第81話 リリアナ2、確認
リリアナ殿下とお会いする日の昼過ぎ、『ナイツオブダイヤモンド』に箱馬車を呼んでもらい王宮に運んでもらった。
シャーリーについては、今日留守番させることは分かっていたので、昨日三人でいろいろな場所をめぐり楽しく過ごしたので勘弁してもらうとしよう。
アスカは、四人乗りの箱馬車なのだから俺の向かいに座ればいいものを、いつものように俺の左に座っていた。
王宮正門で名前と来意を告げると、すんなり通され、砂利道を通った先の車寄せまで行くことができた。箱馬車の御者さんには、一時間ほどで戻ってくるので待っていてほしいとお願いした。車寄せの先の駐車場で待っていてくれるそうだ。
王宮への入り口を入ると、侍女の人が待っており、リリアナ殿下の部屋に案内された。長い廊下を何回か曲がり、リリアナ殿下の部屋に通されたわけだが、普段歩くときや走るとき、顔をほとんど動かさないアスカが珍しく何かを確認するよう床を見たり、廊下の交差した場所では左右を見たりと顔を微妙に動かしている。何かを見つけたのか感じたのだろう。
「殿下。コダマ子爵閣下と、エンダー子爵閣下がお見えになりました」
「入っていただいて。あと、お茶の用意をテラスにお願い」
「かしこまりました。コダマ子爵閣下、エンダー子爵閣下どうぞ」
椅子から立ち上がったリリアナ殿下の顔色が少し悪いのか? 先日お会いした時の輝きのようなものがない。
アスカを見ると軽くうなずいた。そういうことなのだろう。
「コダマ子爵、エンダー子爵。ようこそおいでくださいました」
「わざわざ、お時間をいただきありがとうございます」
二人で頭を下げる。
挨拶をしている間に、部屋の外、庭の手前のテラスにしつらえられたテーブルと椅子が侍女たちの手で掃除されていき、テーブルには純白のクロスが張られた。
「こちらへ、いらしてください」
殿下に勧められ、部屋から外へ出入りできるよう作られた扉から、テラスに出、しつらえられた椅子に座る。
「殿下、回復されてからまだ間がありませんがお加減はいかがですか?」
「とても、調子が良いようです。これもお二人のおかげです」
話していると先日われわれを案内してくれた侍女の人がワゴンにティーセットを載せて現れ、お茶の入ったカップを配ってゆく。お茶菓子は、プチケーキで色とりどりの物が皿に盛られている。
「どうぞ、遠慮なさらず召し上がってください」
「ありがとうございます」「……」
「そういえば、お二人は冒険者もなさっておられるとか」
「はい。二人とも、Bランクの冒険者です。おもにキルンで仕事をしておりました」
「Bランクというと上から2つ目。そのお歳でBランクと言うのは、相当お早く昇進なさったのですね」
「たまたまですが、オーガなどに出くわしましたおり、運よく斃すことができBランクに昇進しました」
「他にもモンスターを斃されたのでしょうが今までで苦戦したようなことはございましたか? アスカ子爵も女性ながらもお強いのでしょう?」
「それほどでもありません。これまで苦戦した戦いで一番心に残っているのは、数カ月前のことですが、南の大森林にキルンの冒険者ギルドの依頼で、コダマ子爵と調査に参りました折、たまたま出くわしたモンスターが強敵で大層苦戦しました。そのモンスターというのは、」
ヤメイ! 殿下もアスカに話を振らないで。
なんとか、アスカの創作物語を止めさせ、俺は本題に入ることにした。
「殿下。先ほどは調子がよろしいとおっしゃいましたが、先日、私共とお会いになられた時と比べどうですか?」
「正直に申しますと、あの日を境に、少しずつですが体が以前のように重くなり始めているような気がしていたのです」
「やはりそうでしたか」
「何かございましたか?」
「申し訳ありませんが、お人払いをお願いします」
「ヨシュア」
殿下が、お茶の用意をしてくれた侍女の人にうなずくと、その人は一礼して殿下の部屋に下がって行った。
「まず、殿下は、幼少のころからお体が弱かったとうかがっていますが、どうでしょうか?」
「ええ、おっしゃるとおり、走ることさえほとんどできませんでした。それがいただいたエリクシールのおかげで、軽くなら走れるようになり大変感謝しております」
「実はエリクシールにより殿下の病などは全て癒されたはずですが、その特性上、本来の姿以上に元気になるということはないのです。つまり殿下はもともと元気な体をお持ちだった。それがなぜか実際はそうではなかったということです」
「それはどういうことですか?」
「誰かが、健康を害するような薬物を殿下に与えていたのではと考えます。一時殿下への薬物投与を見合わせていたのでしょうが、また再開したようです」
えっ! て顔して驚かれた。それは驚くよな。現に、先日初めてお会いした時にはなかった薬物の痕跡が、殿下の体から感じられる。アスカも感じているはずだ。予想通り、誰かが殿下への薬物投与を再開したのだろう。
「殿下、このポーションをお渡しします。われわれを信じて、今ここで飲んでください。『キュアポイズン、 ランク3』です。いまならキュアポイズンでも効くはずです」
収納から取り出したポーションを殿下に手渡す。
「分かりました、お二人を信じます」
ポーションを受けとった殿下はすぐに飲み干した。
「体が軽くなります。先日お二人に会った時のように軽やかで、頭もすっきりしました」
「毒物が体内にあった証拠です。これは先ほどと同じ『キュアポイズン、 ランク3』です。どこかにお隠しになってお持ちください。侍女の方々にも秘密にしてください」
ポーションを二瓶殿下に追加で手渡す。
「お加減が少しでもすぐれないと感じられましたら、すぐにそのポーションをお飲みください。今日こちらに伺うまでにある程度の目途が立ちましたし、お話している間に確信もできましたので、数日中に問題は解決すると思います」
「よろしくお願いします」




