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魔王に転生したけど人間に嫌われ過ぎて辛い  作者: へたまろ
最終章:最終決戦!神と魔神
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創造主中条の憂鬱

「西田、北田、西野、南野、それとヒガが裏切りました」

「くそっ!」

 

 中条が手に持ったグラスを地面に叩き付ける。

 地面にぶつかって割れるか否かといった瞬間に、影が走り去りグラスを回収する。


「割れたら掃除が大変ですので、お気を付け下さい。もし、破片を取りこぼしでもしてチビコに怪我でもさせたらねえ?……分かってますよね?」


 そうスッピンである。

 中条城の玉座の間には、中条とスッピン、チビコ、2人の勇者と4人の天使が居る。

 まあ、天使といっても中条が作り出した疑似生命体に過ぎないが。

 それも、雰囲気作りといった役割が殆どである。

 とはいえ、中野の力を取り込んだ中条の強化により、魔王を遥かに凌ぐ力は持っているだろう。


「そうですよ変態!これ以上チビコちゃんに何かしたら、私達だって黙ってませんからね」


 無駄に自我を持たせた事を早速後悔する中条。

 決して寂しさを紛らわせるために、話し相手として作った訳では無いが、自分には絶対服従という項目をインプットした割にはあっさりとチビコに取られて寂しい気持ちになる。


「まあ、こちら側にはスッピンとチビコが付いた訳だから痛み分けという事にしておくか」

「かたや四天王を全て取られ、かたや幹部1人と村娘1人を手にして何が痛み分けなんだか……」


 勇者の1人がボソッと呟く。

 彼の名は緒方(オガタ) (イサム)

 そう、田中が中央の世界に降りて最初に救った勇者である。

 ちなみに、田中による超強化を施され、その他大勢からはみ出る程度だった召喚勇者だった彼は頭角をメキメキと現し、神気武装なるものを与えられて側近の一人として重用されている。

 勿論田中派だ。

 そしてその反対側に立つもう一人の勇者は、エレイン。

 そう、こちらは田中に陶酔する元魔法使い筆頭勇者である。

 当然田中派である。


 すでに両脇を裏切り者で固められているとは露知らず中条は、イサムの言葉に頭を抱える。


「言うな……せめて気持ちだけでも」

「はあ……これで、創造主様って言うんだから、なんだかなー」

「あっ、分かりますよ!自分も、ここに来てからなんか創造主様に対する想いというのが、大分薄れて世俗的なものになってきてますから」


 中条のみっともない姿に溜息を吐くイサムと、それに同意するエレイン。

 その中条の肩で、慰めるようにほっぺに噛みつくウララ。

 そして、その姿を恨めしそうに眺めるチビコ。


「ねえスッピン。今なら私【無間地獄(エンドレスヘル)】が撃てそうな気がする」

「あらあら、本当にチビコは成長したわね。でも、他の人にも影響が出るかもしれないから、それは止めておきましょうね」


 すぐそばから聞こえる無邪気な少女の、恐ろしい発言に思わず身震いする中条。

 何故か、自分の城なのに凄く疎外感を感じる。

 前回、あられもない姿を少女の前に晒したのは大失態だったようだ。

 いま、彼の評価は近しい者の中でストップ安に張り付き状態である。


「西の大陸、東の大陸、南の大陸、北の大陸ともに全て敵の手に落ちました」


 そして、さらに追い打ちをかけるような非情な情報を持ってくる部下。


「なんでだよ!あそこにはそこそこの戦力があったはずだろう!」

「いえ、北の大陸はクライフォードという勇者が率いる勇者バルゴ、カノンの3人によって全ての勇者が洗脳から解放されている様子」

「たった3人でか!」

「はい、しかもクライフォードはセオザラを名乗る魔族の配下ということらしいです」

「どうせ田中の手のものだろう!」


 続けて上げられる報告も全てセオザラ絡みの勇者による謀反で、勇者達が解放されているという話だった。

 ヨエモンとフレイの二人に南の大陸を、アマネとカインに西と東の大陸を落とされたとの情報を聞き、中条は玉座の肘置きを思い切り叩き付ける。


「セオザラとは一体田中のなんなのだ!」


 田中本人である。


「しかも開放された勇者に対して、北の世界から4女神による加護が与えられ勇者としての力も残しているとか。残された兵力はこの大陸に居る600名のみになります」

「くそっ!裏切り者どもが!どうせ田中に騙されているに違いない!」


 いや、どちらかというと騙していたのは中条の方では?とその場に居たほぼ全員が首を傾げる。

 その姿に思わず居心地の悪いものを感じたのか、中条が咳ばらいをして誤魔化す。


「田中の居場所はまだ分からんのか!」

「さあ?」


 中条が怒鳴りつけるように質問するが、報告に来た勇者は首を傾げる。

 見つかってたら、既に報告してますよと言わんばかりに小ばかにした表情である。


「このままじゃ世界を手にするどころか、確実にやられる。もうなりふり構ってはいられないか」


 中条が諦めにも似た表情を浮かべる。


「本当はこの手は使いたく無かったんだがなあ……」


 そしてニヤリと笑みを浮かべる。

 中条も言っても転生創造主である。

 その能力は田中に及ばずとも、中野を凌ぐほどにはある。

 いや、事実聖属性、神気という2点のみに置いてはその右にでるものは居ない。


「ゲームもここまでか。本当は勇者を使ってのシミュレーションゲームもどきをもっと楽しみたかったのだが、こうさせたのは田中……そして魔族だからな!」


 そう言って立ち上がると、両手を天に翳す。


「何故、俺が創造主と呼ばれているか思い知るが良い」


 そして、演技がかったセリフと動作で、その身に秘めた全ての神気を解放させる。

 周囲の3文芝居を見るかのような冷ややかな視線に気づくことなく。


「今こそ目覚めよ!全ての勇者よ!」


 そして世界を越えて放たれる神気。

 そう、全ての人間に向けられて放たれたそれは、全人類を洗脳し、また勇者としての力を開花させるに足りえる程の力だった。

 彼もまた、チートを持つ転生者の1人なのである。

 ……田中さえ居なければ。


(【エレメンタルブレイク】)


 どこからともなく聞こえて来たのは、属性無効化の魔法。


「ん?」

『ブッ!』


 その手から放たれた神気は城の天井を貫き、爆散した瞬間に霧散した。

 そして笑いを堪えきれずに吹き出すスッピン、イサム、エレイン、天使達。

 チビコだけは状況が分からず、キョトンと首を傾げている。

 

(ああ、今から全人類相手するのとか面倒臭いから、それはちょっと遠慮して)


 そして、城内に響き渡る男の声。

 

(まあ、そのうち次から次へと刺客が現れると思うから、頑張って対応してよ!俺の気持ちも分かるだろうし)


 それだけ言い残して消え去る気配。

 

「たなかあああああああ!」


 中条の叫びが、狭い室内にこだまする。

 それにしても酷い。

 まさかの奥の手を、属性無効化の魔法だけで防ぐとか……

 流石に中条に対して、少し可哀想になってくる面々であった。


 直後、何故か雲より上に位置している中条城が突然の雷雨に襲われて、丁度天井に自分で穴を空けた中条の上にだけゲリラ豪雨と暴れ雷が降り注いだのは偶然だ。

 これに関しては田中が何かしたわけでは無い。

 中条は創造主に転生するだけあって、ちゃんと持ってる男なのであった。



短めですが、進行回終わりです。

次回より、いよいよ田中による意趣返しが始まります。

中条主役の辛いシリーズです。


宜しくお願いしますm(__)m

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新作更新始めました!
(仮)邪神の左手 善神の右手
宜しくお願いしますm(__)m
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