5
今、玄関ホールにほぼいなければならないすべての人間が集まっている。芹沢鴇、芹沢菫、芹沢浅葱、芹沢茜、芹沢雅、篠塚桃花、甲斐雪人。
朝から行方の分からない芹沢蘇芳は、まだ見つかっていない。同様に、日達瑠璃の姿もない。今はパーティー会場の出入り口は閉められ、同じように玄関も閉まっている。茜が蘇芳の部屋を見たとき、そこにいた甲斐と篠塚は偶然ベランダにいた。二人に確認すると、玄関から日達瑠璃が出て行くところは見ていないという。
それで、そのあと一階、二階の各部屋を見て回った。念のため、茜たちの部屋ものぞいたが、蘇芳も瑠璃も見つからなかった。
「確かに、玄関から出て行ったのであれば、私たちがあの状況で見逃すとは思えないが。北側の窓から飛び出していったとなれば、それを見ていることはできない。だが、少なくとも敷地から出て行っていないことは確かだ」
篠塚が、集まっている人たちの一角で、俯きながら言う。
「まだ、見ていない部屋が三箇所ある」
その中で、甲斐が手を上げて静かに言った。
「できれば、見たくない場所ではあるけど」
「甲斐よ、それは、まさか?」
「パーティー会場と、丁子さんの仕事場、それに萌さんの部屋。可能性として、そこに逃げ込んだことも考えられるんじゃないかな」
「パーティー会場は、ないと思いますわ。わたくしが、先ほど中を見ていたくないと思いまして、そこの扉を閉めさせていただいたのですが、そのとき誰かがいるように思えませんでした」
「テーブルの下は? 長いクロスが架かっていたと思うけど、隠れようと思えば隠れることができる」
「恐くて逃げ出したんだ、そんなことないだろう」
腕を組んだまま、浅葱が首を捻る。
「逃げだした、ということは分かるけど。どうして、恐くて、と思ったのですか?」
「え、それは、まあ。うん、何となく?」
「とにかく、もう一度みんなでパーティー会場を確認しましょう」
「あの、私、できれば遠慮したいのだけど」
震える声で菫が答える。
「ここで待っててもいい?」
確かに、表情は白くとてもあの場面を再び見られる状態ではなさそうだ。甲斐は分かった、と頷くと他のメンバーに確認してから、ゆっくり会場の扉を開く。
同時に、パールの宝石が揺れる。
その奥に、中空に浮かぶスージーの姿。四方に渡されたロープは、2階と1階の窓枠に固定されている。広い会場の中、他に存在は感じられない。中央に置かれたテーブル、そこにかかっているテーブルクロスは、わずかに床から離れていて、屈んでみればそこに誰も潜んでいないことが分かる。けれど、まだ可能性がないわけではない。テーブルの裏に自らを縛ってまで隠れる必要はないと思うけれど。
甲斐はゆっくりと歩いていき、そのテーブルクロスをめくりあげる。
やはり誰もいない。
「どうやら、はずれであったようだな」
「うん。これで、この会場に誰もいないことは確実だね」
甲斐は念のため、もう一度会場を四方見渡す。入り口の上の窓が、昨日のまま割れている。北側に、外へと出ることができる窓もあるが、そこは鍵が掛かっていた。少なくともここから外へは出ていないようだ。
会場の中央に戻ってくると、雅の表情が強張っている。いや、雅だけじゃない。浅葱も鴇も、茜もそうだ。皆一様に表情は硬く、視線も定まらない。早くこの会場を出たほうがいいと思い、甲斐は率先してその会場を外へ出た。
玄関ロビーに、菫がいなことに甲斐は気がつく。
「くそっ」
甲斐の舌打ちに、けれど菫は2階の階段から降りてくるところだった。
「どこに行ってたんだ!」
「ご、ごめんなさい」
「今の状況が分かっているのか?」
「あの、おトイレに。どうしても、我慢ができなくて」
「だからって、このタイミングに」
「ごめんなさい」
降りてきた菫は、やはり震える声で答える。それを雅が支え、甲斐はもう一度唇を噛んだ。
「無事だったのだ。気にする必要はなかろう?」
「うん、そうだけど」
「とにかく、次は2階だな」
今度は篠塚が手を上げて、皆を引っ張るように歩き出した。




