序章……40年前の悲劇
初ホラーです。
楽しんでいただけましたら嬉しいです。
――それは誰もしらない、いや知ってはいけない、40年前の出来事が発端でした――
ミシミシミシ……。
不古ぼけた旧校舎の音楽室。
破損し廃棄するために積み上げられた会議用テーブルで弄ばれる。
揺れ軋む音と見えない何か(・・・・・・)がわたしの身体を締め付け揺らす。
ミシミシミシ……。
指先から蠢き這い上がる蛆虫。
虚空の食欲に支配されてわたしの指先から手首に向かって血肉を貪る。
痛くて、痛くて、痛くて。
見えない何か(・・)に締め上げられた細く華奢な身体に黒く澱んだシミが少しずつ広がる。
肌は白亜美しさ、滑らかな青磁みたいと褒められた触り心地だった……わたし。
白が黒に浸食されていくにつれて全身が熱くなり意識がぼんやりと絶望していく。
こんなはずじゃなかったの……。
やがて、黒く澱んだシミは小さく膨らんだ胸にほっそりとした太ももを蹂躙していく。
そして、喉を震わせたわたしは快楽を貪るように柔らかな肉の断面に群がる蛆虫たち押しつぶすほどに両腕で肉体を掻き毟る。
怠惰と快楽が脳内で濃密に錯綜して汚れなど無縁のはずだった魂まで澱んだシミに浸食されていく。
ミシミシミシ……。
屹立した双丘、血塗るられた胸元を覆うことも気怠い。
食い破られた脇腹から流れ出る臓器。
……いいの、いいの、いいの、素足のつま先から頭のてっぺんまで見せてあげる。
見せてあげる、見せてあげる、見せてあげる……だから欲しいの……貴方が欲しいの……。
ミシミシミシ……。
ただ虚空を見つめる瞳は何かに諂い乞う。
わたしの身体が喰われていく……大好きな貴方に喰われていく。
今は始まり……みんな……生きて帰れないよ……ごめんなさいお母さん……ごめんなさいお父さん……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
沢山の蛆が這う薄汚れた学生服だけが憐憫な惨状を記憶していくように。
いかがでしたか?
続きが二話ほどありますのでよろしくお願いします。