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芹沢雅はベッドの縁に座っている。その正面に、甲斐雪人、それから篠塚桃花も、小さな椅子に座っている。まるで人形のようだ。雅は今高校の体操服を着ているし、甲斐が着ているのは雅が中学の頃使っていたジャージだ。それに比べ、篠塚は一人、まるでどこか異国の貴族のように、ゴシックなドレスをきている。あらわになった胸元に、首元からリボンが揺れている。どんなときでも、篠塚はそうだ。決して乱れることはないし、己を持っている。そう簡単に精神が左右されない。むしろ、すべてにおいて篠塚は勝っている。本人が望めば、雅は今の地位すべてを譲ってもいいと思っている。
「雅よ、確認したいのだが、ずっとこの部屋にいたか?」
その人形の口が、ゆっくりと音を紡ぐ。篠塚の質問を理解できず、雅はええ、とまず答える。
「わたくしは、この部屋から出ておりませんわ」
「さっきよりも落ち着いていますね。もう、化け物が何だったのか、今なら分かりますか?」
「化け物は化け物です。あれをどう表現しろといわれても、わたくしには化け物としか表現できません。きっと、甲斐君があれを見ても、やっぱり化け物と言うと思いますわ」
「それは、世間一般的に、人間、と呼ばれる化け物じゃないですか」
「……」
「僕は、この結論に自分自身納得できません。ですが、客観的に、こう結論せざるを得ない、と思うのです」
「あら、どんな結論かしら」
「僕と桃花はほとんどずっと一緒にいます。例外は、スージー捜査官の取調べを受けていたときと、昨日の夜だけです。それ以外はずっと一緒にいた。だから、お互いのアリバイを証明できます」
「それは、アリバイにならないんじゃないかしら。わたくしからすれば、同様のことがあなたたちに言えると思います。だって、わたくしは動けないのですから」
「それは嘘です」
「どうして嘘だと思うの?」
「嘘じゃないと、話が進まないからです」
「何よそれ?」
雅は少し膨れて見せた。
「パーティーの最中に丁子を殺し、スージー捜査官の取調べの間に萌を殺す。後は夜の間に、スージーと蘇芳も」
「夜はずっと桃花と一緒にいましたわ」
「私はさっさと寝てしまったが」
「もう。こういうときは、嘘でもアリバイを証言して欲しいわ」
「あとは、僕たちの行動を監視しつつ、一人ずつ殺してゆく」
「そんなこと可能かしら」
「可能だったから、やっているんです」
「何よ、それ?」
もう一度雅は膨れて見せた。
「でも、ここまでうまくいくなんて思ってなかったんじゃないですか。だって、僕たち以外、見事に殺し終わるなんて。それとも、僕たちも狙われてるのかな」
雅は何も言わない。
「犯人はあなただ、芹沢雅、あなたがみんなを殺したんだ!」
座ったまま甲斐はそう宣言すると、雅にまっすぐ指を刺した。
その状態が、数十秒続く。
それから、甲斐が声をあげて笑い出す。
「なっ?」
その笑い声に、雅は妙な声を出す。
「甲斐よ、お前、いつから気づいていたのだ?」
「桃花だって、いつから僕が気づいていると気づいていたの?」
どうやら、すべて終わったようだ。




