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誕生石へのエチュード  作者: なつ
第五章 ガーネットとトルマリンには血の赤を
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 6

 芹沢雅を彼女の部屋に連れていき、ベッドに休ませると、甲斐雪人と篠塚桃花、芹沢菫はその部屋の外で、話し出す。

「それにしても、犯人が化け物だなんて」

「そんなはずがない」

「でも、雅ちゃんが、化け物だって」

「例えだろ。あんなの、人間じゃない、化け物って、あんなのは、犯人を指しているのは間違いないだろうし。頭の中で、人間だって思ってるから、人間じゃないって表現したんじゃないかな」

「それじゃあ、雅ちゃんが犯人を見てるってこと」

「間違いなく。でも、とてもそれが誰かを聞けるような状態じゃない」

「あんな弱っている雅を見たのは、私も初めてだ。とにかく今は落ち着くまでそっとしておくしかないだろう」

「でも。一人にして大丈夫か?」

「鍵もかけたし、大丈夫だろ」

「化け物のような人間が相手だぞ」

「犯人は鍵を使って非常階段のとこの扉をひらけて閉めているからね。化け物でも、鍵は必要だってことでしょ」

「なるほど。だが、気休めにしか私は感じられぬ」

「それよりも、茜さんを確かめに行かないと。多分、今から行っても、そこに残っていないだろうけど」

「は、それは面白い冗談だな、甲斐よ」

「冗談じゃないよ。確信」

「ま、待って。あそこに行くの? 私嫌よ」

「でも」

「嫌、ここで待ってる」

「一人にするわけにはいかない」

「なら、雅ちゃんと、一緒にいる。中にいれば安全なんでしょ」

「桃花は?」

「私は甲斐と一緒にいる。そのほうが安心できる」

「それはどうも」

 甲斐は再び、雅の部屋を開けると、菫を中に入れてから鍵を閉める。甲斐は考える。これで、すべての準備が整ったことになるのではないか、と。

 それは表に出さず、甲斐は篠塚を連れて廊下を歩き出した。そして階段を下りると、会場の扉をそのまま開ける。

 案の定。

 その目の前になければならない茜の姿はなかった。けれど、血の海は残されている。それもきれいに、まだ新しいことが分かる。

 それから上を向くと、中空に四匹の蝶々。

 スージー・F・パールと、その左右に芹沢蘇芳、芹沢萌。

 そして、その上に芹沢鴇だ。

 甲斐の左手を握る篠塚の握力が強くなる。おそらく、甲斐の視線にあわせて、あの状態を確認したのだろう。

「私たちは、もしかして全員あそこに吊るされるのではあるまいな」

「そんなことはさせない」

「もしかして、あそこに鴇があるのも、確信していたのか」

「最悪の確信だけどね。だけど、順番が一人欠けている。それがヒントかもしれない」

「日達瑠璃のことか」

 甲斐は頷く。

「私は、今回まるで役に立っておらんな」

「そんなことないよ、桃花。結構心強く思ってるんだから」

「本当か」

 甲斐はそれには答えず、とにかく、と続ける。

「これ以上犯人に好き勝手やらせるわけにはいかない。そろそろ終わりにしないといけない。手伝ってくれるだろ?」

「もちろんだ。私は甲斐のためならなんだってやる」

「ありがとう」

 篠塚は返事をしなかった。


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