第56話 王都へ行こう1
そんなこんなで、ギルド職員さんたちと戯れて時間をつぶし、家路についた。もちろん走ってね。もうここまで来たら、走り続けるしかないでしょう。
考えてみたら怖いよな。普段着着て爆走してる兄ちゃんの後ろを、柿染めみたいな色のローブを着てフードを被った女が付かず離れず走って追いかけてるんだもの。こんなのに初めて出会ったら、そりゃビックリすると思うよ。道の上で何かよからぬことをする人も含めて。
そういったわけで、俺たちはキルンの街の治安に幾ばくかの貢献をしてるんじゃないかな。
こういった地道な社会貢献を評価できる社会を、私は作りたい!
どっかに立候補するわけじゃないけどね。
「ただいま、シャーリー、ただいま、ヒギンスさん。あれ? アンジェラさんがいる」
「ただいま」
「お帰んなさいショウタ、アスカ」
「お帰りなさいませ、ご主人さま、お帰りなさい、アスカさん」
「お帰りなさい、ショウタさん、アスカちゃん。いまみんなでお茶してたところなの。アンジェラさんから美味しいケーキをいただいたもので。二人ともそこに座ってて。新しいお茶を用意するから」
「アンジェラさん、お土産ありがとう」「ありがとう」
「ところで、何の話をしてたんですか?」
「勇者さまが召喚されて、王都でパレードしたって話」
またその話か。その話、この街で結構話題になってんだ。そういう意味じゃ王都での勇者パレードは大成功だったんだな。
「みんなも、もう知ってるんだ。われわれは、さっき冒険者ギルドで聞いてきたばかりなのに」
「買い物の奥さま方の話題は、その話でもちきりですよ。それはもう立派で、カッコいい勇者さまだって。それに一緒にいた女賢者さまと聖女さま。どちらもお美しくて女から見てもため息が出るほどだったって。
いずれ、勇者さまは賢者さまか聖女さま、どちらかとご結婚なさるかも、とか。どちらかじゃなくてどちらともかも。でも、この国は重婚を認めてないからねー。それが原因で重婚を認めてるよその国にいっちゃったり。それとももうお手付きかも? そしたら、結婚する意味ないものね」
ヒギンスさん話してるうちに、独り言が始まっちゃたよ。その手の話が奥さん連中は結構好きだよねー。目が生き生きしてる。
でも、手を出したら結婚しなくちゃまずくない? それとも、それいいの?
「それほどだったんですか?」
「そうみたいよ。きのう王都に出て働いている私の息子から手紙をもらったの。その中に今話してたことと同じようなことが書いてあったわ。
話は変わるけど、うちの息子、何でも商売がうまくいって今度自分の店を持ったんだって。それで、私に王都に出てきて手伝ってくれないかってその手紙で言ってきたの。ここの契約ももうすぐ切れるから、そしたら王都に出るのもいいかなって」
「それは、良かったじゃないですか。別に契約のことを気にする必要ありませんよ。シャーリー、ヒギンスさんがいなくても、やっていけるだろ?」
「ヒギンスさんがいなくなるのは残念ですが、この家のことは料理も含めてちゃんとできると思います」
「実はアスカとも、王都に一度は行って見ようと話してたとこなんですよ。ヒギンスさんさえ良ければ、一緒に王都に行きませんか? 馬車を買って、それ用の馬も買おうと思っているので。多少準備に時間がかかるとは思いますが、商業ギルドの人に馬車とか頼んだら何とかなると思いますから」
「それはありがたいお話だけど、この家はどうするの? それに、御者なんか急に雇えるの?」
「この家は、もともと借家ですから、返してしまっても良いですし。御者はアスカで大丈夫と思います。できるよな、アスカ?」
「はい。問題ありません」
サスアス、信頼と実績のアスカさん。
「それじゃあ、私もショウタたちに付いて王都に行こうかな。ここしばらく行ってないし、知人にも会いたいから」
まさかのアンジェラさんことフレデリカ姉さんの参戦。
もちろん問題ないので、了承しました。これだと、御者のアスカを除いて全部で四名。馬車の中で横になって休めるくらいのちょっと大きめの馬車が必要だよな。後ろに六人ぐらい乗れる幌馬車だな。
明日、朝一で、商業ギルドへ行ってみよう。
「明日、商業ギルドで馬車と馬をできるだけ早く購入できないか聞いてきますから、ヒギンスさんは引っ越しの用意と、アンジェラさんは旅行の用意をお願いします」
それじゃあ、ということで二人とも自宅へ帰っていった。 ヒギンスさんは明日は朝から準備したいので、お休みするそうだ。




