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パーティー会場に残っているのは、甲斐雪人と篠塚桃花、それから日達瑠璃だけだ。他のメンバーは皆、二階に行ってしまっている。
けれど、まだ瑠璃には何が起きたのか分からない。ただ、よくないことが起きたのは確かなようだ。一番最初に甲斐と篠塚は部屋を出ていった。それから、芹沢茜と、さらに芹沢蘇芳も続く。
しばらく待っていると、甲斐が会場に飛び込んできた。スージー・F・パールに声をかけ、そのとき芹沢雅も一緒に会場から出ていく。
それからまたさらに待っていると、甲斐と篠塚が戻ってきた。そして、瑠璃以外のメンバー、つまり芹沢鴇、芹沢菫、芹沢浅葱の三人に、どこかへ行くようにと告げる。
そして、会場には今三人しか残っていない。
「ねえ、何があったの?」
まるで今日の寝起きの瑠璃の表情のように青くなった甲斐に話しかける。そっとしておいて欲しいと、顔が言っているけれど、仲間はずれにされているようで、瑠璃は面白くない。けれど、できれば聞かないほうがいいかもしれない。
「ねえ、何があったの、ももちゃん?」
返事をくれない甲斐の代わりに、その隣で甲斐の手を握っている篠塚に瑠璃は話しかける。
「私は何も知らない」
「知らない?」
「甲斐に止められたからな。状況的にはお前とほとんど知っている情報に違いはない。ただ、2階で何かが起きた、ということしか分からぬ」
「何かって?」
「さあな。だが、甲斐があまりにも死にそうな顔をしていたから、こうして下に連れてきたんだ。落ち着けば話してくれるだろう」
「ももちゃんは、甲斐くんのこと好きなのね」
「な、何をいきなり言ってるんだ」
「ふふふ、お姉さんには秘密は通じないわよ」
「全く。それどころではないことが起きているのだぞ」
「そうねぇ。せっかくの雅ちゃんの誕生日だっていうのに。本当、残念だわ」
「甲斐よ、少しは落ち着いたか」
「ああ、ごめん、ありがとう」
「それで、甲斐は何を見たのだ?」
「羽と卒」
「ソツ?」
「ももはどういう意味だと思う?」
「何の話だ?」
「いや、何でもない。もう少し、落ち着くまで待って」
それでも、瑠璃から見て甲斐の表情はかなり落ち着いてきている。先ほどの白さはないし、多少血色もよくなっている。
ガチャと音がして、会場の扉が開く。ただ、白衣姿のスージーがまっすぐ入ってきて、瑠璃と甲斐を睨む。
「それで?」
「あなたたちは家族ではないから、単刀直入に言う。殺人ね」
スージーから、何事もなく殺人という単語を発する。
「芹沢丁子が殺された。凶器はロープによる絞殺。ものも部屋の中にあった」
「ちょ、ちょっと、殺人、え?」
「なんだ、甲斐から聞いていなかったのか。だが、これは事実だ」
「け、警察、へは?」
「残念ながら連絡しないそうだよ」
「え?」
驚いた瑠璃の目の前に、スージーが何かを見せる。
彼女の写真と、その下に文字。
「FBI?」
「そう。私がこの事件を解決する」




