壁 ~short version~
人によって感じ方が大きく違うと思います。
ある町の、町外れ。そこには一人の青年が住んでいました。
青年はその町では珍しい、金色の髪に青い目をしています。
青年が町に来るときは、いつもお腹が空いているときです。
町ではたくさんの食べ物を買います。それ以外は何も買いません。
町の人は、青年がどんな仕事をしているのか、家族がいるのかも知りません。
名前すら、知りません。
誰も、何も知りません。
青年は喋りません。町の人が声をかけても返事をしません。振り返るだけです。
青年が帰るときは真っ暗です。みんな寝ています。
誰も、何も知りません。
青年が町に来るのは三日に一度です。町の人は三日に一度だけ青年に会えます。
ある日、青年が町に行く途中、道に壁がありました。
壁は小さくてとても薄いです。子供でも楽に飛び越えられます。
青年は壁を飛び越えます。
今日も食べ物だけを買いに行きます。
町の人は笑いかけます。
町の人は手を振ります。
三日後、青年が町に行く途中、道に壁がありました。
壁は高くてとても薄いです。大人でも横を通ります。
青年は壁の横を通ります。
今日も食べ物だけを買いに行きます。
町の人は手を振ります。
三日後、青年が町に行く途中、道に壁がありました。
壁は大きくてとても薄いです。誰でも穴を開けて通ります。
青年は壁に穴を開けます。
今日も食べ物だけを買いに行きます。
……。
三日後、青年が町に行く途中、道に壁がありました。
壁は大きくてとても厚いです。誰でも通れません。
壁を登ってみます。頂上が見えません。
壁の横を通ってみます。終わりが見えません。
壁に穴を開けてみます。先が見えません。
青年は諦めました。
三日後、壁はありません。
青年の家には、誰もいません。
彼はどこに行ったのでしょう。
一応これで終わりですが、これの長いバージョンもあります。
長いといってもこれの三倍ほどの量なので短いです。
何か思うところがありましたら、そちらもぜひ読んでみてください。