第2章エピローグ
エピローグなのでかなり短めです。
ガキンッという激しい音とともに、その光の斬撃が誰かに止められる。
って言っても、ゴブリンメイジのマスカーレイドなんだけどね。
「チッ…ゴブリン風情が邪魔をするな!」
すぐにカインが間合いを詰めて、マスカーレイドを蹴り飛ばそうとするが、マスカーレイドはその足に手を置いてひらりと背後に移動する。
「寝てろ、人間風情が!」
カインの延髄に手刀をかますと、そのまま中条に向かって間合いを詰めるマスカーレイド。
だが、それも無数の光の斬撃によって阻まれる。
中条の前には、いつの間にか集まった光の羽を持つ勇者達が集まっていた。
「はっ!この中で唯一反応出来たのが、ただの子鬼とはな!中野が警戒していた田中って奴の配下も案外足した事無いんだな」
中条のセリフに、荒神とマヨヒガが反応する。
「ふふっ…私をあまり嘗めないでもらえますか?これでも、一応ここを任されているのですからね」
一瞬で大蛇形態になった荒神が、無数の電撃を勇者達に飛ばす。
巨大な閃光を放つ稲妻が、勇者達に襲い掛かるがあっさりと光の盾で防がれると、すぐにお返しとばかりに光の斬撃が放たれる。
それを、マヨヒガが巨大な手で防ぐ。
バキバキッという悲鳴にも似た家鳴りが聞こえてくる。
「これ、不味いですよ」
ゴブリンが焦った様子で荒神に話しかけているが、荒神は自身の自慢の電撃がたかが人間と侮っていた勇者に防がれた事に苛立ちを感じているようだ。
睨みつけるように、中条を見ている。
「私が、全力で加護を与えているんだ…今までの勇者とは思わない事だな」
中条が不敵な笑みを浮かべてそう漏らす。
「潰せ!」
それから一言、そう発するといつの間にか集まった100人を超す勇者達が、一斉に襲い掛かって来る。
「これは無理か…荒神殿、引きますよ」
「えっ?でもまだ田中様が!」
難色を示す荒神に対して、マスカーレイドが首を横に振る。
「主様は殺しても死にませんから…それとも、荒神殿は主様を心配出来る程、お強いのですか?」
「えっ…いや、でも…」
マスカーレイドの言葉に、荒神が思わず詰まる。
「取りあえずは、生き残る事が先決です…それに、主様が戻られた際に、お迎えする国が無いという失態だけは避けねばなりませぬからね。では!」
マスカーレイドは勇者達に向かって巨大な竜巻を発生させると、その小さな体からは想像も出来ないような巨大な魔力を、今度は田中城のある大陸に向ける。
「【強制送還】」
そして、その巨大な大陸を転移させた…
―――――――――
「あれは!」
北の世界、魔王城城下町に突如巨大な影が掛かる。
そこに住まう全員が周囲が暗くなった事を不思議に思い、上空を見上げるとどこからか突如として現れた巨大な大陸が中に浮遊していた。
魔王城でも
「妾の田中様の城!」
ムカ娘が喜色を含む声で叫ぶと、他の北の幹部達もホッと胸を撫で下ろす。
そして、そこから城に向かってくる1匹のゴブリンメイジを見て訝し気にする。
「初めまして、北の幹部の皆様」
マスカーレイドが仰々しくお辞儀をすると、他の幹部達も
「えっ?あっ、はい、それはご丁寧に」
「あ、ああ」
「えっと…誰?」
いや、てんでバラバラな反応だった。
エリーだけが、唯一ちゃんと返礼をしていたが。
「中野が倒れました…やったのは主様ではなく、創造主です」
マスカーレイドの言葉に、北の幹部の面々に動揺が走る。
ならば、田中はどうなったのかと言いたげな様子だ。
「詳しい話は、別の場所で」
「なら、会議室を用意します」
すぐにエリーが、マスカーレイドを案内する。
そして、中央の世界で起こった事を事細かく説明される。
「馬鹿な!田中が捕まるなんて!」
マイが大声で怒鳴るかのような叫びが、会議室にこだましたのだった。
次こそ第3章に突入します。
1月18日の深夜~19日の明け方に投稿予定です。