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突然ですが…閑話です(○○ビル、本社会議後編)

短めです。

「話したいことですか?」


田中とは初めましてのはずなわけで、当然渡野には田中がこちらに対して話したい事など予想もつかない。

逆に、渡野の方が田中に対して聞きたい事があったくらいだ。

とはいえ、ここでパイプを繋ぐのは渡りに船とも言える。

取りあえず、話を聞いてみない事には分からない。


『ああ、いま俺国作ってんだけどさ…そこに出店する気無い?』


いきなりである。

いくらなんでもいきなりである。

当然、田中が国を作ってることなんてしらない。

何故なら、田中の国の住人の人間はほぼ攫われたか、神隠しにあった、もしくは魔物に殺されたと思われている。

そして、その住人達も自分の知り合いには現状を話しては居ない。

当然人間サイドにその情報を知るものは居ない。


「田中さんが国をですか?とはいえ、ここ最近に新たな国が興ったという話は聞いてないのですが」


当然の疑問である。

渡野が思ったままの事を口にする。

本来なら、思慮深い彼の事だ…もっと気の利いた、交渉を有利にするような返答も出来たかもしれない。

だが、あまりに素っ頓狂な話を聞かされて、つい素で応えてしまったわけだ。


『そりゃそうだろうな。まだ、正式に発表したわけじゃないしな。ただ、これから大きくなるであろうことだけは約束出来るぞ』


大魔王中野の作った牢獄から出られないくせに、偉そうに…とは思えなかった。

当の本人が捕らわれて感を全く出してない上に、こんなにあっさりと連絡を取って来たのだ。

もしかしたらわざと捕まってるだけなのではとも思えてくる。

まあ、出られないのは半分本当なのだが。

ますます訳が分からなくなった渡野が、さらに質問を続ける。


「えっと、ちなみにその国はどちらにあるのですか?」


画面の向こうで、田中が天を指さす。


『空の上だよ』


デーンっていう効果音が聞こえてきそうなほどのドヤ顔である。

空の上に国…んな事あるはずがない。

もはやこの男、中野に捕まって頭がイカれたのではないかとすら思えてくる。


「そら…ですか」

『空ですよ!まあ、今はちょっと見せられないが近いうちにここから出る予定だからさ。そうそう、あと北の世界にも展開しようぜ』


そう、田中はワタシノチェーンを田中城、そして北の世界に誘致するために直接スカウトに来たのである。

この場所を突き止めたのは本当に、ただの偶然だ。

暇潰しにケビンの様子を見ようとしたら、ここに辿りついただけだが、これ幸いにとばかりに何も考えずにスカウトに走ったわけだ。

渡野が色々と考えているのに対して、とくに考えなしに勧誘する田中。

それに対して、田中の真意をつかみ取ろうと脳みそをフル回転させる渡野。

無駄である。

答えの無い、一人禅問答を繰り返すうちに頭から湯気が出そうになって来る。

理解不能…この言葉でしか解答が導き出せない。


「いきなり現れて何勝手な事言ってんだよ」


突如梅子が田中を怒鳴りつける。


『おう、いま大事な商談中だからちょっと黙ってようか?おいゴブリン』

『なんすか?』


若干不貞腐れた感じの返事をするゴブリンのけつを思いっきり蹴り飛ばす。


『パワハラっす…』


この発言には、渡野が驚く。

なんでゴブリンが、ていうかこの世界の存在がパワハラなんて言葉を…

もしかして、このゴブリンは日本人の転生…もしくは転移者なのか?

勘違いだ。

もはや、思考と疑念のスパイラルに囚われた渡野には全てが怪しく感じられる事だろう。


『黙らせろ』

『へいへい…【沈黙(お口にYKK)


なんて雑な呪文を…田中はそんな事を思っていたが、急に喋れなくなった梅子が軽くパニックになっている。

遠く離れた地から、まさか魔法で【沈黙(サイレス)】を掛けられるとは思っておらず、レジストに失敗したのは当然だろう。

だが、またしても渡野を混乱させる結果になっていた。

YKK…だと…

それに、あんな呪文聞いた事が無い。

あのゴブリンは日本人だ!そうに違いない!


ただのゴブリンである…いや、ただのという事は無いだろう。


『まあ、いいや。取りあえず返事はまた聞かせてね!場所は掴んでるから、またこっちから連絡するね』

「えっ?あっ…はい」


そう言って通信が途切れる。

途切れる直前に…


『てめー、アホな呪文使ってんじゃねーよ!俺までアホだと思われるだろうが』

『えー、自分作ったの田中様っすよ?呪文の知識も田中様のものっすし、それでアホだと思われるなら、田中様がアホ!イタイっす!ちょっ、洒落になんないっす!物理無効無効に、毒無効無効の毒付与とか』

『お前はすでに死んでいる』

『ちょっ!それ言いたかっただけじゃないっすか!』


というやり取りが聞こえたせいで、余計に渡野は混乱するはめになるのだった。


―――――――――

「さてと…死ぬ前に何か言いたい事はあるか?」


このクソゴブリンが!折角苦労してここまで強化したってのに、ちょっと主従関係分からせてやらないといけないな。

そんな事を思いながら、指をコキコキならしながら毒でビクンビクンと痙攣しているゴブリンに近づく。


「そんな事より…解毒…」


息も絶え絶えにゴブリンが、懇願してくる。

その周囲を触手が、オロオロと動き回っている。


「そうだな、このまま殺してしまうと折角作ったのに勿体ないしな…よし解毒してやろう」

「おー、毒が!馬鹿め!自分を治した事を後悔させてやるっす!」

「馬鹿はお前だ!」


毒が抜けた瞬間に襲い掛かって来たゴブリンを殴り飛ばす。

その数、約1秒間に1億発!

12宮を守る金色の男達のみが放てる光の速度で繰り出されるパンチに、ゴブリンの身体が粉々に砕け散る。

そして次の瞬間に、空間に鳴り響くパチンという音。


「死んだかと思ったっす…」

「次は本当に殺す!」

「次までに、きっと躱せるように強化するっすよ!田中様が!」


このゴブリンの自分に対する感情を覗いてみたいと思ったが…まあ、いいかといつも通りに流してしまう田中であった。








恐らく明日の更新は難しいと思います。

年明けの投稿は3日以内に行います。

それでは良いお年を。

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(仮)邪神の左手 善神の右手
宜しくお願いしますm(__)m
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