魔帝センター・オブ・ザ・ライスフィールド エピローグ
エピローグなので短めです。
「さてとお目覚めかな?」
俺の言葉に目の前の男…そうエレインがゆっくりと目を開ける。
「ええ…貴方に負けたのですね」
エレインが再度瞑目しつつ答える。
清々しい程に、清々しい。
もはや諦めたのだろう、まるで某監獄に閉じ込められたとある暗殺拳の使い手の次男坊のように穏やかな表情で座禅を組んでいる。
しかしだな…既に周囲を取り囲む魔族達からはこいつら勇者に与える罰は満場一致で提案されている。
そう、彼等の言葉は
「別に結果として誰も死んで無いし…」
「うちの家もあんたが直してくれたからねえ…」
「俺はあんたについていくぜ!」
『という訳で、まるっとおまかせだ!』
という事で4人の処遇を任されてしまった。
まあ【心魂解放】で既に4人の心は主神から離れてはいるわけだし、さらにはうちのマンションに間借りしている4女神から聖気を借り受ければ勇者として戦えるし手駒としてもらっておいても悪くはないだろう。
取りあえずヨエモン、フレイ、クライフォード、エレインの4人はウルフに任せておこう。
俺はこの村ですることがある。
「おい、お前ら!たぶん知ってると思うが創造主を名乗る奴が魔族の討伐に本腰を入れた」
俺の言葉にどよめきが起こるが、やはり反応はそこまで大きくない。
知っている者も多数いるようだ。
「そ…それは一応情報としては入っていましたが、まさかかような村にここまで大規模な侵略戦が行われるなど思ってもおらず」
一応この村の村長のスカラベ族の魔族が代表して答えてくる。
うん、顔がまんまフンコロガシだ。
フンコロガシの頭をしてるのではなく、フンコロガシが顔面に張り付いているかのような風体だ。
いうなれば、エジプト神の1人ケプリだな。
とはいえ能力はいち魔族のそれしかないが。
今は俺の強化でこの場に居る村人全員がかなり強くなっているが。
「ああ…あいつらは無差別だ。目についた魔族を片っ端から討伐して回っている」
「そ…そんな」
おかみさんが悲痛な表情をしているが、安心してほしい。
俺は魔族と人間の共存を目指している。
その中に神は居ない!
「俺はその神を滅ぼす為に旅をしている…そして、その仲間を集めるためにもな!」
何故か俺の言葉にウルフが誇らしげにしているが、お前をスカウトするつもりはサラサラ無いからな!
「ですが…御覧の通り我らにはただの人間にすら対抗する力はありませぬ、当然勇者にも…ましてや神などと大それた」
村長の言葉を遮るように俺が手をあげる。
「いや、お前らは精々勇者に滅ぼされぬようここで頑張って暮らしていけばいい…もし俺の下に付くというのであれば、いま施してある強化をそのまま継続させてやるぞ?」
「そ…そんな!これほどの強化を持続させるとなると、貴方様の魔力がどんどんと浪費されるばかり!それよりも、もっと実力あるものを選抜して与えた方がよほど宜しいかと」
まあ、普通はそうだろうな。
魔力を一定量消費して一時的に強化を施す方法と、魔力を常に供給し続ける限り強化が続く方法と、この世界には2種類の強化がある。
あとは呪いに近いが、身体に墨を彫って能力を強化し続ける方法なんていうのもあるが、それには何かしらの代償が必要となってくる。
著しい身体強化を得る代わりに、魔力の一切を封じる等デメリットもあるのだ。
だが…俺の取る方法は1つ!種族特性限界の能力を引き出せるように身体組織を作り替えたうえで、潜在能力を某緑色の最長老のように引き出す方法だ。
この方法なら魔力を一定量消費するだけで、永続的な強化が得られる。
「俺からすればなんの問題も無い…簡単なもんだ」
「あ…貴方は一体何者なのですか?」
長老の質問に対して、魔族形態に変身して答える。
「この地を…いや、この5大世界を統一する魔帝センター・オブ・ザ・ライスフィールドだ!」
「な…長い名前ですな」
おいっ!言うにことかいて、感想がそれかよ!
まあ、別に良いけどさ…
「センター・オブ・ザ・ライスフィールド様は…」
うん、やっぱり長いな…流石にちょっとこれはやり過ぎたわ。
ちょっと呼びやすい名前にしとこう。
「セオザラで良い」
「セオザラ様は…一体どのようなお方で?」
「ふんっ…古い魔王の1人だとでも言っておこうか」
つっても一世代前だから、そんなに古くも無いけどな。
「そ…そうだったのですか!それは知らぬ事とはいえ失礼な事を」
まあ、なんにも失礼な事はされてないけどね。
取りあえず返答はどうするんだろう?
「で…でしたら、是非とも我らを配下にお加えください!きっとこの地を守り抜いてみせます!新たな大魔王様の誕生ですな!」
「いや、魔帝だから!大魔王より上だから!そこのとこ間違えないで」
「は…はあ」
いっその事魔神とでも言っておいた方が良かったか?
どうも、こういった辺境では大魔王至上主義的なものがあるのかもしれないし。
王より帝の方が上っぽいと思ったけど、どうせなら神を名乗った方が良かったかもしれない。
―――――――――
「カエルのおじさん、有難う!」
「いや、カエルじゃねーから!」
ヨルミがメッチャ笑顔で手を振りながらピョンピョン跳ねている。
当然ヨルミも強化してあるから、その高さは2m近くにまで及んでいるけどな。
そして横にあたかも当たり前かのように、しれっと立っているウルフに白い目を向ける。
「おい!何をしている?」
「はっ!センター・オブ・ザ・ライスフィールド!セオザラ様は仲間を探している様子でしたので、是非ともこのグングニル使いの私めが「誰がお主如きに使われてやるか!グングニル使われの間違いであろう」
2人が何やら言い争っているが、もう一度言おう!お前らは連れてかねーからな?
「うん、じゃあお前ら仲間な!仕事はここの防衛だ!じゃあな!」
俺がそう言ってウルフの肩を叩くと、凄く悲しそうな表情をこっちに向けてくる。
まあ、そんな事を気にする俺じゃないから無視して歩き始める。
ク…クゥーンという鳴き声も聞こえたが、おっさんの鳴き声で反応するほど初心でも無い。
さらばウルフ!
即座に転移で、森の外れに待たせてある勇者4人に合流する。
「えっと…別にあんたの仲間になんてなったわけじゃないんだからね!」
フレイがテンプレなセリフを吐いているが…ヨエモンの腕に抱き着きながら。
ヨエモンにデレデレな彼女にツンデレを期待できるわけもなく、2人もこの村の防衛に回してやろうかと思ったがまあいいだろう。
「お…俺だって好きでお前なんかについていってる訳じゃ「うっせえ!」
クライフォードがイラッとしそうなセリフを吐きそうだったので、取りあえず先に殴っておく。
ほっぺをさすりながら不満そうな視線を向けてくるが、取りあえず無視をしてやろう。
「僕は自分の目で真実を見極めたいですからね。それに…僕を操っていた創造主って人にもお礼をしないと」
「きゃー!」
どこのイケメンだお前は!
ただヨエモンだけは自分の意思で俺についてきてくれるようだ。
というかさ…お前絶対日本人だよな?
「ふぅじぃ○ちゅぁぁぁん!」
魔法で某大盗賊の3代目と同じ声でモノマネをすると、物凄く驚いた表情でこっちを見るヨエモン。
「またつまらぬ物を斬ってしまった」
そう言って彼をジッと見つめると、プイッと目を反らされた。
どうやら、つまらぬ物を斬れなかった記憶はあるようだ。
エレインはさっきからメモを片手に俺の一挙手一投足を観察している。
特に先ほど声真似をした時なんかは、凄い勢いで何かを書き込んでいた。
案外魔法使い勇者筆頭というのは事実かもしれない。
魔法に対する探究心が凄く強そうだ。
この4人とどんな冒険が始まるのか…今から楽しみでドキがムネムネする。




