チビコちゃんに目を向けた黒騎士に対して、木乃伊が斬撃を放ったが、黒騎士がそれをどうにか躱したところにヘロヘロの火球が飛んでいく。

 確実に手に持った盾で防いだはずなのに、なぜか盾を迂回して黒騎士の顔面にぶつかったかと思うと青い炎が全身を包み込む。

 即座に木乃伊が転移魔法をぶっこんでどこかに飛ばすが、その火球は俺でも避けられる自信が無い。


「あの、ヒルデさん?」

「なんだ変態!」

「なんでもないです……」


 ヒルデさんに黒騎士の事を聞こうかと思ったけど、とてもじゃないけど聞ける雰囲気じゃなかった。


「あっ、チビコさんこんなところに居たんですね!ダメですよヘンタ……中条様のお邪魔をしたら!」


 そして遅れて入って来る天使……テキトウエル。

 こいつは暇なのか?

 いっつもここに出入りしているけど。

 というか、玉座に無断で出入りするとか無礼過ぎるだろ。


(あの人は変態だから近付いちゃ駄目って言ってるでしょ)

「私はウララとスッピンさんとテキトウエルさんと一緒が良いの!」

「じゃあ、みんなでお茶会にしましょうか?」


 聞こえてるからな?

 俺の事を変態って言ってるだろ?

 というか、完全服従のはずの天使の癖になんでこいつはこんなに自由なんだ?


「ヒルデ様もご一緒にどうぞ、それからウララちゃんも美味しい葡萄があるからおいで」


 テキトウエルの言葉にウララが慌てて掛けていく。


「うむ、そうだな。たまには息抜きも必要か」


 そう言って木乃伊も部屋を出ていく。


「あ、置いてかないでよ!」

「はいはい」

「手!」

「はいはい、チビコちゃんは可愛いわね」


 チビコも慌ててテキトウエルの横に並ぶと、スッと手を差し出す。

 そして玉座にポツンと取り残される俺。

 まあ、護衛の天使が二人入り口に居るが、こいつら侵入者に対して何にもしないからな。

 扉を入るのを阻止するのには全力だが、一度は行ってしまえば手を出さないとか完全にプログラム間違えた。


――――――

「あれっ?こんなとこに扉なんてあったか?」


 誰も居なくなったので自室に帰ろうかと思って玉座の間から出ると、すぐ隣に扉があった。

 今まで見た記憶が無い。


「私の部屋に何か用ですか?」


 と思ったら扉が開いて、中からテキトウエルが顔を出した。

 えっ?お前の部屋って玉座の隣だったの?


「いや、こんなところに部屋なんてあったかなと」

「ボケるには……いや、ボケるには十分なお歳でしたわね。いま女子会の最中ですから遠慮してもらえますか?」

「あっ?いや、ああ、すまん」


 取り合えず腑に落ちない事だらけだが、中からこっちを見る木乃伊と狐の目が怖かったから退散した。

 チラッと見えた室内には何かモニターのようなものが並んでたけど、気のせいだよね?

 もう一度後ろを振り返ると扉が消えてた。

 うん、今日はもう寝よう。


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(仮)邪神の左手 善神の右手
宜しくお願いしますm(__)m
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