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真・巻き込まれ召喚。 収納士って最強じゃね!?  作者: 山口遊子


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第75話 受爵


 翌朝。


 早くから目が覚め、朝食も早めに済ませ、(あつら)えてもらった礼服をアスカともども着用した。お互いに衣装(いしょう)をチェックし、一階のロビーに降りて王宮からの迎えの馬車を待っている。


「マスター、迎えが来るのは九時です。少し早いのではありませんか」


 その通り。落ち着かないからここにいるだけだよ。何事にも動じないアスカが(うらや)ましい。


「どうも俺は小心者で、王宮に行って、王さまに会うのに正直ビビってるんだ」


「マスター、王宮とは言っても、そこを守る衛士(えじ)は多くても高々千人ほどなんですよ。私とマスター二人だけでは、さすがに制圧占拠(せいあつせんきょ)するのは難しいと思いますが、殲滅(せんめつ)するだけなら造作(ぞうさ)もありません。そんな場所に行くくらいマスターにとっても簡単なことではありませんか」


 何気に怖いことを言うアスカだが、(はげ)まされてだいぶ落ち着いた。


「ありがとう。ところで、王宮で王さまに会う時に何か作法(さほう)みたいのはないのか?」


 そういえばこっちの方を忘れてた。


「あります。今着ている衣装を採寸(さいすん)してもらっているとき、儀礼(ぎれい)に詳しい人がやって来て宮中での儀礼について事細かな説明をマスターとともに受けましたから」


 その時は、意識が飛んでたから全く覚えていない。


「悪い。全く覚えてない。アスカなら何とかならないか?」


「必要な時に私が小さな声で指示を出しますから、マスターはその通りに動いてください。そうすれば何とかなると思います。最悪、殲滅(せんめつ)してしまえばいいと思えば簡単なはずです」


 まるで二人羽織(ににんばおり)りだな。宮中数千人の命のかかった二人羽織りと考えると責任重大だ。でもこれで宮中での儀礼もばっちりだ。


いやばっちりのはずだ。たぶんばっちりだ。ばっちりだといいなあ。



そうこうしているうちに、約束の時間の九時になった。


「マスター。午前九時です。ちょうどエントランスに迎えの馬車が到着したようです」


 エントランスの車寄せに二頭立てで黒塗りの箱馬車が停まった。中から黒い礼服を着たおじさんがこちらに向かってきたので立ち上がって迎える。


「ショウタ・コダマさまとアスカ・エンダーさまとお見受けします。私は王宮儀典官(ぎてんかん)を勤めますサリーシュと申します」


 初老というよりもう少し年を取ったおじさんが頭を下げて挨拶(あいさつ)してきたので、こちらもちゃんと挨拶(あいさつ)を返した。


「ショウタ・コダマです。お疲れさまです。よろしくお願いします」「アスカ・エンダーです」


「よろしくお願いします。時間も押していますので、さっそくですが馬車にお乗りください」


 馬車の扉には、楯の前で交差する二本の剣が金色で描かれている。王室の紋章(もんしょう)だか、この国の国旗かなにかなのだろう。


 馬車の中では俺とアスカが後ろ側に並んで座り、サリーシュさんが向かいに座った。扉の閉まったことを確認し、御者の人が馬に合図すると馬車が動き出した。


「お二人とも冒険者もなさっておられるとか」


「はい。私たち二人ともBランクの冒険者です」


「ほう、その若さで。もしや、エリクシールの素材、エンシャントドラゴンを(たお)されたとか?」


「まさか。Bランクではとてもそんなことできませんよ。エンシャントドラゴンを(たお)さずにエリクシールの素材を得る方法があるんです」


 エンシャントドラゴンをたおしたと言うとそれはそれで大ごとになりそうなので、口から出まかせを言ってみた。


「ほう、そうなんですか?」


「ええ、錬金術の秘術(ひじゅつ)です」


 これで追及はかわせたはずだ。だけど、この人何だか考えこんじゃったよ。


 そんな話をしているうちに、三十分ほどで馬車は王宮前に差し掛かった。王宮は堀で囲まれており、橋を渡った先の正門を抜けると、処々(ところどころ)に庭木の植えられた砂利(じゃり)敷きの広場を通り、その先に屋根の付いた車寄(くるまよ)せとその奥に王宮の出入り口があった。


 馬車が停車すると、サリーシュさんは目の前の出入り口を入ると案内する者がいるので、その者についてゆくように。と、われわれに言い残し、自分は別の方向に歩いていった。


 出入り口を入るとすぐ受付があり、サリーシュさんに言われたように案内の人がその前で待っていて、そのままその人に連れられ控室に案内された。時間までその控室で待機するそうだ。


 式の開始時刻は十時。あと二十分ほどだ。控室には茶菓子とお茶が用意されていたが、ここでお茶を飲んで尿意(にょうい)でも(もよお)してしまうと大変なことになるので、喉は乾いていたが侍女の人が勧めるお茶は断った。当然アスカは落ち着いてお茶を飲み菓子をつまんでいる。


 控室で落ち着かないまま待っていると、式の五分ほど前にやっと迎えが来た。先ほどのサリーシュさんとは違う人だ。その人の後に付いてしばらく王宮の廊下を進むと、大きくて立派な扉があり、その前まで行くと扉がさっと開かれ中に通された。


「ショウタ・コダマさまとアスカ・エンダーさま、前にお進みください」


 迎えに来た人の指示に従い前に進んで行ったのだが、ここで迎えの人は、後ろの方に下がってしまった。これからどうすんの?


 正面に座るのは国王陛下だろう。その右横は空席でその横に小柄な少女が立っていた。なぜか国王の左隣に立つサリーシュさん。左右に流れるように大勢の(えら)そうな人たち。

 国王の座る玉座の後ろの壁には、大きなタペストリーが掲げられている。そのタペストリーには真ん中に女性とその両側に二人少女。その3人の背後には巨大なカメが描かれていた。顔の造作はタペストリーなのではっきりしないが、真ん中の女性の顔はどことなく日本人顔にも見える。


 俺がそういった諸々を眺めていたらアスカが小声で解説してくれた。

『国王の隣は正妃(せいひ)の席で、今は亡くなられているため空席です。その隣が正妃の第二子、正妃の第一子は既に他界しているため王位継承権第一位のリリアナ第三王女。かわって、サリーシュさんが立つ国王の左隣は通常宰相にあたる人が立つ場所です。

 どうやら、サリーシュさんが宰相みたいです。私の記憶では、この国の宰相はリーシュという名でしたので、サリーシュさんはリーシュ宰相が何らかの理由で名前を偽っていたのでしょう』


 良くわからないがアスカはわかっているのだろう。俺たちの関わったリリアナ第三王女が元気そうでよかった。


 ここまで来たらなるようになれ。なってくれ!


『マスター、ゆっくり五メートルほど前に進んで、そこで片膝をついてください。目は、三メートル先を見て、顔を上げて前を見ないように』


 二人羽織スタート。


『このまましばらくじっとしています』


「ただいまより、ショウタ・コダマ殿とアスカ・エンダー殿への国王陛下による褒賞授与(ほうしょうじゅよ)が行われます」


 迎えに来た人が仕切ってるよ?


 ここで国王陛下のお言葉を(たま)った。


「ショウタ・コダマ及びアスカ・エンダー、そなたたちの働きにより、わが後継者たる第三王女を救いし事、誠に見事である。よって褒賞を授けると同時に両名とも子爵(ししゃく)(じょ)す」


 貴族になっちまったよ。どうすんのこれ?


『頭を下げて、指示があるまでそのままで』


「ショウタ・コダマ子爵及びアスカ・エンダー子爵は立ち上がってください」


 ビロードで出来た紫色の座布団に載せられた勲章(くんしょう)?を国王自ら俺たち二人の左胸に付けてくれた。


「リリアナのことありがとう。これからも王国のためによろしく頼む」


 盛大な拍手の元、式は終ったようだ。



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