第53話 影武者作戦『見た目が良ければいいじゃないか』
「ねえ、サヤカ? どう思う?」
「どう思うって?」
「今度の王都行きよ」
「それは、あたしたちの訓練がやっと終わったってことじゃない?」
「あなた、あのヒカルを見てそう思う?」
「うーん。わっかんないけど、ちがうのかなー。モエはどう思うの?」
「私もわかんないけど、サヤカならヒカルをこの国の王さまに会わせられる? あたしならできないよ。あんな目の逝っちゃてるやつ」
「モエちゃん、ひっどいこと言うなー。でも確かに。おっちょこちょいのヒカルが、あぶないヒカルになったよね」
「ダンジョンの罠で飛んで行っちゃったけど、コダマが勇者だったら良かったのになー」
「モエちゃん、めがねに気があったの?」
「そんなわけないでしょ。でも、あいつは真面目は真面目だったから、勇者に向いてたんじゃない?」
「そうかもね。でも、もう仕方ないじゃん。あきらめよ」
「そうだね」
「そういえば、ヒカルがおかしくなったの、めがねがどっか行っちゃった後でしょ。ヒカルがあの剣を拾ってからでもあるよね」
「そうだった気もする」
「もしかしたら、あの剣呪われてたんじゃない? 見た目も何だか怖いし。モエは聖女なんだから、お祓いでもしてやったら?」
「嫌よ。そんなのに関わりたくない」
「やっぱりそーよねー」
「ヒカルもだけどサヤカだって少し変わったんじゃない?」
「ええ、どこが?」
「だって、魔法撃つときすっごく嬉しそうじゃない」
「だって、モンスターが固まってるとこにうち込んだら、バーンて一気にふき飛ぶでしょ? あれがいいの。ボウリングでストライク!! て感じで。スカッとするのよねー」
「サヤカも十分怖いよ」
その二日後、彼らは馬車に乗りキルンは経由せず、二週間の行程で王都に向かって行った。
彼らがキルンを経由していればもう少し違った展開があったかもしれない。かも?
◇◇◇◇◇◇
ここは、キルンの冒険者ギルドの応接室。
ソファーの片側に座っているのは、先日窓口でゴネて、最後にショウタたちに追い払われたイケメン新人冒険者アトス・リーシュ。彼のパーティーの一員、美少女ミレディー・スプリング、そして同じく美少女アンヌ・ドーリッシュの三人。
彼らに対面しているのは、アデレード王国第2騎士団長トリスタン。マリア王女の指示のもと、『勇者影武者作戦』を遂行するため、キルンの冒険者ギルドに依頼し、リーシュ宰相の甥、アトス・リーシュを探し出してもらっていたのだ。
パーティーメンバーの女性二人が同席しているのは、あらかじめアトスのパーティーには二人の美しい女性が在籍しているとの情報を得ていたトリスタンが、もしもこの女性たちが、賢者と聖女の影武者が務まりそうな人物ならばと、密かに期待して一緒に面会してくれるようアトスに頼んだためである。
比較対象がアレだったためかもしれないが、会ってみて、この二人なら十分賢者と聖女の影武者が務まると確信した。
「そういったわけですので、ぜひこの任務を受けていただきたいのです。マリア王女殿下のたってのお願いですのでよろしくお願いします」
そう言って、頭を下げるトリスタン騎士団長。
「ミレディー、アンヌ。二人ともこのお話を受けてもいいかな?」
「だって、王女殿下に騎士団長さまでしょ、断れるわけないでしょ。やるしかないわ」
「やるしかないなら、いいわよ」
「そういうわけですので、謹んでこのお話お受けします」
「そう言っていただき、ありがとうございます。王女殿下もご満足されることでしょう。王都までの移動は、私どもの馬車がありますので、ご一緒しましょう。その方が安心ですから。お泊りの宿を教えていただければ明日にでもうかがいます。その足で出発しますので、それまでに旅支度を終えてください」
「泊っているのは『森の泉亭』という宿です。場所はギルドで聞いていただければすぐにわかると思います」
「『森の泉亭』でしたら存じてますから大丈夫です。それでは、明日十時ごろうかがいます。それとこれは支度金ということでお受け取り下さい」
結構な重さの小袋を手渡され、さらに恐縮する三人だった。
こうして、マリア王女の影武者作戦『見た目が良ければいいじゃないか』が順調に推移していくのだった。




