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魔王に転生したけど人間に嫌われ過ぎて辛い  作者: へたまろ
最終章:最終決戦!神と魔神
151/172

覚醒ヒガ

「あいてて……」

 

 西野、南野をケビンがグチグチ、ネチネチ、ボコボコ、バキバキ、ボキボキ、ギッタンギッタンのグチャグチャにしばらくケンチキ片手に苛めてたらヒガが目を覚ました。

 そして周りをキョロキョロと見渡すと慌てて立ち上がる。

 その表情にはどこか不敵な笑みを浮かべている。

 まさかとは思うが、今更感満載なこの状況で反旗を翻したり……


「フフフ、皆さん勢揃いでこれは都合がいい」

『はっ?』


 しやがったわ!

 ヒガが突然笑いだして何やら言い出したので、全員がキョトンとした表情を浮かべる。

 いや、どう見ても第一回チキチキ勇者北の世界侵略大会は大失敗に終わって、綺麗に幕引きしただろ?

 あれか?これは、ヒガにチートをさせたいって外の思惑が働いてたりしているのか?


「あっ、アニキお久しぶりでんな。わい裏切りましたんで。というか、元からこっちやってん」


 ああ、こいつは本当に……

 つい、眉間を押さえて頭を振ってしまうようなセリフをはきやがるわ!

 しかも不敵な笑みを浮かべて、俺の方に近づいてくる。

 うん、知ってる。

 さっき、トウゴさんから報告受けたから。


「うん、知ってる」

「えっ?」


 思ったままを口にした俺の返事に、一瞬ヒガがたじろいだがすぐに表情を引き締める。

 そして、こっちに向かって人差し指をビシッと突きつけてくる。

 真実はいつも一つって、蝶ネクタイしたイタイ眼鏡小僧みたいなポーズだ。

 いまどき、あんな恰好した小学生が居たら格好のターゲットだわ。


「ハハッ、流石アニキでんな。やったら話が早いわ。ここで死んでもいますわ」

「えっ?」


 ヒガの言葉に、思わず本気で驚いた表情を浮かべてしまった。

 うっすらとそうじゃないかと思ってはいたが、どうやらケビンにボコボコにされたことを無かったことにするどころか、完全に記憶が飛んでるわ。

 ケビン……やりすぎだ。


「なあ、ケビン?こいつ大丈夫か?」

「ヒガが大丈夫かわワカンナイけど、ケンチキは大丈夫ダゾ!」


 思わずケビンに無表情で問いかけたら、こっちに目もくれずに答えるケビン。

 うん、ケビンが全く当てにならにことが再認識できたわ。

 ケビンにボコボコにやられてた事なんか、頭の片隅にも無いんだろうな。


「なんで、ここに居るのかよくわからんけど、全員殺したらワイが勇者筆頭間違い無しやな!四天王の他の3人さんもその様子やと、アニキにやられたみたいやな?西野も南野も北田も大した事あらへんのう」


 黙れ四天王最弱!

 そう言って指をボキボキと鳴らし始めるヒガ。

 その様子を死んだ魚のような眼で見つめる真四天王3人。

 おい!それは俺のポジションだ!

 一方ヒガは徐々にその体躯が大きくなっていき、いつの間にか髪が伸びて金色の輝きを放っている。

 うん、それアカンかもしれん。

 特に茶髪が伸びて金髪になる下りがNGっぽい。

 そしてそんなヒガの態度に、この場に居合わせた全員が苦笑いだ。 


「おいヒガ、悪い事は言わんから早く謝っとけって」

「今更ビビったって遅いでー!」


 トウゴさんの警告を無視したヒガが、一気に魔力を解放すると額から4本の角が生える。

 おお、これって完全に魔人化してる。

 魔王を倒して魔人化しつつあったトウゴさん一行だが、あくまで人間との劣化ハイブリッドだったがヒガだけは完全なる魔人化を手にしたのか。


「西野はん、南野はんすいません。実は自分、こないだ覚醒しましてん。魔人化出来るようになったんですよね。つーわけで、あんたらの時代はもう終わりやで!これからは元魔王勇者改め、魔人元魔王勇者のヒガの時代や!」

「俺らの時代って来た事あったっけ?」

「ああ、中野の下に付いた時はそこそこキてたんじゃね?」

「ああ、そういえば、あの時は色々と調子乗ってたわ」


 西野と南野がそんな会話をしていると、ヒガは解放した魔力を周囲に放って衝撃波のように飛ばす。

 その魔力は、明らかに全北の魔王キタを遥かに超えているように見える。

 とはいえ、あくまで魔王と比べて少し優れた程度にしか感じないけど。

 とはいえ、強化を施してないアズマさんとあくまで魔王と勇者を統合したレベルの西野と南野、そして魔王を少しだけ上回る勇者の北田が弾き飛ばされる。

 ちなみに改造ケビンはひたすらケンチキ食ってる。

 同じくキタさんを越えているムカ娘は少し辛そうにしながらも、どうにか踏みとどまり汚いものを見る目をヒガに向けている。

 ちなみに魔力を注いだトウゴさんもケビン動揺余裕なようで、困ったような苦笑いで生暖かくヒガを見ている。

 俺は……面白い事になったと、驚いたようなビビった表情を浮かべてみた。


「まさか……魔人化したヒガがここまでだとは」

「フフフ!今更ビビったって遅いでー!」


 それはさっき聞いたわ。

 まあ、俺のセリフの真意はここまでしょぼいとはって意味だけどな!


「おいタナカ?ケビンやり過ぎたか?ヒガがおかしくなった」

「いやいや、これはヤバいだろ?ここまでだぞ?」


 ようやくヒガの異常に気付いたケビンがオロオロとし始めるが、俺は取り合えず本音で返事をする。

 ヤバい……これは確かにヤバい!

 勘違いパイセンヒガ再来だ!


「取りあえず、ケビンはそっちに避けといて?これでも、昔の馴染みや。今回は見逃したろ」

「ナンダト!」

「ヒッ!」


 ヒガのあまりに上からの言葉にケビンが青筋を立てて威圧する。

 その迫力に、思わず表情を強張らせて下がるヒガ。

 ああ、本能レベルでは力の差を覚えているのか。


「ケ……ケビン!下がってた方がいい。これは……プッ……」

「エエ?まあ、タナカがそう言うならケビンあっちで見てるから、ケンチキも少しクレ!」


 ケビンにケンチキをもう10ピース程渡すと、ホクホクで離れて行ってくれた。


「あ……主様……あのものは、そのなんと言いますか……主様が相手なさるおつもりですか?ここは妾に……」

「いや、良いから!これは俺じゃないとちょっと……」


 ムカ娘の言葉を遮って、俺はムカ娘も下がらせる。

 確かに先ほど北田に後れを取ったとはいえ、ムカ娘も一応は回復させたときにさらなる強化を施してあるからな。

 いろいろと、アレなんだろ。 


「トウゴさんも!」

「あ?ああ!はいはい、わかりました」


 トウゴさんにも声を掛けると、一瞬逡巡したあと何かを理解したのか、やれやれと言った表情で後ろに下がってくれた。

 さすがトウゴさん。

 社会人経験も営業経験もあるだけ、空気を読むレベルがこのメンバーの中では一つ抜きんでてるな。


「おお、おお!かっこいいのうワレ?俺一人で十分ってか?なんや、ワイの元上司やってて調子乗っとんちゃうぞコラッ!」


 俺が皆を下がらせたのに満足したのか、ヒガが調子に乗って凄んでくる。

 ちょっとイラっとしかけたが、とことん調子に乗らせた方が楽しそうなので取りあえず汗を掻くふりをする。

 後ろでムカ娘が、それだけで殺せそうな程の殺気を放っているが目で合図して押さえさせる。

 ケビンも若干イラッとしてるようで、ケンチキを食う速度が上がっている。

 ヒガの力が急上昇した事に本気でビビっていた西野と南野は、ムカ娘をチラッと見た直後若干憐れみを含んだ視線に変わっていた。

 トウゴさん?ずっと苦笑いだよ。


「たかが魔人化してちょっと強くなった程度で、調子に乗るなよ?」

「ちょっと?とことん調子乗ってんじゃねーぞコラッ!いちびっとったらいてまうぞワレ!」


 どうやったら最大限ヒガに調子に乗らせられるのか、手加減が微妙に難しいラインだ。

 それほどまでに、ヒガのパワーアップは微妙だった。

 とはいえ折角のヒガの見せ場だし、どうにか良い所を見せてやらないとな。


「5分や!5分で決めてやるわ!」


 ヒガが掌を差し出して高々と宣言する。

 そして差し出した掌を上に持ち上げて振り下ろす。


「オラッ!ブレイブスラッシュや!」

「くっ、詠唱破棄だと!」


 ヒガが右の手刀で放ったブレイブスラッシュがもろに直撃して、俺の身体が大きくのけぞる。

 取りあえず出だしは上々だな。


「イビルブレイクつったっけ?これもくらっとけ!」


 さらに左の手刀で放った黒い斬撃が俺の右の肩口を切り裂く。

 そう言えば、カインの必殺技を見た事もあったっけ?

 肩から血が噴き出すがそれを手で押さえて、ヒガを睨み付ける。

 一応反撃もしとかないと、怪しまれるか。


「【超手加減斬(ナノブレイク)】!」

「弱いわっ!」


 俺が死に物狂い(笑)で放った斬撃を、ヒガが片手でかき消す。

 そしてニヤニヤとした笑みを浮かべる。

 いま、こいつはこっちに転移して一番楽しい時間を過ごしてるんだろうな。


「どや?わいも本気出したら強いやろ?わいの部下になって、毎日料理を作るなら許してやらんでもないで?」

「誰がっ!くっ!」


 ヒガの言葉に、俺が否定しようとした瞬間無詠唱のブレイブスラッシュに反対の肩口を切られる。


「なあなあ、ヒガってナノの意味分かってないのかな?」

「たぶん……」


 西野と南野が何か言ってるが、あいつらって本当に緊張感の無い奴等だよね。

 どうやら、2人も茶番に気付いたっぽいけど、余計な事言うなよ?

 俺がにらみを利かせると、2人が冷や汗を流しながら顔を青くする。

 そして顔を青くした2人を見たヒガがさらに勘違いしたように顔をいびつに歪める。


「フ……フハハハ!弱いで?弱いでタナカはん!なんで、わいはこんな奴の下についとったんやろな?ほれほれほれ」


 馬鹿笑いしながら次々と放たれる斬撃に体が次々と切り刻まれる。

 それどころか、途中で徐々にヒガの攻撃が強くなっていきついに右の手首から下が斬り飛ばされる。


「ぐはっ!」

「ほっ、やりすぎてもうたわ。本当にもろいのう?ただの魔族っちゅうんわ」


 右手を押さえて、その場に膝を付くと目の前に一瞬で詰め寄って来たヒガに腹を蹴り飛ばされる。

 5~6m吹き飛ばされて、俺はその場でえづく。


「ぐええええ」

「おいおいおい!もう終わりちゃうやろ?」


 ヒガはそう言って、俺の髪を掴んで持ち上げると今度は左手を黒い斬撃で斬り飛ばす。

 そして、ヒガの抜き手が俺の胸を貫く。

 ちなみにアズマさんだけは、終始気が気じゃないといった様子だ。

 ふと見ると、ケビンがケンチキをムカ娘に一本分けていた。

 呑気か!

 トウゴさん?ずっと苦笑いだよ!

  

――――――

10分後


「はあ……はあ……もう終わりちゃうやろ?」

 

 ヒガが肩で息をしながら、俺の顔面を殴り飛ばす

 10分間、しっかりとヒガにボコボコにされ続けてる俺。

 片手は完全に千切れ飛び、口から血を吐き出す。

 それでもどうにかといった様子で立ち上がる。


「まだ……まだ……だ!」

「はあ……、なかなか根性だけは座っとるやないけ?」


――――――

10分後


「ぜえ……ぜえ……うぐっ、もう終わりちゃうやろ?」

「ま……だ……だ」


 あっ、ケビンの方見たらあいつ、なんかムカ娘にカブトムシ渡されてめっちゃはしゃいでるし。

 西野と南野……寝てねーか?

 アズマさんは、なんかえって顔になってきた。

 トウゴさん?苦笑い通り越して無表情で呆れてるよ!

 ちなみに左手も斬り飛ばされ、目も片方つぶされ息も絶え絶えの俺。


――――――

10分後 


「もう終わりか?」

「はひゅー、はひゅー!まだや!」


 ついに四肢欠損状態で、顔もボコボコで地面に転がされている俺の言葉に、膝に手を置いて肩で息をしていたヒガがなんとか答えて立ち上がる。

 それから、イビルブレイクを放ってくる。


――――――

10分後


「まだやるのか?」

「な……なんで……や……、いや、ま……まだや!」


 とうとう首だけの状態で、完全に体を吹き飛ばされ、両目も潰れ頭からピンク色の何かを零している俺の言葉にヒガが息も絶え絶えに答える。

 ケビン?寝てるよ?

 西野、南野?寝てるよ?

 アズマさん?笑ってるよ?

 ムカ娘?なんかマイスイートキタノsポエムって書かれた手帳に何やら書き込んでるよ?

 トウゴさん?ちょっとイライラしてるかも。


――――――

10分後


「もう終わりか?」

「……ゼヒュー……ゼヒュー……ゼヒュー……」

「そうか、終わりか……」


 とうとう、俺の言葉に返事もかえせなくなるヒガ。

 そして、パチンという無情の音。


「残像だ!」

「えっ?」


 首だけだった俺は、取りあえず幻惑を解くと無傷の状態でヒガの前に転移して全力のデコピンを放つ。

 3万4千回転くらい地面を転がって、1万3千本の木をへし折って、標高3000m程度の山を4っつほど貫いて、5つ目の山にめり込んだ状態でヒガが止まる。

 久しぶりに全力のデコピンを放ってみたが、思ったより強くてちょっと焦ったわ。

 でもまあ、ヒガだし良いか。

 それからヒガを魔法で手元に呼び寄せる。

 残像だって言いたかっただけで、残像でもなんでもないんだけどね?

 HAHAHA!

 取りあえず、ヒガも楽しんだようだしもう一度立場を分からせてやらないとね。


「なあ?お前さあ?本当に俺に勝てると思ったの?」

「……」


 あれ?

 よく見ると、ヒガの身体から生命力が全く感じられなかった。

 やべっ、うっかり殺してしまったみたいだ。

 取りあえず生き返らせとこう。


「フフフ、皆さん勢揃いでこれは都合がいい」


 生き返ったヒガが、さっそく記憶を全て置き去りにしてきたらしい。


「うっせえ!雑魚が!」

「ドイヒー!」


 折角の生かさず殺さず、ヒガを持ち上げて落とす作戦が徒労に終わった八つ当たりチョップをかますと、そのまま首まで地面に埋まってしまった。

 まあ、ヒガだし良いけどね。

 ケビンとムカ娘が楽しそうに日本食の話をしてたので、ちょっと癒された。

 





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