包みこまれる恋心
リア充なんか喰われてしまえ。
今日はバレンタインだ。
女の子が好きな人に想いを告げる日だ。
男は自分にチョコが来ないかとそわそわしている。
俺もその中の一人だ。
俺には好きな人がいるんだが、残念ながらその子からチョコはなかった。
だが、その子から手紙が一通入っていた。
放課後、一人で家庭科室に来てください。
これは…!
俺はその日の授業が身に入らず、放課後を迎える。
家庭科室にはあの子が待っていた。
その子は俺にチョコをくれた。
一口食べる。うん、おいしい!
嬉しすぎて舞いあがって、なんだか変な気分だ。
視界がグラグラする。
なんでだろう。
おいおい、舞い上がりすぎだろ、俺。
なんか眠いし…。
次に目を覚ました時には腕も足もなかった。
口の中が痛い。火傷みたいに痛い。
喋ろうにも喋れない。なんでだ?
ある筈の物がない。
俺のべろがない。
俺の好きな子は俺の身体で何か作っている。
そして出来あがったそれに俺の血をかけて食べている。
さすが私の大好きな人。
とってもおいしい。
その笑顔はとても可愛くて、とても恐ろしい。
次はどこを喰われるんだろう。
頬?それとも胸?はたまた臓物か?
なんにせよ、喰われる事実は変わらない。
とんだバレンタインだ。
包容力のある女の子が良かったけど。
まさか、喰われて体の中に包みこまれるなんて、思ってもいなかった。
さようなら。
どうか、俺みたいになる人がいませんように。




