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1話

 男から切符を貰った圭は家には帰らずに近所の神社に向かった。

 そこには旅立つ為に準備した荷物があるからだ。家には実家の者達が入り込み、それぞれの遺品として、勝手に持ち出されている為物がほとんど残っていない。


 神社にたどり着いた圭は裏口から中に入るとそこに置いておいたリュックサックを背負う。中には下着や保存食、異世界で売れそうな宝石類が入っている。武器としてサバイバルナイフも2本入れてある。


「よし。あいつらに邪魔される前に行こう。それじゃあ、行ってきます。父さん、母さん」


 圭は切符を裏口に張り付けて、一度振り返る。そこには誰も居ないのだが、この世界に天国があるなら、そこに居る両親に別れを言いたかったのだ。


 異世界に繋がった裏口を開くと虹色に輝く壁になっていた。そこに入ろうとした時、圭の身体に風が当たった。それはまるで、行ってらっしゃいと両親が言ってくれてるようだと圭は感じた。

 圭は今一度、大きな声で行ってきます!と口にして旅立って行った。




 その後、圭は行方不明として扱われ、両家では色々な説が囁かれたが、数日後には以前と変わらない不仲の日常に戻っていた。



◇◇◇◇◇



 虹色の壁を抜けると、そこは薄暗い建物の中だった。

 壁は崩れていたり、苔が生えており、長い年月使われていないのが一目でわかる。


 薄暗いのも、天井や壁に開いた穴から差し込む光があるからだ。


「無事に来れたみたいだけど・・・。文明が滅んだ世界なのかな・・・」


 周りの状態を見た圭は不安になり、額に冷や汗が浮かぶ。とりあえず、周りの確認の為に今いる場所を離れる事にした。


 建物を調べてわかったのはここが古い協会みたいな場所という事だ。

 最初に居た場所は2階の部屋の一つだった。

 あと、幸いな事にこの協会は風化で壊れただけのようで、小説やアニメみたいなモンスターによって壊された様子はなかった。

 しかし、モンスターがいない世界かと聞かれると『否』である。

 部屋に飾ってあった絵に竜やモンスターと思われる絵が有ったのと、破れてほとんど読めないがモンスター図鑑のような本も有った事からこの世界にはモンスターがいると思っていたほうがいいと結論した。


「あらかた調べたけど、変わった物はあれだけかな」


 中央の大広間に有った大きな箱だ。祭壇に置かれた箱は苔に覆われていたが未だにしっかりした造りをしていた。

 持ち出されていないのは祭壇にしっかりと固定されていたためだろう。まだ中身は見てないが、他も調べ終わったので明日には開けてみようと思っている。




 翌日、圭は保存食を食べて腹を満たすと、箱の前に来ていた。

 何か罠があるかと思ったが、祭壇に罠もおかしいと考え覚悟を決めて一気に箱の蓋を開けた。


「うわっ!」


 すると中から白い光が溢れ出し、びっくりした圭は声を上げて後ろに数歩下がった。

 光は3秒ぐらいで収まり、圭は箱の中を覗き込むと中には白色の腕輪が一つ入っていた。


「腕輪・・・?箱は苔だらけなのに、腕輪は新品みたいに綺麗だ」


 圭は腕輪を手に取るとじっくりと見回す。全体は白色で素材は鉄に似ていて硬かった。装飾に不思議な模様が彫ってあった。


 圭は危険はなさそうと思い右手に腕輪を着けた。左手にしなかったのは単純に左手に時計をしていたからだ。


 腕輪を着けると圭の頭に突如、情報が流れ込んできた。軽い頭痛程度の痛みが圭を襲う。


「痛っ・・・・・あぁ、やっぱり異世界なんだな」


 圭は頭に流れる非現実的な情報にここが異世界なのだと改めて思ってしまった。



飛突剣ひとつけん

 Lv・1


 それが一番最初に流れて来た情報だった。

 そのあとは飛突剣の使い方が流れ込んで来る。どうやらこの飛突剣とは斬るという剣とレイピアなどの突く剣の中間ような剣だった。形は西洋の両刃剣のようだが、柄が極端に短く、刃の長さも50cm程だ。


 これは指の間に挟むように持ち、投げる投擲武器だった。圭の投擲力次第では遠距離から近距離まで使える万能武器だ。


「凄いな・・・まさにファンタジーな武器だ。まずは練習が必要かな」


 圭は腕輪に飛突剣を一本出すように指示を送る。ただ考えるだけだが・・・


 すると圭の手の中に剣が現れた。


「軽っ!!」


 その軽さに驚いた。

 剣の重心も剣先寄りで投擲に適した造りだ。しかし、刀のような波紋は無い。


 早速指に挟むように持ってみる。柄の先を手の腹と親指で挟み固定する。数回振ってみるが、初めてなのに使い慣れたような感覚があった。


「本当に不思議だ。手に馴染むし、違和感も・・無い!」


 言いながら腕を横に振り、剣を壁に投げる。剣は狙った場所より少し上にズレた。


「投げる方はそう上手くはいかないか・・・」


 再度、手に剣を出現させてもう一度投げる。今度は下にズレた。

 その後も投げ続けたが、わかった事が2つあった。


 1つ目は一度に出せる剣の数。剣は10本しか出せなかった。しかし、離れていても圭の意思で剣を消す事が出来、消すとまた出せる。出現数が10なら無限に出し入れ出来るようだ。

 2つ目は出現場所。剣は圭の体から30cmまでならどこにでも出せた。腕輪からで無く、体からからだ。


 練習でその日は終わり、翌日圭は建物の周りの探索に出るのだった。

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