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遠くで、まだ続く残暑を楽しむように、蝉が大合唱を続けている。
「それでは、そういうことでよろしい、でしょうか?」
「はい。異存ありませんわ」
「分かりました。では、こちらで残りの準備を進めたいと思いますが、一つだけこちらでは用意できないことがございます」
「ええ、分かっていますわ。わたくしの知り合いにつてがございますから。おそらくは問題ないかと、思います」
「ですが、当日どのようなことが起きるのか、想像もできません」
「そうですね。もちろん、そのようなことが想像できてしまうほど、わたくしもすぐれておりません。もしかしたら、あの子ならおおよその見当がついてしまうのかもしれませんが」
「あの子?」
「ふふふ、当日に分かります」
「はぁ、まあいいですけど、あまり不確定要素が多すぎると、こちらの行動も制限されてしまいますから」
「ええ、もちろん承知しております。そのための、少し強引ですけど、準備もしっかり行ってまいります。ですからどうかそんなに心配なさらないで」
「心配は、してないですけど」
「そう? それならいいのですけど」
「ですが、最後にもう一度確認させて下さい」
「いいわよ」
「最初の犠牲者は、丁子様で」
「それが、一番お互いにとって都合がよろしいですから」
「分かりました」
「どうぞ、よろしくね」
「はい……」