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魔王に転生したけど人間に嫌われ過ぎて辛い  作者: へたまろ
最終章:最終決戦!神と魔神
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セオザラを狙う暗殺者…の辛い

どうしてこうなった…


「んふふー、好きな物頼んでいいぜ」

「あっ、はい…有難うございます」


私ことアマネはいま、セオザラと名乗る魔族ととある町のカフェに居る。

というか、この男の正体は田中という元北の魔王らしく、とんでもない魔力を持った魔人だということはすでに創造主様からお伺いしている。

そして私はその田中を殺す為に派遣された、暗殺者勇者筆頭の暗殺者だ。

だというのに…


「ここさあ、パスタが美味いらしいぜ?ほらっ、クライフォードが何回か来た事あるらしくてさ、日替わりも良いけど、定番のミートソースとかもいけるってさ?わたしのグループの元シェフがやってるらしくてさ」

「はあ、そうなんですか。でしたら私はそれを…」

「サラダはどうする?1つ頼んで2人で分けようか?」


凄く能天気に食事を楽しんでいる目の前の魔人にイラつきつつも、焦っては駄目だと自分に言い聞かせつつメニューに目を向ける。

ところどころ懐かしいメニュー名もある。


たらこパスタ(たらこが無いので、デビルフィッシュの卵で代用してます)


ちなみに注意書きは日本語で書いてある。

うん…たぶんじゃなく間違いなくわたしのグループは同郷者だろう。

だが今はそんな事はどうでも良い。

問題はどうやって目の前のこのムカつく魔人を殺すかだ。

今まで幾度となく失敗してきている。


―――――――――

「きゃーーーー!」


森で魔物に襲われるフリをしつつ田中をおびき出す。

勿論魔物もこちらで用意したものだ。

マジックキャンセラーを扱うデスペルワーム。

魔力を際限なく吸い尽くす吸血蛭ならぬ吸魔蛭のマジックリーチ。

こいつらを多数用意して罠にはめたつもりだった。


マジックリーチに魔力を吸い尽くして貰いつつ、デスペルワームによる魔法障壁と魔法の無効化を図った上で、私の部下達による多方面からの毒を塗りたくった投擲武器による完全に殺しにかかった作戦だった…はずなのだが。

まずマジックリーチが奴に張り付いた瞬間に…弾け飛んでいった。

意味が分からない…マジックリーチ1体が吸う魔力の量は最上級核撃魔法一回分に相当する。

そのマジックリーチが6体同時に張り付いて…そして、6体同時に弾け散った。

マジックリーチが過去に弾け飛んだ例は無い事はない。

巨大な魔力結晶…それこそ神話級の魔法に相当する魔力を秘めた魔力結晶の魔力を吸おうと考えた魔導士の使い魔のマジックリーチが、その魔力量に耐え切れずに弾け飛んだという話があった。

それですら、その時召喚された5体のうちの1体だけだ。

残りの4対で残る魔力を吸い尽くす事には成功している。


その後も奴に張り付いたマジックリーチのことごとくが破裂して、消え去っていく。

さらにデスペルワームのマジックキャンセラーが発動したにも関わらず、奴はその膂力のみでワームどもをちぎっては投げ、ちぎっては投げとしながら私の元に駆け寄ってくる。

私は即座に作戦の失敗を察知し、周辺の部下達に散開を命じたが…その直後ボタボタと樹の上から落ちてくる部下達。

見るとワームの牙が彼らの身体のあちこちに刺さっていた。

単純に投げただけでなく、その身すらも武器にしてこの危機をいともたやすく乗り切った。


創造主様から聞いた奴の能力に3段階程情報修正を加えつつも、たまたま襲われた付近の村人という事にして一行の中に潜り込むことにはかろうじて成功したが。


「大丈夫かい、お嬢さん?」


田中が髪をかき上げながら、手を差し出してくる。

イラッとする奴だ。


「あっ、はい有難うございます」


だが、自分の心を殺す訓練も積んでいる私は唇を噛みつつ、拳を握り爪を掌に突き刺しつつ、その痛みでどうにか気を紛らわす事に成功した。

その後も…


―――――――――

「すいません、助けていただいたお礼にお食事を」


私は彼等に同行しつつ、二日目の晩に自然を装って料理を作る。

中身は当然猛毒の魔族殺しと名高い、コロリ茸のエキス入りだ。

このコロリ茸の優れたところは、毒無効が利かない点だ。

致死量に達するまではその身体に全く悪い影響を与える事の無いこの茸だが、致死量を超えた瞬間に即座に細胞を破壊し、また身体に刻まれたスキルの発動を全て消し去ってしまうのだ。

当然毒無効スキルがあろうとも、そのスキル自体を封じられてしまえば何の役にも立たない…立たないというのに。


「おかわり!」

「えっ?あっ…はい」


既に奴は3杯目だ…解せぬ。


「こんなベッピンさんが作ったってだけで、ただの山菜汁が物凄く美味しく感じられるね」

「あ…ありがとうございます」


この毒の致死量はとっくに超えている。

他の4人に出しているものにももちろんコロリ茸のエキスは入っているが、そこまで大量には入って無い。

田中によそう時だけ、小瓶から追加で入れているのだ。

面倒臭くなった私は4杯目をよそう時に、特に濃く濃縮された小瓶1本分まるっと入れてやった。

魔族の致死量の凡そ100倍だ…だというのに奴と来たら。


「おっ、さっきより断然美味しくなった!もしかして、隠し味に愛情でも足してくれた?」


全身を毒虫が這いずり上がってくるような、ゾワゾワゾワとした感覚に襲われると同時に猛烈な吐き気に襲われる。

殺したい…今すぐ殺してしまいたい。


「アマネさん?顔怖いですよ?」


どうやら表情に出てたようだ。

ヨエモンが心配そうにこっちを見てくる。

何を勘違いしたのか、田中が慌てて


「ごめんね、ごめんねー!冗談だってばさ!」


イラつく…元居た世界で聞いたような響きだが、地球の事を元魔王が知っている訳無いだろう。

だから余計にイラつく…初めて見た時は殺したい程度だったが、今は殺したいくらいムカつく。

いや、いずれ殺す予定だが、出来る事なら今すぐ殺したい。


―――――――――

そして最終手段に出ることにした。

創造主様から与えられた絶対命令。

命を賭してでも達成すべき命令だ。


故に自分の身体には呪いが刻んである。

田中に好きと言わせたら、核撃級の爆発を起こし奴を巻き込みながら自爆するという呪いだ。

その代償は命と、殺したいほど憎い田中を惚れさせるというものだ。

余程本能が嫌がっているのだろう。

田中に惚れさせるという条件を付けた途端に、爆発の効果が対象のみを含め肉体、および精神生命体、ならびに魂の完全消滅規模での爆発というものになった。


その晩から事あるごとに私は田中に媚を売った。


「田中様は本当にお強いのですね?それにお優しい」

「いやあ、それほどでもあるかなあ」


その日私は胃から大量の出血を起こし、吐血した。

それ以降、胃薬が手放せなくなってしまった。


「田中様に触れて居られるだけで、私は安心いたします」

「そう?だったら、もっと強く触れてもいいんだぜ?」


そう言って抱きしめられた。

服で隠れていたが、湯浴みの時に見ると全身がかぶれていた。

そして蕁麻疹も出来ていた。

軟膏が手放せなくなった。


「田中様は今好きな人はいらっしゃいますか?」

「今は居ないかな…でも、好きになれそうな女性ならいるよ」


そう言ってこっちをジッと見つめてくる田中。

私も彼を見つめ返した。

その日を境に、私の視界から色が消えた。

目薬を差しても治らない…


「田中様、私は貴方様を好いております!今夜はその一緒に居ても良いですか?」

「ふふっ、そういったの事はもっとお互いの事を良く知ってからの方がいいと思うよ?じゃあ、お互いがもっと仲良くなるために、明日は2人で街でも歩こうか?」

「えっ?あっ、はい」


クソッ!本当ならこれから身体を犠牲にしてでも奴から爆破のキーワードを引き出すつもりだったのに。

必死の覚悟を決めて来たのに、目の前のヘタレのせいで先延ばしになってしまった。

据え膳食わぬは男の恥って言葉を知らないのか!

まあ、この世界にそんな言葉あるはずもないか。

だが、女に恥をかかせるような真似を平気でするこいつは、きっと童貞に違いない。

そして冒頭に戻る。


―――――――――


「んふふー、好きな物頼んでいいぜ」

「あっ、はい…有難うございます」


……………


そして昼食を終えた私達は、高台から夕陽に照らされた街並みを見下ろしている。

本当に隣に居るのがこのクソ野郎じゃなければ、とってもロマンチックな瞬間なんだけどな。

むしろ、前の世界じゃこんなに素敵な瞬間なんて一生訪れないと思っていた。

横を見て溜息を吐く。


「田中様…」

「どうしたのアマネさん?」


私はジッと奴の目を見る。

それから頬を赤らめつつ、横を向く。


「女にこれ以上言わせないでください!」


そこまで言って奴がハッと息をのむ。


「そうでしたね…昨日も貴女から言わせてしまったのに、また今日も俺は…俺も…俺もアマネが好きだ!」


今まで父が3日間寝ずに考えて付けてくれた大好きだった名前が、この瞬間大嫌いになった…

だが、ついに奴を惚れさせる事に成功した。

爆発のキーワードは私に対するはっきりとした好意を表す言葉だ!

そして奴にそれを言わせる事に成功した。

今の私はきっと、田中に対して初めて心の底からの笑顔を向けている事だろう。

ざまあみろ!

次の瞬間、2人だけを巻き込んで眩い光を発したかと思うと、信じがたいエネルギーの奔流に襲われる。

星が出来上がるエネルギーに匹敵するのではないだろうかと思えるほどの、エネルギーの暴力を全身に感じつつ奴に目を向ける。

驚いた間抜け顔がさらにイラつきを加速させる。

だが、どうせ一瞬で全てが消え去るのだ関係無いか。

ただ一つ、最後にこいつと一緒という事だけが許せなかった。

出来る事なら、創造主のクソ野郎も巻き添えにぶち殺してやりたかった。


なんだって私が、こんなムカつく魔族相手に色仕掛けなんて。

それもこれも、創造主を騙るあのクズのせいだ。

こんな仕事押し付けたあいつを、私は一生恨む。


ここまで考えて気付いた。

あれっ?私死んで無い…


「フフッ。爆発するほど嬉しかったのかいベイベー」


そう言って私の髪を撫でてくる田中。

というか、いま気付いたわ…田中って思いっきり日本人の名前じゃん!


「えっ?あれっ?」

「どうしたの?もしかして、今まで何かに操られてましたってオチ?」

「えっと…創造主?」


私が創造主の事を口にした瞬間に、田中さんが真っ青な顔になる。


「くっ!知ってたよ!どうせ、俺の事を好きになってくれる人間の女の子なんて居ないよ!いや…幼女や子供には居たりするけどさ…大人の女性に好かれるなんて思ってませんでした!」


そう言って駆け出していく田中さん。

おい、ちょっと待ってくださいよ!

なんで私は生きてるんですか?

慌てて追いかけるけど、あの人足速過ぎ!


「こんなハニートラップ最初から見破ってましたよーだ!」


こっちに向かって舌を出しながらそんな事を言って、さらに加速するがそれどころじゃない。


「ちょっと待っててば!なんで私生きてるの!」





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(仮)邪神の左手 善神の右手
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