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真・巻き込まれ召喚。 収納士って最強じゃね!?  作者: 山口遊子


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第471話 戴冠式1、出発


 屋敷のみんながそれぞれの日々の生活を送っているうちに、秋が過ぎて、冬になろうとしていた。その間、ハンナ・ベルガーさんの姉のアデラさんは何とか、騎士団からの委託研究を終えたようで、無事?に王立セントラル大学を退職した。その後、妹のハンナさんのうちに引っ越して、ハンナさんの魔法陣製作の仕事を手伝いながら、姉妹でうちに通ってマーサの授業を受けている。


 孤児奴隷の六人は午前中は受験勉強、午後からはさらに進んだ、代数を中心とした数学。簡単な運動力学などを学んでいるそうだ。


 温水ボイラーによる温水の循環もテストしたところ順調のようで、温室にはすでに温水を回している。まだ、屋敷内はそんなに寒くはないので、今のところ温室だけしか温めていない。


 温水ボイラーの制御部分の改造については、アデラさんとベルガーさんに新しく何種類かの魔法陣を作ってもらったようだ。代金を払おうとしたが、食事代で先払いしてもらっていると言われてしまった。人数が今程度多くなると、一人や二人増えようがそこまで大変ではないはずなので、そういったところは気にしないでもらいたい。





「アスカ、明日はリリアナ殿下をお連れしてパルゴールに向かう日だけど、こっちの準備も順調に終わってよかったな」


「殿下のお付きの方が三名。いずれも侍女の方ですので護衛等は私たちに任されています」


「最初からそのつもりでいたから逆に守らなければいけない人数は少ない方がありがたいんじゃないか?」


「パルゴール内には、西隣のメリナから資金供給を受けた反政府、反アデレート組織なるものがあるようですので、戴冠式に招かれたアデレートの要人に対するテロや暗殺の可能性もあります。マスターが最優先警護対象なのはもちろんですが、マスターの次の警護対象はリリアナ殿下、以下アデレートから陸路赴いた要人ということで対応します」


「俺よりリリアナ殿下を優先してもらいたいが、もうそれでいいよ。アスカに余裕がもしあるようなら、リリアナ殿下の次の優先順位はアリシアさんにしてもらおうか」


「了解しました。テロや暗殺を仕掛けてきた相手への対応は、可能なら捕縛、できないようなら殺傷ということでよろしいですね」


「そうだな。そこは、『無傷で捕らえろ』などといって、アスカの動きを鈍《にぶ》らすつもりはないから安心してくれ。大事なものの優先順位ぐらい俺にもわかるからな」


「はい」



 作戦会議ではないが一応の確認をアスカとしておいた。


 今回の、パルゴール行きに先立って、アデレートからパルゴールに届けたい物資などがあれば、全て運ぶと俺の方から申し出ていたところ、急いで物資が、商業ギルドの倉庫にかき集められた。内容的には先方で不足している嗜好品が中心だそうで、結局お酒だった。昨日までに集まった物を収納し終わっている。


『スカイ・レイ』の方は数日前から南の草原《くさはら》に出して、整備・清掃の傍《かたわ》ら、トレイなどを載せることのできる小さなテーブルをアスカに作ってもらい座席の通路側に設置している。


 飲み物や軽食を置いておくテーブルだが、食事をするときには正面に移動させ、食事が終われば、もとの位置に戻しておく。


 テーブルの天盤には、トレイなどがズレないよう窪みも作っている。これで艇内での飲食が少しは楽になると思う。本当は座席の正面にテーブルを置きたかったが、前の座席との関係で座席の横に設置することになった。


 テーブル据え付けと並行して内部の清掃を行っている。これまでも、勉強の無い日に、何回か六人の子どもたちを『スカイ・レイ』に乗せてやっているが、作業のため南の草原《くさはら》に出しておいたら、時間が空《あ》いているときに子どもたちがやって来て、ソフィアに任せていた掃除を手伝っていた。



 飛行中の飲み物や食事なども往復分ゴーメイさんたちに作ってもらって、すでに俺の収納の中に温かいまま収まっているし、殿下はじめ王宮の侍女の人たち用の毛布なども新しくして準備万端整った。


 式で着る服は、俺とアスカが子爵になった時の衣装が厚手だったのでそれを使うことにした。ハウゼンさんは新しく作れと言っていたが、そんなに着ていないのに次の服を作ることにすこし抵抗があったため、今回は新しくはしなかった。市中にお金を廻らせるという意味では、倹約は間違いなのだろうが、やはり生まれ育った環境でどうしてももったいない精神は出てきてしまうようだ。その代り、六人の子どもたちには、今度の正月用に晴れ着的なものを作るように、屋敷に仕立て屋さんを呼んで採寸している。



 今回の遠出《とおで》が終われば、『スカイ・レイ』を最新式に改修することになっている。本当は、今回のパルゴール行きの前に実施したかったが、ボルツさんの工房のスケジュールの関係で間に合わなかった。魔導加速器の出力がボルツンシリーズと比べ、一世代前の物を『スカイ・レイ』では積んでいるため、ここは、あれ以上の魔導加速器を積んでやりたいということで、ベルガー姉妹に協力を要請しており、新魔導加速器は現在ベルガーさんがいつも使っている魔道具工房で製作中だそうだ。待ち遠しいぞ。


 アスカも一週間ほど不在になるので、六人の午前中の面倒はマーサに見てもらうことになっている。そういったこともあるので、お土産は忘れず買ってこなくてはいけない。



 翌朝八時、軽く朝食を済ませた後、屋敷のみんなの見送りを受けて、南の草原から『スカイ・レイ』は発進した。行き先は、王宮横の第3騎士団の訓練場だ。あそこは以前アスカが押しかけ教官をしたところなので俺も覚えている。


 『スカイ・レイ』は飛び上がったと思ったらすぐに降下を開始して、無事第3騎士団の訓練場に着陸した。


 既に訓練場で『スカイ・レイ』の到着を待っていたリリアナ殿下はじめ四名を三段しかないタラップを降ろして迎えた。見送りには、数十名の人が集まっていたが、マリア殿下とリーシュ宰相しか俺には判別できなかった。


「殿下をよろしく頼む」


「お任せください」


 簡単に上司のリーシュ宰相と言葉を交わし、すぐに四人を『スカイ・レイ』に招き入れて座席に座ってもらい、間を置かず『スカイ・レイ』はパルゴール帝国、帝都ハムネア目指して発進した。むろん、四人の荷物などは俺が収納している。


「『スカイ・レイ』発進!」


「『スカイ・レイ』発進します」



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