ゴブリンVS触手
明けましておめでとうございますm(__)m
新年1発目の投稿です。
一応本編のつもりです。
中野の謎部屋に監禁されて3ヶ月が過ぎた。
相変わらず、うちの連中はのんびりしているというか、襲い来る中野の手下を各個撃破して送り返している。
いや、別に良いんだけどさ…
最近、俺が居なくても城の運営がうまく行っててね…
寂しくなんかないんだよ…
でもちょっとね。
そんなセンチな気分を味わいながらも…
「4キター!1・2・3・4!はいあがりです!」
俺はゴブリンと人生ゲームならぬ、魔生ゲームを楽しんでいる。
「フッフッフ…俺を差し置いて先にゴールしようなど1000年早いわ!」
俺が手を翳すと、ゴールと書かれたマスが階段状に伸びていき、天界ゾーンという名のステージが現れる。
「ちょっ!ズルいですよ!さっきは、魔界ゾーン!次は海ゾーンで、今度は天界ゾーンって、自分が勝つまでやる気でしょ!」
ゴブリンが何やらブーブー言っているがしったこっちゃない。
初めから、そういったルールなのだよ!
あれからも、ひたすら魔改造を施して恐らく配下の中でも頭一つ飛び出た実力になったであろうノーマルゴブリンだ。
ホブゴブリンでも、ゴブリンソルジャーでも、ゴブリンリーダーでも、ゴブリンジェネラルでも、ゴブリンキングでも、ゴブリンエンペラーでも無く、ただのゴブリンだ。
そして、名前はまだ無い。
だって、なんかムカつく性格してるからね。
「なんか、失礼な事考えてませんか?」
そして、相変わらず俺の配下の連中は鋭い奴が多くて困るよ、はっはっは。
そんな事を思いながらも、俺はゴブリンを無視してルーレットを回す。
出目は…2だ。
「相変わらず、低い数字しか出ないですね」
いちいちイラッとさせる奴だ。
まあ、いいだろう。
ちなみに、俺はゲームでズルをしないタイプだ。
本来なら、俺の作ったゲームだし魔法でルーレットも操れるがそんな事をしたら楽しくないからな。
えっ?ゴールをすり替えた?HAHAHA!最初からそういう【仕様】だったに決まってるだろう。
そんなこんなで、一生懸命毎日違うことをして暇を潰している。
そうそう、もう一つ変わった事がある…
「田中様…食事の支度が整いました」
新たな配下を紹介しよう…
触手1号、2号、3号~21号までいる。
中野にせっせと魔力を運ぶだけだったこいつらだが、ちょっと悪戯心が芽生えて、中野に運ぶ魔力の一部を自分達に回させたのだ。
そしたら、触手の先っぽに蕾が現れたかと思うと、花になることは無くパカッと大きく裂けた口が現れたのだ。
「それにしても、大分薄くなってきましたねギャギャ」
目は無いはずなのに、良く分かるな。
ちなみにこれは3号だ。
全員が一つの身体を元に枝分かれしてるくせに、それぞれに自我を持ってしまったのだ。
ちなみに、薄くなったてのは頭の話じゃないよ?
今も、フサフサだよ?
まあ、良いか。
「ああ、結構時間が掛かったがようやく準備が整った。もう、これでいつでも出られるからな…あとはタイミング次第だ」
ちょっとした小細工を施して、ついに外への渡りをつけることも成功した。
それにしても、割と早かったな…
「あとは、中野が一番驚くタイミングだけってことでがすな!」
これは8号だ…
ちなみに、今後そんなに絡む事もないから、これもどうでも良い情報でしかない。
何より、こいつらはここから出られないしな。
というか、自分の主を呼び捨てとか。
「私たちの主は、田中様だけですわ!」
18号がとんでも発言をしている。
まあ、俺の魔力で進化した訳だから、俺の部下になったって事か。
ちなみに、直接的にこの部屋から出る方法は結局見つからなかった。
どうも、この部屋の仕掛けは中野が作ったようだが、主神の力も取り込んで聖気を取り込んだ対俺専用の特別仕様になっているようだ。
「はい!12!これで今度こそあがりです」
なんて事に気を取られていると、いつの間にかゴブリンがゴールしやがった。
しょうがない…ここは、花を持たせてやるか。
「あっ、触手が滑った!」
突如、触手20号が大声で叫ぶと盤面を思いっきりひっくり返す。
「あらあら、残念…これじゃ、上がったかどうかも怪しいですね」
そして19号がクスクスと笑いながら、ゴブリンに告げる。
次の瞬間、ゴブリンが20号を掴んで思いっきり引っ張る。
「お前、ちょっとこっちこいや!」
『シャー!』
そして、一瞬で21本の触手にがんじがらめにされるゴブリン…
うん、この構図誰得?
ぶっちゃけ、触手×ゴブリンとか需要なさすぎだろう。
触手とゴブリンの絡みを横目でチラッとみつつ、1号が持ってきた料理に手をつける。
今日は、天丼か…なかなかに上手に揚げてあるな。
衣がサクッとしてて美味しい。
うんうん、色々と知識を詰め込んだだけのことはある。
ゴブリンの掌に魔力が収縮されると、閃光のようなものが放たれて、両手を掴んでいた触手を焼き切る。
割と器用なゴブリンに仕上がったみたいで、ちょっと嬉しい。
しかし、そこは俺仕様な触手たち。
すぐに触手12号~14号が、回復魔法を発動させてそれらを元に戻すと10号が口を大きく開けて喉元から針のようなものをゴブリンに突き刺そうとして、固い皮膚に阻まれている。
うん、鬱陶しいな…
「お前ら少し静かにしてくれないか?」
ちょっと、低めの声でそう漏らすと触手達が一斉に地面にひれ伏す。
よく教育がされているようで、どっかの誰かとは偉い違いだな。
「ふん、根性の無い奴等ですね。主が怖くて喧嘩が出来るかってんだ!」
誰だよ!
このゴブリン作った奴誰だよ!
相変わらず、主を立てる気のないゴブリンにいい加減いらついたので、割と本気でぶん殴る。
「ふふっ…お忘れですか?物理無効無効無効のスキルを与えてもらった今、物理無効無効攻撃なんて私には痛くも痒くもありませんよ」
イラッ!
「そうか…じゃあ、その言葉を信じて本気で殴るわ」
「えっ?」
俺が手に力を込めて、光を越えた速度での一撃を放つ。
当然付与された能力は、絶対貫通だ。
あらゆる防御系スキルを透過して、絶対にダメージを通す能力だ。
「いてー!ちょっと、なんでですか!何したんですか!」
「ん?本気で殴っただけだが?」
ゴブリンが酷く怯えた様子で、こっちを見ている。
そんな彼の前に拳を突きつける。
ガタガタと震えているがそんな事は知ったこっちゃない。
ちょっと、調子に乗り過ぎた部下に折檻するだけだ。
大した問題じゃない。
「じゃあ、次はこれかな?」
そう言って拳から中指だけを弾いて、ゴブリンのおでこに軽めにデコピンをかます。
所詮はデコピンだ…大した衝撃があるわけでもない。
「痛い!なんで…ただのデコピンなのに、全身を切り刻まれたように痛いです!」
当然だ。
これは、痛覚に直接作用するように、中指から魔力を流し込んでいるからな。
ダメージは、デコピン程度なのでおでこが赤く腫れる程度だろうが、痛覚に直接魔力で刺激を与えているんだ。
当然、激痛が身体中を駆け巡っていることだろう。
「ほかにも、こんな攻撃手段もあるぞ?」
そう言って、軽く握った左手を腰に添え、これまた軽く握った右手をその上に載せる。
はたからみたら、腰に刀を差して、その柄を握っているように見えるだろう。
いや、見えているはずだ。
なぜなら、これからするのは幻惑魔法だからな。
ゴブリンにイメージさせるのはこれだ。
俺は一気に右手を振り切ると、ゴブリンの腰の辺りを横に払う。
「ウワー!斬られた!」
そして、そのまま唐竹割の要領で、大上段から縦に一振り。
上下に体が分かれた後に、左右に分かれるイメージを叩き込む。
そして、ゴブリンの脳がイメージしたダメージは死だ。
「ギャー!死んだ!これ死んだ!痛い!血が…血が止まらない!内臓が…拾わなきゃ…ああ、脳みそが、右目と左目が離れてく…ちょっとどうすれば、うわー!」
一生懸命両手で頭を挟み込んで、離れないようにしているが…幻惑だから、離れる事は無い。
そんな事を思っていたら、徐々に声が小さくなっていく。
「ああ、舌も真っ二つなのに…なんで喋れるの…かな…これが…本当の…二枚舌?アハハ…ハ…ハ」
ガクッ…
あっ、死んだ…
死のイメージが明確すぎて、本当に心臓が止まってしまったようだ。
そして、最後の最後までふざけた奴だったわ。
ゴブリン…お前の事は忘れないよ。
まあ、生き返らせるけど。
「おい、12号、復活させてやれ」
「はい、分かりました」
触手12号がゴブリンの心臓に思い一撃を喰らわせると、回復魔法を叩き込んで心臓を強制的に動かす。
息を吹き返したところで、幻惑を解いてやる。
「ああ…お母さん…あれ?自分、お母さんいるのかな…はっ!ここは!生きてる!いま、川の向こうにお母さんらしきゴブリンが居たと思ったのに…いつもの暗い部屋だ」
どうやら、彼岸に行きかけたようだ。
うん、一つ分かった。
こいつは、思い込みやらなんやらが酷く激しいようだ。
精神感応系のスキルはザルみたいに通しそうだな。
その辺りも、ちょっと強化した方がいいだろう。
俺はゴブリン改造計画第二弾に向けて、新たな改善点をそっとメモしておいた。
今年もよろしくお願いします。