第87話 冒険者ギルド王都本部
屋敷の目途が立ったので一安心だ。しかし、屋敷ができ上がってしまうと、キルンの借家の時とは違いシャーリー一人でどうこうできるような広さではないわけで、人手を何とかしなくてはならない。
屋敷ができ上がる前に人を雇うわけにはいかないので、でき上がってからの雇用になる。屋敷ができ上がっても、人手が揃うまでは、ここ『ナイツオブダイヤモンド』で生活するよりほかない。
当面なにもすることも無くなったので、久々に冒険者ギルドに行って、何か仕事でも探してみようということになった。実は王都の冒険者ギルドは前を通っただけで、まだ入ったことないんだよね。
ということで、アスカと連れ立って王都の冒険者ギルドに駆けて来た。キルンの通りも石畳で舗装されていたが、王都の通りの方が舗装が良いようで凸凹が少なく走りやすい。通行量は王都の方が多いが、走る稲妻の俺たちにとっては何の障害にもならない。俺たちが高速で接近すると目を閉じるような人や、急停車する馬車の人から見ると相当な迷惑者だったかもしれない。だがあえて言おう。道を走って何が悪いと。
「マスター、人に迷惑をかけるのは良いことではありませんよ」
アスカだって嬉しそうに俺にくっ付いて駆けてるくせに。
そうこうしているうちに(通行人や往来する馬車などに多大な迷惑を掛けながら)、王都冒険者ギルドに到着した。俺は収納から例の『神撃の八角棒』をおもむろに取り出し、片手で振り回してみた。気分は孫悟空だ。風切り音が気持ちいいぞ。
「マスター、何度も言いますが、人に迷惑をかけるのは良いことではありませんよ」
すみません。また注意されてしまった。
素人と思われてなめられてはいけないと装備し始めた『神撃の八角棒』なのだが、一度熊を倒して以来ほとんど出番がない。いや一度くらいあったかな?
待たせたな、俺の愛棒、いや相棒か。何だか卑猥だな愛棒って。
王都の冒険者ギルドの開け放された扉から建物の中に入ると、キルンの冒険者ギルドと同じような造りになっていた。ただ、広さはこちらの方が広い。王都で活躍する冒険者は大抵ここで仕事を受注するのだろう。中にいる人の数は、キルンの時と比べ冒険者もギルドの職員も格段に多い。キルンは少なすぎたから比較できないか。
[たのもう!]
取り敢えず心の中で叫んでから、前に進む。今回のスタイルは、右手に八角棒を持ち、それを杖にして受付の方に歩いている。歩くたびに八角棒の先が木の床に当たるわけで、ドシン、ドシンと音を立てる。さらに、後ろに付かず離れず、渋い色のコートを着て、頭をフードで覆う女性が音もたてずに付き従っているわけだから、当然のことに周囲の注目を集めてしまう。
『なーんだ、だれも、俺に絡んでくるヤツはいないのか? フッ、つまらん。王都も大したことないな』
多数が見守る中、ドシン、ドシンと音をさせ、窓口に並ぶ人が一番短い列の後ろに並ぶ。
周りで並んでいた連中が振り返って俺の方を向くが知らん顔してよそむいてやった。ここは大物感を出そうじゃないか。
列がはけて俺達の番になった。持っていた八角棒はとりあえず収納しておく。
「ようこそ、冒険者ギルド、王都本部へ」
「Bランク冒険者のショウタです」「同じくBランク、アスカ」
揃って、ギルドカードを受付嬢に見せる。
「今日はどういったご用件でしょうか?」
「何か、Bランクの私たちにお勧めの仕事は有りませんか?」
「今北方砂漠で建設中の砦への物資輸送の護衛任務を引き受けてくれる方をギルドでは募集しています。対象はCランク以上となっていますが、現在当該方面においてモンスターレベル4の砂虫が出現するという情報もあります。モンスターレベル4のモンスターはAランクパーティー推奨ですので、正直Bランクのお二人にはお勧めではありません」
「モンスターレベル4というと他にどんなのがいるんですか?」
「グリフィン、キメラ、ヒドラ、ワイバーン、ケルベロス、アラクネ、リッチ、オーガロード、バシリスク、そんなところです」
Bランクにもなって、そんなことも知らないのかとでも言いたそうな顔で俺の方を見る受付嬢。アスカの方にも向けよ。
『オーガロードもレベル4だったか。忘れてた』
ショウタは勘違いをしていた。かつて倒したオーガの上位種はオーガメイジだったことを。何であれ、エンシャントドラゴンを瞬殺できるんだから楽勝じゃん。そう思ってまちがいはないはずだ。
『私は、砂虫自体は見たことはありませんが、同程度のモンスターとして挙げられていたモンスターは、マスター的に表現すればザコですね。マスターの杖術だけでも何とかなりそうです』
まあ、なんだ。俺の杖術はお前から見たらザコ並だろうよ。そういや、このところ八角棒の訓練してないな。アスカに何か言われる前に再開しないと。
「他には何かお勧めの仕事はありますか?」
「そうですねー。……」
俺たちが、窓口でああでもないこうでもないと話していると、後ろに並んだおっさんが、俺をにらんでいる。
分かったよ、どくよ。どきゃいいんだろ。むろん俺の方が悪いので黙って横に移動した。




