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番人の  作者: ニコラス
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番人と蜥蜴の女王

前にも語った事があるが。


魔族を特性や特徴によって分類し、名前を付けようとするのは人間だ。

魔族のほとんどは、そんなことに拘らないので、勝手に名前を付けられているなど知ってすらない者もいる。

と言うか、魔族は積極的に人間に関わっていこうという意識が極端に薄いため、一部の物好き以外には人間に会う事すら稀だ。




だが、何事にも例外はいる。


〈竜種〉だ。更に人型を日常的にとるものを竜人、人型をとることが出来ず巨大な羽の生えた蜥蜴の姿をとるものをドラゴン、と分類する。

ちなみに“蜥蜴”という表現は竜種にとって侮辱に当たるため八つ裂きにされても文句は言えない。


竜種は人間と積極的に関わり、共存と言っても良い程

生活に溶け込む珍しい種族だ。

私もまだ、人間の国に行ったことはないので、本からの情報と伝聞でしかないのだが、人間の国では肉体の強化魔法と広範囲攻撃に優れた竜人を傭兵や兵士として雇うことも多くギルドではパーティーには是非とも欲しい!と言うことらしい。



何故竜種は平気で、魔族は恐がるのか。前世の記憶をもってしてもいまいち此方の人間が分からない。




そんな竜種にも、魔族領に住む者はいる。

元竜種の長で公爵でもあったガルマン・ファンザードとその孫、現竜種の長であり公爵のロゼグシュタ・ファンザードとその家族。そして部下達だ。


そして思い出して欲しいのが、魔族の下剋上制度。

もちろんロゼグシュタもガルマンを打ち倒すことで長の地位と公爵の位を手にしている。

ちなみに、公爵と官職拝命の為の試験には1人は立会人を付ける事が義務づけられるのだが、ガルマン爺には私と前門番の立会人となって貰った過去がある。

その為、ガルマン爺は私の副業である薬師の良いお客様兼茶飲み友達だ。

魔族の薬師は、契約魔法の一種である、儀式魔法の生け贄や供物で出来たものを売ることが多い。


人間に魔女の種族とされるだけはあるようで、精神操作に加え儀式魔法が得意な私は、細かい魔力操作の苦手な竜種と基本的に相性が良いのだ。


儀式魔法は契約魔法と原理は同じだが術者への負担が違う。契約魔法は相手や自分の魔力を起こしたい事象にあうだけ消費する為、大量の魔力が必要になるが、儀式魔法は複雑な手順を踏み生け贄や供物によってその消費量を減らしている。


魔力が少しで良いなら、そちらの方が良いじゃないかと思うかもしれないが、儀式魔法は全ての魔族が使える訳ではない。


一番の理由はどの儀式に何を供えればいいのかが、分からないという点だ。私達魔女や悪魔含め一部の魔族は、何故か感覚的に必要な物が分かるのだか、他の魔族は違うらしい。ぶっちゃけ、私達でさえ本当になんとなく、これが必要な気がするな~程度の感覚でやってるので原理は全く分からない。


そして、二番目の理由は細かな魔力操作が必要になるという点。いくら必要な物を揃えても、針に糸を通すような細かな魔力操作が必要な儀式魔法は、脳筋の多い魔族には難しいようだ。


竜種などその典型で、そんなマネをするくらいなら始めから儀式魔法を使える者から買った方が手っ取り早い。

しかも、私が作る物には魔力が篭るので強力で質が良いと中々の評判を貰っている。


咄嗟の戦闘には儀式魔法は向かないが、ストックしておけば持ち運びも出来るので、必要とする魔族が多く、

コネも作れて稼げる良い副業となった。





そんな持ちつ持たれつなガルマン爺は、少々食えない所がある以外は、気の良いお爺ちゃんで、

実力も全盛期程では無いらしいが、十分強い。

ガルマン爺が調子に乗って出した広範囲ブレスに前髪を焦がされて、思わず特性毒爆弾を投げかけたのは良い思い出だ。

あれ投げると半年は草木も生えぬ毒空間となるので、危うく人の庭を危険地帯にしてしまう所だった。


まぁ要するに、あまり敵には回したく無い相手だ。


そんな、ガルマン爺の娘であるロゼグシュタさんは、

なんと言うか、うん。アレな人だ。


竜種は、得意の肉体強化魔法で細胞を強化するため、細胞の劣化が遅く寿命が長いという特徴がある。

個人の力量により差はあるが、竜種は見た目の若さを強化具合によって自ら変えることができるので、見た目では年齢をはかることは難しい。

ロゼグシュタさんはガルマン爺の話だと、今年で312歳になるそうだが見た目は私と変わらない19歳位に見える。ちなみに何の爵位も持たない一般の竜種の寿命が300歳。驚異の若ずくりである。


公爵位を持つほどの魔力ともなれば、劣化も更に遅くなるのか、ガルマン爺は632歳であることから考えても

娘さんはまだまだ現役で働かれると思われる。


ロゼグシュタさんは腰まである毛先のウェーブがかった

銀髪を持つ女性できつめの美人さんだ。

私が番人であるように、騎士団を任されていて騎士団長という立場ではあるのだが、常に膝丈のドレスを身に纏い、魔族がまだ人間と争っていた時代の名残で習慣的に隠している角を隠すことなく晒している。(尻尾さえ仕舞わないけど邪魔じゃないのかな)更に鎧さえ着ないかなり大胆な方だ。

なんでも、


「強者たる我々に、何故魔族の象徴たる角を隠す必要があるのだ?魔王様に逆らう小賢しき人間ごとき、皆消し炭にしてしまえば良いだろう」


「鎧など強靭なる肉体の前には紙屑に同じ!!!そのようなこと気にせずとも、さきに挽き肉にすれば何の問題もない。」


……………らしい。

本来の魔族をまさに体現したご婦人で、魔王様至上主義、今をときめく??残虐な虐殺系女子だ。

肉食系女子なんてイチコロだ。

私の今世でのSっ気も全く反応しない。

命はおしい。






「それで、今回はどのようなご用でしょう?」

今回は番人としてではなく、副業の薬師として呼ばれていた。指定されたのは魔王城内にある、騎士団の詰所。

隣には騎士達の訓練所も併設されている為、時折騎士達の訓練による金属同士が触れる音や掛け声が聞こえてくる。

番人である私は、騎士団には割りと頻繁に訪れる。

前世では、同じだったが魔王嶺では騎士団と警備団は全くの別物として扱われる。

それは、騎士団が完全攻撃特化型で警備団は守護特化型であるからだろう。

要人警護となると両方必要となるのだが、戦では役割を攻撃と守護に分けられて魔王嶺を守る。

しかし、いくら分けられているとはいえ連携の必要な部門であるのは確かであり、よく情報交換の為、お互いが行き来するのだ。




今日のロゼグシュタさんは、黒と紫を基調としたドレスであるらしい。前髪も上げてちょっぴりセクシーだ。

服装からも分かるように、派手好きなロゼグシュタさんの騎士団長室は、ロココ調にアレンジされて貴族の部屋みたいになっている。


「ちっ魔力増強剤を30ほど購入したい。」


戦闘以外では、大体不機嫌そうに見える(だけ)ロゼグシュタだが、今日は本当にご機嫌が悪いらしい。

しかし、短い付き合いでは無いヴィオレには不機嫌の理由に大体見当がついた。

毎年、この時期には新兵の募集がかかり、騎士団への入隊希望者が殺到する。

そして、そこから見込みの有りそうな者を選抜し騎士へと採用する。ここまでには、ロゼグシュタの不機嫌になるような事はない。が、ここからが問題なのだ。


言わば、騎士見習いである

新兵達には入隊そうそう地獄が待っている。

騎士団長ロゼグシュタによる直々の扱きがあるのだ。

そこで大体の新兵達は力尽きるが、ロゼグシュタはそれが気に入らない。

彼女の言い分としては、

それくらいでへばってどうする!!

だが、騎士達でさえきつい扱きを入隊したての新兵にこなせるわけもなく、魔力が枯渇して、あるいは肉体の損傷で倒れてしまう。


肉体的な損傷も体内の魔力を消費して回復する魔族は回復薬を飲むより魔力を補充する方が手っ取り早い。

そこで登場するのが魔力増強剤だ。

これを飲まされると魔力が回復、するだけでなく増強し、また訓練という地獄のループが始まる。

この扱きに耐えたものは大概、筋肉の国の人とも言うべき姿で脳ミソまで筋肉になって帰ってくると専らの噂だ。

未だ、ロゼグシュタさんの眉間に寄った皺に、苦笑をもらし、どうしたものかと頬を掻いた。


私は、ロゼグシュタさんの訓練にケチを付けるような自殺行為、とてもじゃないが出来ないので、私には何も出来ないがせめて、頑張ってる騎士さん達にサービスしておくことにしよう。



「ご苦労様です!サービスにもう一本付けておきます。おだいはいつもの額で結構ですよ」



「おぉ!良いのか!?これは助かる。悪魔小僧の予算案のせいで、騎士団はそんなに潤沢とは言えんからなぁ。これで一回は多く訓練が出来るな!」


………………………………わぁお。善意のつもりが地獄への切符を増やしただけだったようだ。

ごめんねー

まだ見ぬ新兵さんに心の中で手を合わせておく。


ホクホク顔で代金を用意するロゼグシュタさんは、何か思い出したのかポンと手を打った。


「そういえば。ガルマンお祖父様が、最近ヴィオレが顔を見せないと嘆いておられたぞ?お祖父様は貴様の事を気に入っておるのだ、毎日とは言わないが、様子を見て差し上げろ」


言われてみれば、最近はうちも新人教育のせいで忙しく、ガルマン爺あっていない。


「確かに最近は都合が合わなくて会えておりませんでしたね。帰りに寄ってみることにしましょう」


「うむ、それがよい。」


ロゼグシュタさんは、竜種最強と言われたガルマン爺を尊敬しており、かなりのお祖父ちゃん子だったりする。

ガルマンお祖父様が喜ぶ、と嬉しそうに言うロゼグシュタさんは満足気に頷いている。

ロゼグシュタさんは、私にとってお姉さんのような存在で、普段は意識している女性的な口調も崩れ気味になってしまうので、仕事以外にも敬語を心がけている。

普段の私を知る者が見ると、大体が驚くか呆れた顔をするのだが、案外ロゼグシュタさんの側は居心地が良いので気に入っている。


今度、ロゼグシュタさんとガルマン爺を誘ってお茶会でもしようかな~


暫く雑談した後別れを告げ、そんな事を考えつつ、ガルマン爺の邸宅に向かう。


私を見つけて、あわてて騎士の礼をする騎士達に手を降って、まだ他の公爵など高位の人物を見馴れない無いのだろう、呆然と此方を見る新兵達には…………手を合わせておこう。



この世界に手を合わせる習慣などあるはずもないので、新兵達は意味が分からない。

まさか!公爵様に変な魔法をかけられたのでは!?

と怯えて涙目の新兵達に、ロゼグシュタの訓練再開の号令が響くのはもうすぐだ。









大分更新に時間がかかってしまい、読んで下さってる方々には本当申し訳ない!Σ(ノд<)

前の2話にいたっては、ちょこちょこ内容を編集しているので、ん?と思ったら読み返して貰えるとありがたいです。

ニコラスはぶっつけ本番!下書きすらしない穴だらけの執筆方法をとっているので矛盾直しが大変過ぎる(笑)


なんか、なんか、ごめんなさい!

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