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待望の後輩が俺より強かった……辛い~ヒガの場合~

閑話です…取りあえず、しばらくはゆったり魔王ライフに戻ります。


「ついにキタさんが倒れたか……」

「ああ西の……だがキタさんは我ら魔王の中でも最強……魔王の誉れだ……」

「そのキタさんを倒したとなると、今回の勇者は余程優秀だったのだな……」


 キタさんが倒された……そのニュースは5大世界それぞれの魔国を駆け巡り、魔族たちに衝撃を与えた。

 唯一原初の魔王にして、純血の魔王キタさんが倒されたのだ。


「あのー先輩方良いっすか? ってことは次の魔王はそいつがなるんすよね?」


 俺は比嘉、元東の勇者として召喚され東の魔王を倒し代わりの魔王となった。

 いわゆるチートってヤツを貰って、異世界召喚ヒャッハーして同時に召喚された仲間たちと魔王を倒しに行った。

 唯一の誤算は魔王を倒した後、凱旋の勇者としてお姫様と結婚ではなく……闇の瘴気に包まれ仲間たち4人全員が魔族に変質してしまったことだ……

 しかも止めを刺した俺が魔王になるというオマケ付きで……すぐに王国に向かって弁明したが刃を向けられた。

 掌を返したかのように蔑まれ、罵られ、辛かったぜ……


「じゃあ、やっと俺にも後輩が出来たって事っすよね?」


 それから俺の転移した世界の他にも世界があって、それぞれ魔王が統治していることを知った。

 ちなみに、西の魔王と、南の魔王は異世界転生者だ……

 しかも一人で魔王討伐を果たしたとか……

 転移と転生でそんなにポテンシャルが違うものなのだろうか?


「ふっ……魔王に変質したお前でもキタさんの足元にも及ばなかったくせに」

「まあ、せいぜい頑張って躾けるんだな!」


 二人がクスクス笑いながら俺を馬鹿にする。

 俺が魔王になったのは80年前だ! 昨日今日魔王になった奴になんかに嘗められてたまるか。


「バッ! バカにしないでくださいよ! これでも日本じゃ火の玉の比嘉って呼ばれて地元じゃ恐れられてたんすから!」


 日本に居た頃は結構ヤンチャしてた。

 喧嘩じゃ負けな……いやちょいちょい負ける事もあったが、トータルでは勝ち越しだ!


「騒がしいな……」


 そこに大魔王の野郎が現れる。

 こいつだけは正体が分からねー。

 いっつも全身を黒いローブで身を包み、フードの中は吸い込まれるような闇だ。

 底知れない力を持っていることだけは分かる。


「これは失礼を」

「すみません」


 いっつも俺に偉そうにしてる二人が、こいつの前だと借りて来た猫みたいに大人しくなる。

 少しだけスッとする瞬間だ……こんな自分が辛い……


「新しい北の魔王だが……こいつは異質だ。勇者では無い」


 大魔王がなんか面白い事言ってる。

 基本的に魔王を倒せるのは神の加護を得た勇者だけだ。

 それも、転生者や転移者レベルじゃないと不可能では無いがかなり難しいって話だが。


「大魔王様? どういう事でしょうか?」


 西のが聞き返す。

 確かに気になるっす……勇者じゃないのに魔王倒すとかどういう事だ?


「お前たちと同郷の転生者だ……だが、奴は転生した瞬間から魔族だった」


 ええ……転生した瞬間に魔族って事は、周り魔物とか魔族だらけってこと?

 そいつは辛いわ。

 俺ですら魔王になって周りの奴らに慣れるまで1年くらい掛かったのに。


「馬鹿な! ……はっ、申し訳ありません。ですが、女神の加護を持たない魔族で魔王を倒すというのは単体ではほぼ不可能では? もしかして他にも仲間が?」

「過去に魔族による下剋上での魔王の代替わりが全く無かったわけでは無いですが、いずれも軍を纏めてのクーデターや幹部数人での不意打ちだったと聞いておりますが?」

「いや……一人でだ……」


 二人が唖然としている。

 そりゃそうだろ。

 産まれて間もない魔族が、最強の魔王キタさんを倒したっていうんだから信じられないよな……それも一人で。

 キタさん……結構俺には優しかったのにな……

 もう会えないかと思うとちょっと寂しくなった……辛い

 そして思考が魔族寄りになってる自分も辛い


「しばらくは様子見だ……折角4人揃ったと思ったが……こんな事態になるとはな」


 大魔王がそれだけ言うと闇に姿を消す。

 くっそ、なんか俺より大物臭がプンプンするぜ。

 期待の大型新人現るってか?


 大魔王が消えた後、残された俺たちを静寂が包み込む。


「くっ、ままならんものだな……」

「ようやくこれで準備が整った思ったのにな……」


 他の二人が苦虫を噛み潰したような表情をしてる。


「あー、ちょっと俺が行ってきましょうか? ついでに新人に魔界の厳しさを教えてやろうかと思って」


 だがどうせ生まれたての魔族だ。

 召還勇者として鍛え抜かれた後、魔王に変質してさらに80年研鑽を積んだ俺に勝てるとも思えないしな。


「大魔王様は様子見だとおっしゃった……」


 西のに睨まれる……やべー、怖えー……チビリそうだわ。


「いや、面白い……奴の実力を測る良い機会だ……どうせ魔王に魔王は殺せんしな……馬鹿が居て助かった」


 くっ……悔しいが今の俺じゃどう逆立ちしてもこの二人には勝てねーしな。

 だが、あくまで今の俺ではという話だ……

 そもそもこっちは異世界転移で一緒に来た3人の仲間も魔族になっている。

 軍団としての力は俺の方が上だからな……

 悲しいかな、それでもこいつら一人で4人纏めて血祭にされるくらいの実力差はあるが……

 なんでそんな事が分かるかって?


***

「貴様が新しい東の魔王か?」

「あっ? 誰だよオッサンたち?」


 俺が魔王になって半年くらいして、二人の黒ずくめの男達がやってきた。

 どうせ俺を倒しに来た勇者だろ?

 ぶっ殺してやっよ!


「フッ……今度の魔王は猿か……期待外れだな……」

「しかもその髪色といい目の色といい雑種か」


 二人が馬鹿にしたように俺を笑う。

 確かに俺の親父はアメリカンだよ! でも誇りも持ってんだよ!

 つーかハーフってカッコよくね? 俺何気に自慢なんだけど?

 雑種とかヒデーな!


「あっ? テメーら調子乗ってんなぁ? おい、お前ら! ちょっとこいつらに口の利き方教えてやろうぜ」


 俺が一緒に仲間になった3人に声を掛ける。

 1人はアメリカ人、残りの2人は純粋な日本人だ。


「あの2人のどちらかが魔王だったなら、まだ見込みもあるというものだが……」

「南の? いかがする?」


 南のと呼ばれた男が日本人の2人を見て呟く。


「西野お前に任せるわ……なんか気合入れてきたのにガッカリだわ」

「おいっ、いきなり素に戻るなよ! 1人だけ芝居がかった喋りとか恥ずかしーじゃねーか!」


 二人がなんか言ってる。

 なんか今のイントネーションって西のじゃなくて、西野さんって聞こえたよーな……

 つかお前ら人ん家に殴り込んできて調子乗り過ぎだわ。

 殺す! 全殺しじゃ! 生まれて来た事後悔させてやっよ!


「決めた! お前らぶっころーす!」


 俺が全力の火炎魔法をぶち込むと、元戦士のアメリカン魔人が斬りかかる。


***

「なま言ってすんませんしたー!」


 いま俺たちは土下座している。

 わずか3秒で4人全員半殺しにされた……

 あーあ……元魔法使いの奴、男の割に綺麗な顔してたのにボッコボコに腫れてるなー……俺もだけど……


「お前、一応魔王だから許してやるけど、当分雑用係な?」

「えっ? えっと……」

「な?」


 怖い……めっちゃ下から覗き込まれて、ドスの利いた声で脅される。

 地元じゃ俺がその立場だった……事もあったが、やられる側ってこんなに怖いのね。

 もうちょっと、人に優しくしとけば良かった……


***

 という事があって以来、俺は二人に逆らえない。


「よしっ、比嘉お前ちょっと北の魔王の所行って来い」


 西野さんに言われると条件反射で頷くしかない。

 あっ、ちなみにこの二人西野さんと南野さんね?

 79年前に西の、南のって呼び合ってるから、西の魔王、南の魔王の略だと思ってたけど名前だったんですねって言ったら、思いっきりボディブロー喰らった。

 なんかイントネーションを変えて使い分けてるらしい……よくわかんね……

 てか物理防御耐性MAXなのに胃液の匂いが上がって来た……なんで?


「お前? 『ひが』とかって半端な名前の癖にあんましゃしゃってんじゃねーぞ?」

「まあまあ、馬鹿なんだからしょうがないっしょ? 本当に魔法使いか僧侶のどっちかが魔王になってたらねー……」


 くっ、ハーフは地元じゃステータスでモデルやモテモテ街道まっしぐらなはずなのに……この世界じゃマイナスだった……辛い……

 てかチョイチョイ、東野じゃない事を馬鹿にされる。

 ちなみに仲間の魔法使いは東野だ……どこで間違えたんだろ……


 まあ、クヨクヨしててもしゃーないってことで、北の魔王に会いにいった。


 応接室でスゲー待たされた……

 そばに包帯も巻いてないミイラいるし……こえーんだけど……

 お願い……なんか喋って……


「お待たせいたしました。北の魔王タナカヒトシ様です……」


 北野さんじゃないんだ……なんかスゲー親近感沸いてきた。


 ノックがあってすげー綺麗な悪魔が入って来た。

 えぇ……そういうの俺んとこ居ないんだけど。

 もしかして俺を待たせてシッポリやってたんじゃねーのか?

 なんかスゲー殺意沸いてきた。


「初めまして、わしが魔王タナカじゃ!」


 その後にやったら禍々しいマント羽織ったじじいが出てきた。

 うわぁ……転生先が爺で魔族とかコイツ本当にツイてねーな……

 ちょっと同情しつつも、最初が肝心!

 ここで嘗められるわけには、いかないからな!


「あっ?おめー、先輩に対してその態度なんだ? 嘗めてんのかコラ!」


 取りあえずかましてみた……すげー微妙な顔された。

 声に出してないのに、めっちゃ嫌な奴っぽいって言われた。

 言われた気がしたじゃなくて、言われた! 聞こえた! 俺にはそう聞こえた!

 辛い……


「うむ、失礼した。何分この世界の事に詳しくないものでしてな……お気に障ったのなら謝ります」


 なんかすげー面倒くさそうに謝られた……

 もうヤダ……帰りたい……来るんじゃなかった……


「ちっ、これだから下剋上あがりは嫌なんだよ! 自分が一番つえーとか思ってんじゃねーぞ!」


 いきなり来といてこれはねーわな……完全に八つ当たりだよ! 分かってるけどもう止まらねー。

 こうなったら、嫌な先輩として出来る限りストレス発散させて帰るわ!


「大体さー、普通てめぇの方から大魔王様や俺たちに挨拶に来るもんじゃねーの? いつまで待たせんだよ!」


 うわぁ……めんどくせーって顔してるよ。

 そうだよね、ゴメンね、俺もそんなん言われたらめんどくせーって思うわ……嫌な先輩でゴメンね……帰りたい……


「はぁ……で、今日は何の用件で?」

「あっ? てめぇがいつまで経っても挨拶にこねーから、こっちから見にきてやったんじゃねーか! 勇者一人も殺せねー腰抜けじゃ俺らに会いになんてこれねーわなー!」


 もう帰れオーラ全開じゃねーか! 少しは隠せよ!

 つーか俺も自重しろよ……新人が一番嫌がるタイプじゃねーか。

 俺が大嫌いだった先輩みたいな事言ってるよ。


「用件はそれだけですか?」

「んだてめぇ、生意気だなぁ? 先輩が来てんだから酒の一杯も用意できねーのかよ!」


 もはや隠してすらねーよ!

 それ帰れって意味じゃねーか!

 もう知らねー! ムカついたわ! 今日は泊まっていくよ! もう帰らねーよ!

 なんて言われてもぜってー帰らねーよ!

 嫌がらせだよ!


***

「てかさぁ、お前んとこの魔族みんな気持ちわりーな……」


 うわぁ、めっちゃムッとされた……そりゃそーだわ。

 俺だって仲間の事キモイとか言われたらぶち切れるわ。


「俺んとこはベッピン揃いだぜー? それにメッチャつええから! お前らんとこの魔族なんてうちの幹部一人で瞬コロだぜ? あっ? マジだからな?」


 ……嘘つきました。

 貴方のとこと一緒です。

 確かに見れない事も無い魔族も結構居るけど、そんなにベッピンさん居ません。

 でも幹部一人で瞬コロは本当だぜ? なんせ、3人は転移者だからな! めっちゃつえーぜ?

 ああ……なんか惨めになってきた……辛い


 てか、あのラミア超可愛いよなー。

 魔族80年やってると、種族の違いなんてそんなに気にならなくなってくるけど……せめてあのクラスが一人でも居たらめっちゃやる気でるよ?


「そういや、ウロ子だっけ?名前も可愛いけどあいつはイカしてるな! なぁ、俺んとこにくれよ!」


 そうじゃねーんだよ。

 そんな言い方したらぜってーくれる訳ねーじゃん!


「あの、ヒガさん飲み過ぎでは?」

「あっ? 俺が酒に酔ってるっていうのか? 俺が酔うわけねーだろ! 本当に生意気だなてめーはよぉ?」


 ほんっと、こいつ大人だよなー……

 こんな俺にも丁寧に接してくれるなんて偉いわー……やめて……どんどん惨めになってくるから……

 俺ならもう先輩とか関係無くやっちゃってるわ……


「大体さー、こいつらの目も気に食わねーなぁ? 雑魚魔族の癖に、酌くらいしにこいや!」


 なんかどうでも良くなってきた……こうなったらとことん暴れてやろう!

 取りあえず、こいつらの部下の特にキモイ奴らに盃投げてみた。

 スゲービビッてて笑える。

 初めてここに来て楽しいと思った瞬間だ……その直後に猛烈に虚しくなった……死にたい……



***

「今日俺泊まってくわ! ちょっとウロ子貸せよ! どうせお前も毎晩楽しんでんだろ?」


 そうじゃねー……違う……ちょっと話がしてみたいだけなんだけど……

 あれっ? ウロ子ちゃん顔真っ赤だ……

 もしかしてまんざらでもないってか?

 て馬鹿か俺! あれ完全に怒ってんじゃん! ダメだ……ウロ子ちゃんルート完全に途絶えたわ……辛い……


「おーおーおー、顔真っ赤にしてまんざらでもねぇって感じだなぁ? よく仕込んでんだろうな! クックック色んな意味でよぉ!」


 せめて、脅して一晩のアバンチュールな熱く燃える夜を思い出に帰れたらいいなぁ……


 ブチッ!


 なんか聞こえた……


「ぶぶ漬けでもどうどす?」


 ぶぶ漬け? って何? てかなんで京都弁?


「なんだそれ?」


 おわっ! いきなりタナカの目の前に光が現れたかと思ったらお茶漬けが出てきた……

 すげーなコイツ……てか久々の日本食……超食いてー……食わせてくれんの?マジで?スゲー嬉しい。

 今まで酷いパイセンでゴメンネゴメンネー!


「なんやそれ? 美味そうやなぁ! 俺に食わしてくれるんか?」

「えぇ、俺の居たところの料理でね……これ食ったらとっとと帰れや下種がぁ!」


 アッチー! ナンデ? ナンデナンデ?

 俺炎熱耐性MAXなんだけど?

 タイガーもビックリな耐熱構造なんだけど?


「屋上へ行こうぜ・・・久しぶりに・・・キレちまったよ」


 おうふ……これアカンわ……完全に怒らせてる。

 ってか、諸先輩方と同じ……いやそれ以上のオーラ感じるんですけど……

 地元で一番怖い先輩の車にバイクこかした時より冷や汗でてる……


 うわぁ……俺魔王なのに強引にどっかに連れてかれたわ……

 殴られたし……超痛い……西野さんの100倍痛い……物理耐性ってナニ? 美味しいのソレ?


 うわっ目の前に転移してきたし……もしかして顔面蹴ろうっての? ヒデー奴だなおい……

 スゲー……魔法無しで俺飛んでるわ……

 なんか地上で奴が言ってる……ヤサイプリンス? 嫌な予感しかしねーわそれ……


「きたねえ花火だ!」


 その後なんか言いに来たが、気が付いたら自分の城に居た……

 状態異常無効、自然治癒MAXのはずなのに火傷がなかなか治らない……辛い……


***

「ふっ、ヒガがやられたか……」

「ああ、だが奴は魔王の中でも最弱……魔王の名折れだ」

「お前らそれがやりたかっただけじゃろ?」

「流石大魔王様! その慧眼恐れ入ります」


 一部始終見られてた……

 当分パイセンネタで弄られた……辛い……

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