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魔王に転生したけど人間に嫌われ過ぎて辛い  作者: へたまろ
最終章:最終決戦!神と魔神
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魔帝センター・オブ・ザ・ライスフィールド 後編の前編

正直夕飯はそこそこ満足出来た。

流石に飽食の日本人を唸らせるほどのものは出てこなかったが、この村の伝統料理と呼ばれここの森で取られる薬草や香草を使った兎肉の煮物は確かに美味かった。

美味かったのだが…それを提供してきたのが兎族の魔族のせいで要らぬ心配をしてしまった。

でも、ヨルミちゃんがピョコッとおかみさんの後から顔を出してくれたので杞憂に終わったが。

あと、これ完全に薬膳だったわ…

茸やら、野菜も入ってたけど茸も漢方っぽい茸だったしね。

お陰で、無駄に精力が付いた気がするけど…

焼き魚は普通に塩焼きだったが、色が紫のマスに似た魚だったが…何も身から溢れ出る油まで紫じゃなくても良いだろ?

そういう事もあって、トータルでそこそこという評価だ。


あとはこの村に来た本当の目的を果たすだけなのだが…


この村を囲むように、人間が500人くらい集まってきている。

そして、勇者と思われる一際大きな力を持ったものが3人か…

雑魚だな。

完全に周囲が寝静まって来てから攻め込むつもりなのか、一定の距離を保って150人~200人くらいの集団が3つほど出来上がっている。

そしてそれから3時間くらいが経過して、深夜と呼べる時間に差し掛かった頃村に警鐘が鳴り響く。


「お客さん!起きてください!」


おかみがドタドタと2階に上がって来る足音が聞こえる。

大丈夫、起きてるから。


「どうしました?」


俺が扉を開けて顔をのぞかせると、息を切らしたおかみさんとヨルミがドアの前に立っている。


「あの…人間が…人間が襲ってきました。今はウルフさんと警備隊の方々がなんとか食い止めていますが、すでに村の中にも入って来てまして…」

「うん、それでどうしたら?」


俺の質問に対して、おかみさんが少し困った表情をする。

お客さんに戦ってくれと頼む訳にも行かないだろうし、そもそも逃げようにもそれも難しい状況なんだろうな。

おかみさんの表情はびっくりするくらい青白い…元々白かったけど。


「あの…この子をこの家の地下に隠れてもらっても宜しいですか?」

「ママ?」


おかみさんの言葉にヨルミも驚きの表情を浮かべている。

当然、おかみさんも一緒に隠れると思っていたのだろう。


「大丈夫よ…貴女の物は全部地下に隠したから、ここに子供が居るだなんて思わないだろうし…でも、誰も居ないと怪しまれるから私が…」


どうやら彼女が囮になって、俺とこの子を匿うつもりらしい。

でも、そんな事をしたら…


「ママは?ママも一緒じゃないと嫌!」


当然ヨルミも、どうなるかは分かっているのだろう。

必死で首を横に振ってイヤイヤとしている。

そんな彼女に対しておかみさんが頭を優しく撫でる。


「大丈夫よ…私もあとで行くから…だから、貴女はお兄さんと一緒に隠れてなさい…【誘眠(スリープ)


そして魔法を発動させて、ヨルミを寝かしつける。

うん、寝かしつけにこれほど便利な魔法は無いだろう。


「さっ、早く!」


ドンッ!


彼女がそう言ってヨルミを俺に託そうとすると同時に、階下から激しい音が聞こえてくる。


「なっ!早すぎる!」


それからドタドタと一階を物色する音が聞こえてくる。

周囲の気配を伺うと、村の中でどんどん魔族の命の灯が消えていくのを感じる。

取りあえず、俺はその魂が天に召されないように集めておく。


「おい2階を探せ!」

「はっ!」


階下から若い男性の声が聞こえると、それに誰かが答えてドタドタと階段を上がって来る音が聞こえる。


「おかみさん!ヨルミちゃん!旅人の旦那!」

「くっ!もう来たのか!」


さらに入り口から聞きなれた声が聞こえる。

そして、その声に焦ったような表情で応える何者か。

というか…

おかみさんが横で頭を押さえている。

このアホ兵士(ウルフ)ここに居る全員の名前を呼びやがって!これじゃあ、隠れても意味がねーじゃねーか!


「ぐあっ!」

「次に我の錆になりたいやつはどいつだ!」

「くっ!狼の獣人風情が調子に乗りおって!」

「お前か?」

「ぐあっ」


うん、これは劣化グングニルの声だな。

別にウルフが口上を垂れてる訳じゃないんだが、どうやらウルフが言ってる事になっているらしい。

なんてことを考えていたら、廊下の向こうから声が聞こえてくる。

どうやら見つかったようだ。


「おい、見つけたぞ!」

「ああ、ウサギ族だ、間違いない!こいつらがあの、地味に強い兵士が一生懸命助けようとしてた奴等だな!」

「よしっ、こいつらを人質にとって」

「遅い!」

「ウッ!」


そしてすぐに2階に上がって来たウルフに一番後ろにいたであろう男性が斬り飛ばされたようだ。

そしてすぐに2人目に斬りかかろうとして、槍にウルフが弾き飛ばされる。


「なっ!何を!」


次の瞬間、廊下の床を突き破って光の斬撃が天井を突き抜ける。

あっ…勇者来た。


「こ…これは」


鼻先を掠めた、たぶんブレイブスラッシュを見て、ウルフが尻尾を股に挟んでいる。

そして、床の穴から飛び出してくる白い全身鎧を纏った一人の騎士。


「ふんっ、たかが狼族如きに不甲斐ない。俺が来てやったからお前らはそこの女子供…あと男か女か分からん蛙を殺せ!」


全身鎧の男が指示を飛ばすと、慌てて他の人間達が飛び掛かって来る。


「あっ、おかみさん!ヨルミちゃん!」


ウルフが慌てて駆け出そうとして、騎士の男に斬り飛ばされる。


「ちっ、これを防ぐとは結構やるな」


槍がね…

咄嗟にグングニルがその柄で男の斬撃を弾いていた。

もし、反応しきれてなかったら今頃ウルフは大怪我だったろうな。


「あっ…グングニル様、有難うございます」

「…」


ウルフが槍に礼を言っているが、反応はない。


「ふんっ…槍に感謝するとはマグレか…」

「マグレじゃない、グングニル様が咄嗟に反応してくださったんだ」

「…」


ウルフ…


「槍にそこまで敬意を放つとは、なかなかに不思議な魔族も居たもんだな…じゃあ、精々槍に護ってもらいな!」


そう言って騎士の男が凄い速さで連撃を繰り広げる。

えっ、こっち?

こっちはもう…


「えっ…嘘?」

「蛙さん、すごーい!」


2人に飛び掛かろうとした奴等の意識を一瞬で刈り取って、今は山積みにして椅子にして座ってるよ。

えっ?どっかの誰かの負けフラグと被ってるって?

俺にフラグなんてあるわけないだろ?

その姿におかみさんと、ヨルミが目を見開いているが…まあ、俺からしたら蟻以下の存在だからな。


「流石グングニル様!余裕ですね」

「…」

「フフッ…もしかして、本当にその槍に意思があるのかな?ならば!」


それまでウルフに向かってひたすら斬撃を放っていた騎士の男が、今度は槍目がけて全力の攻撃を放ち始める。

よく見ると、男の武器もなかなかに良いものらしく、打ち合う度に激しい火花を散らしているにも関わらず男の剣に刃こぼれ等は見られない。


「まさか、創造主様に下賜された俺のエクスカリ()ーで破壊できぬとはな」


お前の剣も劣化版かよ!

というか、創造主もいかにも劣化版ですみたいな名前にしてんじゃねーよ!


「グングニル様!あやつの持つ剣は聖剣のようですよ!」


偽物だって…

いや、創造主が作ったんだから聖剣か…

ややこしいから、聖剣ナカジョウとかって名前にしとけよ!


「だぁ!お前は少しは黙らんか!大体、お主が話しかけるから我の存在があやつに伝わってしまったではないか!これでは2対1に持っていけんではないか!」


うん、それは使い手の性格を把握できてなかったお前が悪いわ。

というか、そんな(こす)い事を考えていたのかお前。


「ふんっ、やっぱりか…その槍も相当な力を持った槍の魔族って事だな」


ちげーよ!

ただの劣化版神器だよ!

勝手に魔族にしてんじゃねーぞ!


「フフッ、魔族みたいな下等な生物と…」


あっ?

槍が何かふざけた事を言い出しそうだったので、思いっきり威圧を掛けておく。


「うわっ!」


と思ったら、何故か騎士の男の方が俺から一気に距離を取る。


「おい…そこの蛙…お前、なんて殺気を放ちやがる!」

「馬鹿者!頭が高いぞ人間風情が!あのお方は至高の魔族の方様であらせられるぞ!」


控えよろーと聞こえてきそうな紹介をありがとう。

あっさりと俺の事を伝えるお前も、そこの持ち主と同レベルじゃねーか!


「あっ、ただの通りすがりの蛙の旅人なのでお気になさらずに」

「殺してえ程ムカつくオーラ放ってんな…ただでさえ殺したい顔してんのに、殺したくなってきたわ…しかもよく見ると殺してえ雰囲気してんな…それに生理的にもお前みたいな奴は殺してえわ」


どんだけ俺の事を殺したいんだよ。

もう勇者やだ…


「あっ」


俺は慌てて天井に魔法で穴を開けると、おかみさんとヨルミを抱えて上空に飛び立つ。


「キャアッ!」

「うわぁっ!」


2人がそれぞれ別の反応をしているのを無視して、足元に視線を送ると。


ザンッ!


という音が聞こえて来た。

そしてすぐに、さっきまで皆で居た建物が斜めに斬れてずれていく。


「また、つまらぬものを斬ってしまった…」

「あっ…私の家」


なんか知らない若い兄ちゃんがほざいてた気がするけど、ヨルミちゃんの悲しそうな声を聞いた俺は取りあえず魔法で建物のズレを戻して修復しておく。


「えっ?」

「はっ?」


ふと建物のそばを見ると、剣を斬り放った格好でポーズを決めている長髪の男性と、肩にデカい斧を乗せたビキニアーマーの女性が立ってポカンとしていた。


「プッ!斬れてねーじゃん!」


それから女性の方が噴き出して、男の方を見ている。

男は顔を赤くしつつ、あれぇ?と首を傾げている。

ついでに、天井のだの廊下だのの損傷も全て直しておいたから、建物に取り残して来た狼と勇者ははどうなっていることやら。



後編の前編とか…

すいません、時間があまり取れなくてなかなかこの話が終わりません。

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新作更新始めました!
(仮)邪神の左手 善神の右手
宜しくお願いしますm(__)m
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