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誕生石へのエチュード  作者: なつ
第六章 アメジストはサファイアとターコイズにかしずいて
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 6

 芹沢雅はベッドの縁に座っている。その正面に、甲斐雪人、それから篠塚桃花も、小さな椅子に座っている。まるで人形のようだ。雅は今高校の体操服を着ているし、甲斐が着ているのは雅が中学の頃使っていたジャージだ。それに比べ、篠塚は一人、まるでどこか異国の貴族のように、ゴシックなドレスをきている。あらわになった胸元に、首元からリボンが揺れている。どんなときでも、篠塚はそうだ。決して乱れることはないし、己を持っている。そう簡単に精神が左右されない。むしろ、すべてにおいて篠塚は勝っている。本人が望めば、雅は今の地位すべてを譲ってもいいと思っている。

「雅よ、確認したいのだが、ずっとこの部屋にいたか?」

 その人形の口が、ゆっくりと音を紡ぐ。篠塚の質問を理解できず、雅はええ、とまず答える。

「わたくしは、この部屋から出ておりませんわ」

「さっきよりも落ち着いていますね。もう、化け物が何だったのか、今なら分かりますか?」

「化け物は化け物です。あれをどう表現しろといわれても、わたくしには化け物としか表現できません。きっと、甲斐君があれを見ても、やっぱり化け物と言うと思いますわ」

「それは、世間一般的に、人間、と呼ばれる化け物じゃないですか」

「……」

「僕は、この結論に自分自身納得できません。ですが、客観的に、こう結論せざるを得ない、と思うのです」

「あら、どんな結論かしら」

「僕と桃花はほとんどずっと一緒にいます。例外は、スージー捜査官の取調べを受けていたときと、昨日の夜だけです。それ以外はずっと一緒にいた。だから、お互いのアリバイを証明できます」

「それは、アリバイにならないんじゃないかしら。わたくしからすれば、同様のことがあなたたちに言えると思います。だって、わたくしは動けないのですから」

「それは嘘です」

「どうして嘘だと思うの?」

「嘘じゃないと、話が進まないからです」

「何よそれ?」

 雅は少し膨れて見せた。

「パーティーの最中に丁子を殺し、スージー捜査官の取調べの間に萌を殺す。後は夜の間に、スージーと蘇芳も」

「夜はずっと桃花と一緒にいましたわ」

「私はさっさと寝てしまったが」

「もう。こういうときは、嘘でもアリバイを証言して欲しいわ」

「あとは、僕たちの行動を監視しつつ、一人ずつ殺してゆく」

「そんなこと可能かしら」

「可能だったから、やっているんです」

「何よ、それ?」

 もう一度雅は膨れて見せた。

「でも、ここまでうまくいくなんて思ってなかったんじゃないですか。だって、僕たち以外、見事に殺し終わるなんて。それとも、僕たちも狙われてるのかな」

 雅は何も言わない。

「犯人はあなただ、芹沢雅、あなたがみんなを殺したんだ!」

 座ったまま甲斐はそう宣言すると、雅にまっすぐ指を刺した。

 その状態が、数十秒続く。

 それから、甲斐が声をあげて笑い出す。

「なっ?」

 その笑い声に、雅は妙な声を出す。

「甲斐よ、お前、いつから気づいていたのだ?」

「桃花だって、いつから僕が気づいていると気づいていたの?」

 どうやら、すべて終わったようだ。


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