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3名様ご案内!からの30名様ご案内!

「くっ!まだ体に魔力が馴染んでないだけなんだからね!」


 うん、全くもって可愛くない。

 いくら鬼姫といえども、THE ONIにこんな風に言われても萌えられる訳が無い。

 というよりも、俺はこいつを鬼姫として認めない。


「ふーん、というかお前ら俺の部下になる気無いか?」

「ふん!貴様如きに降るくらいなら自ら命を絶つわ!」


 ピッグが割と男前な事を言っているが、聞いているようでこれは決定事項だしな。

 取りあえず、断られたところで「はい、そうですか」と答えるつもりは無い。


「うーん、そうか?取りあえずポークにも聞いてみるか」

「くそっ!兄者を殺しておいてのうのうと!」

「そうじゃ!この状況でとうやって確認するというのじゃ!」


 2人が何やら喚いているが、魂が俺の中にある以上生き返らせる事など造作でもない。

 取りあえず、傷を治療したあとで魂を元に戻す。


「うーん…ここはどこじゃ?何やらとんでもなく巨大な魔力の中に吸収されて心地よい眠りについておったというのに」


 ふーん、俺の中って心地よいのか…こうやって言うと、ちょっとアレな感じだが違うぞ。

 それにしても、殺されたというのにこいつは呑気だな。


「ん?お主はタナカ!グレズリーまで!…あれ?わし死んだんじゃ…」

「ポーク!」

「兄者!」


 突如動き出したポークに二人が抱き着く。

 …オウキには余り抱き着かれたくは無いかな。


「お主何をした?」


 オウキが驚きと、恐怖の入り混じった目でこっちを見てくるが、普通に怪我を治して魂を戻しただけですが何か?


「ん?治療して復活させただけだが?」


 こともなげに答えると、さらに驚愕で目を大きく見開く。

 鬼のぎょろ目って怖いよね?

 つい、プイッと顔を背けてしまう。


「なっ!復活の儀式をさも簡単な事のように言ってのけるとは…お主は本当に元魔王なのか?まるで神では無いか!」


 神か…まあ、神に近い存在ではあるよね?

 だって魔法があれば、なんだって出来るんだもーん。

 っていっても、ここまで自由自在に扱える存在は俺以外に出会った事が無いから、本当に俺って出来る奴なんだろうな。

 他の魔王どもも大した事無さそうだし、大魔王と呼ばれる中野ですら俺からしたらいまいちな存在だもんな。

 適当に中野をいじめたら、神として新たな世界を創造するのも悪く無いかもな。

 っていうか、俺の寿命ってどんくらいあるんだろ?

 まあ、若返る事も出来るから、不老というかほぼ不老不死ってやつか?

 そういえば、とある漫画で100年に一度若返る老師が居たな。

 そんな感じか?


「ん?そんなに難しい事じゃないんだけどな。取りあえずポーク、俺お前を助けたよな?部下になれ!」

「えっ?いきなり何?っていうか、わしを殺したのお主の部下なのじゃが」


 くっ、そこは素直にはいって言っとけよ。


「ふん、ならば敗者は勝者に従うものじゃないのか?お主、我が主の部下になれ!」


 いいぞグレズリー!中々に空気が読める魔族というのは、殆ど居ないからこいつは貴重な部下だな。

 見た目もでかい熊だが、喋って人間っぽい動きをする熊ってのは、どこか愛嬌があるし俺の側近にしても良いかも。


「なっ!横暴じゃ!」


 横でオウキが何やら言っているが、今は大事な交渉中だからな。

 ちょっと黙ってようか…

 俺が【沈黙(サイレス)】の魔法をオウキに掛けると、ウグッ!ムー!ムー!っと呻きながら口を押えているが、なんだってこいつはこんなに可愛くないんだ…

 せめて、スタイルだけでも良くなれば…いや、無いな。

 顔が鬼でボン、キュッ、ボン!とか、マジ吐き気を覚えるレベルだ。


「確かにお主の言う事は一理あるが、わしはお主に負けた訳であって、タナカに負けたわけでは無いからのう」

「んだよ、面倒くせーな!俺のが、そこのグレズリーより遥かに強いの分かってるだろ?」


 部下にしたかったら、俺と戦えってやつですね…分かりません。

 だって、俺の部下にやられた癖に、俺に負けたわけじゃないから部下にならないとか屁理屈じゃん。

 こいつ、意外と面倒くさい奴だったか。


「もう、お前ら3人とも俺の部下にすることは決定なんだから、良いじゃん?」

「勝手に決めるな!」


 おーこわっ!豚に怒鳴られたわ。

 若干、グレズリーから怒りの波動を感じるが、ちょっと面倒臭いけど、相手してやるか。


「あーもういいわ、3人纏めて掛かって来いよ!力の差を教えてやるから。あっ、ついでに言っとくけど、俺のが中野より強いからな」

「ふんっ、何を大それた事を!こうやってちまちまと戦力を集めてるくせに、なんの信憑性も無いわ!」


 ごもっともですが、人集めてる目的が違うからな。

 単純に、奴を孤立化させるっていう地味な嫌がらせの為に、こんだけ労力かけてチマチマと、そしてジワジワと追い詰めてるだけなんだけどな。

 それを言ったら、言い訳と思われそうだから行動で示しとくか。


「良いから、掛かってこいよ!そこの鬼娘の【沈黙(サイレス)】も解除しといたからさ。いつでも良いぜ?」


 そう言って、挑発するように手をクイックイッと曲げると、鬼と豚二人が顔を紅潮させる。


「嘗めおってからに、後悔しても知らんぞ!喰らえ【豚鬼鞭(ぶたきむち)】!」

「兄者、助太刀するぜ!【火励活(ひれかつ)】!」


 へえ、ピッグは補助スキルまで持ってるのか。

 ポークの手が火を纏った状態で俺に襲い掛かって来る。


「妾もこやつだけは許せぬ!喰らえ【鬼神烈風斬(きじんれっぷうざん)】!」


 容赦ねーなこいつら、3対1だっつーのに全力の一撃をぶつけてきやがった。

 どうやったら、圧倒的な力量差を分からせる事が出来るかな?

 避けるのは違うよなー…じゃあ、指1本で受けるか?それもちょっとあれだしね。

 そうだ、あの魔法を使おう!」


「【雷撃(サンダ~ボルト♪)】」

「なんじゃ、その気の抜けた魔法は!」

「しかも、初級電魔法などでこの攻撃がってなにー!」

「馬鹿な!」


 俺の放ったヒョロヒョロの雷が、ポークの鞭打を弾いた上に、補助された火まで掻き消される。さらにオウキの放った真空波までもが掻き消し、ゆっくりとした速度で3人に向かっていく。


「くっ、だがこの程度簡単に避けられって曲がっただとー!」

「馬鹿な、進化した妾の魔法障壁を貫通するなど!」

「アバババババ!」


 2人はどうにか、苦悶に表情を歪める程度だがピッグだけは感電して、ビリビリしてる。

 面白い顔してて、笑える。

 あっ、グレズリーが白い目してる。

 これは、真面目にやれって事か?


「これ、俺の手抜き初級雷魔法な?まだやる?」

「この程度で!」


 俺の言葉に対して、ポークが忌々し気にこっちを睨み付けながらも構える。

 オウキも諦めていないようだ。

 ただ一人、ピッグだけが床に倒れ込んでピクピクと痙攣している。


「あっそ!じゃあ、これからポークの顔にパンチしまーす♪」

「ふざけるな!そんな宣言をして喰らう程間抜けじゃ、ぶっ!」


 ポークが喋ってる途中で、目の前に転移して軽めに顔面に拳をぶつける。


「喰らってんじゃん?」

「くそが!だが、この程度の拳、痛くもかゆくも無いわ」


 知ってる。

 体にダメ―ジを与える事が目的じゃないからね。

 心を折ってやろう。


「じゃあさ、これから10回顔だけを殴り続けるからね?行くよ~」

「嘗めるブッ!グハッ!ガッ!ちょっ!まっ!待って!アッ!チッ!クッ!グッ!オイッ!」


 あっ、一発余分にいっちゃったけどまっ、いっか。

 というか、これで分からないかな?


「ポーク…何故殴られると分かっていて防がぬのじゃ?」


 あっ、オウキが呆れた様子でポークを見ている。


「ひ…姫様!わしも避けたり、防御したつもりなのじゃが、ことごとくその隙間を縫うように拳が…でもこの程度、何発喰らおうとも…」

「フヒヒ!ボコボコに殴られてて良く言うわ。ちなみに本気で殴ってたら…」


 俺がそう言って、やや力と魔力を込めた拳を壁に向かって放つと、そこから発生した衝撃波で壁に大穴が空く。

 その穴を覗くと、隣の部屋と、その隣の部屋の壁まで突き抜いて外が見える。


「今頃お前の顔なんて消し飛んでるからな…」

「なっ…無理じゃーーーー!」


 ようやく膝を折ったか。

 そのバカげた威力に、オウキも口をポカーンと開けている。


「で?部下にならない?ならないなら、こっからはひたすらぶち殺して復活させて、ぶち殺してを繰り返すけど?」


 全力の威圧を言葉に込めて二人に投げかけると、2人がプルプルと生まれたての小鹿のように震える。


「くっ、きっといずれ兄者が助けに来てくれるはずじゃ!」

「…ええ、オウガ様が来られるまでの辛抱ですじゃ!」


 2人が身を寄せ合って震えるように、こっちを見て慰め合っているが多分俺の国に住んだら、そんな気も起こらなくなるはずだ。

 という訳で、3人お持ち帰り決定だな。

 ルカの方はどうなったかなっと。


『おい、コウ!聞こえるか?そっちはどうだ?』

『はっ、タナカ様。こちらは一応孤児全員を引き取る事にした方が宜しいかと。生活環境もですが、病にかかっておるものも少なくなく、いずれも死を待つばかりの状況です』


 すぐに白蛇の1人から返事が来る。

 そんなに酷い状況なのか…中野のやることも良し悪しだな。

 この世界での、魔族の地位的なものに関しては俺が行動しやすいから良いけどさ…いかんせん人間を苛めすぎだよな。

 まあ、いっか…


『で、何人くらい居るんだ?』

『はっ、下は1歳にも満たないものから、上は16歳の大人といってもよいものまで30人程度ですねって、おいやめろ、髪を引っ張るな!ちょっ、ルカ様この子をそちらに…あっ、何をするのだ!私は乳は出ぬぞ!やめろって、くすぐったい!』


 何やらあっちはあっちで修羅場みたいだな。

 すぐにでも、向かった方が良さそうだ。


「おいグレズリー!そこの3人と一緒に城に転移させるから、ボクッコと荒神に案内させとけ。俺はルカの方に行く」

「えっ?あっ、はっ!」

「なっ、転移させるって?自分以外を?そんな事…まあ、元魔王なら出来るか」

「姫様、元魔王ですぞ!魔王の力は失っておるはずでは?ってなんだこの光は…」

「ピクピク…」


 ピッグは相変わらず痙攣したままだが、取りあえず有無を言わさず全員を転移で城に送ったあと、気配を辿ってルカの元に移動する。

 そこで俺の視界に飛び込んで来たのは。


 子供達にこんこんと田中城の素晴らしさを語るルカと、赤子に乳を吸われているコウの姿だった。

 ハクはどうやら病気の子供達の治療に当たっているみたいだったが、コウが顔を真っ赤にしながら耐えている姿を横目で見ながら、ほくそ笑んでいた。

 なかなかに良い性格をしているようだ。


「あっ!田中様!」


 俺の姿に気付いたルカが、俺の元に駆け寄って来る。

 それから、子供達に俺の紹介を始める。


「こちらが、私の国を統べる田中様だ!この方は、素晴らしい魔法の使い手で、この方の元で真面目に働いて暮らせば、ここどころか、この世界でも恵まれた暮らしが送れるぞ!」


 ルカが一生懸命に説明をしているが、しかしながら子供達の反応は余り良くない。

 殆どの子供達が、子供らしからぬ冷めた目…諦めたくすんだ瞳をしている。

 これは良くない、こんな目をした子供達は見てられないな。


「ああ、いいよ。俺が自分で説明しよう…ところでお前ら汚ねーな」


 いきなりの俺の言葉に、子供達があからさまに不満げな表情を浮かべる。

 ついでに言うと、ルカも何言ってるんですか?といった呆れた表情をしているが、まあ良いだろう。

 取りあえず、ハクが治療をしている子供達が心配だ。

 天然痘や、麻疹、中には結核の子供まで居るのか。

 目の前の元気そうな子供達の中にも、結核に感染している子達が大勢いる。

 取りあえずは、魔法で病気は治しておこう。


 俺の身体がから、柔らかい青い光が流れ出るとすべての子供達を包み込む。

 すぐにハクが治療していた子供達の呼吸が落ち着き、出来物も収まっていく。

 目の前の子供達も、体調があからさまに良くなった事に驚いている。

 だが、まだまだこれからだ。


「取りあえず、清潔にしとかないとすぐに病気にかかるからな」


 そう言って、浄化の魔法を掛けていくとドロドロに汚れていた体がまるでお風呂上がりのように綺麗になっていく。

 油や汚れでベタベタしていた髪の毛もサラサラになっていく。

 こうして綺麗にしてみると、みんな愛くるしい顔をしてて幸せにしてあげたくなってくるな。


「なにこれ!汚れが無くなった」

「あたいの髪の毛凄いサラサラしてる」

「良い匂い…」

「えっ?魔法なのこれ?」


 皆が口々に、驚きを隠そうともせずにはしゃいでいるが、服が汚いな…

 服も綺麗なものにしてやるか。

 そうだな、女の子には分かりやすくオシャレなワンピース、男の子は…Tシャツとジーンズで良いか。

 魔法で全員の服を作り替えると、はあという感嘆の声が漏れる。


「服が…」

「チャム可愛い!」

「ジョンもカッコいいよ!」

「レベッカ姉綺麗」

「有難う、貴方も可愛くなってるよ」


 お互いの姿を褒め合っているが、全員ようやく見れるようになったか。

 横でルカが呆れた表情をしているが、良いんだよ。

 俺が子供に甘いのは自覚しているからな。


「どうだ?これが俺の力だ。俺の国で、色々手伝ってくれたら、ずーーーーーーっと、こんな風に不自由の無い生活を送れるぞ?」


 とどめに【三分調理(キューピー)】で色んな料理を作り出して目の前に並べる。


「俺の国に来てくれる子は、今からこれを食べても良いんだよ?」


 俺の言葉に、ほぼ全員が


「僕、おじさんの国に行きたい!」

「一生懸命働くから、連れてって!」

「私も頑張る!」

「ちょっと貴方達、そんな簡単にこんな怪しい人を信じたらだめだよ!しょうがないから、お姉ちゃんがついて行ってあげる!」

「レベッカが行くなら仕方が無いな。俺もついていくよ」


 一部素直じゃない子もいるが、ようは行きたいって事だな。

 ほぼというか、全員が付いてきたいと言ってくれた。

 うんうん、子供達だけじゃ大した労働力にならないかもしれないが、14~16歳くらいの子も7人くらい居るし、ルカの負担を減らせる事も出来るかな。


「キミも来たいよねー。私がちゃんと面倒みてあげるからねー」


 コウが腕の中でスヤスヤと寝息を立て始めた赤ちゃんに話しかけている。

 どうやら、母性が目覚めたようだ。


「じゃあ、ここにある料理を食べ終わったら、全員纏めて連れてってやろう!さあ、どんどん食え!おかわりも作ってやるから、気に入った料理があれば言えよ!」


 俺の言葉に、全員がわあっ!と歓声をあげて料理に飛びつく。

 そう全員がだ…ルカもハクもコウも、俺の作った料理に飛びついている。

 お前らは、今までも食ってきただろうに…



ブクマ、評価、感想頂けると幸せです。

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(仮)邪神の左手 善神の右手
宜しくお願いしますm(__)m
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