第468話 冒険者学校二期生卒業
騒がしいお泊り会も無事に終わって、屋敷の中も少し静かになった。
来週には冒険者学校の卒業前の実習旅行がある。すでに冒険者ギルドでは、三期生四十名の選定は終わったそうだ。防具屋の方もご新規四十名の防具一式の受注ということで材料などを揃えて待っているらしい。食材などの購入についても、ヒギンスさんを通じて手配は終わっているので、こちらの方も受け入れ態勢は整っている。もちろんアスカは既にメイスを大量に製作して冒険者学校の備品室に収めており、当分メイスの製作はしなくていいようだ。
今回の二期生についてはあまり訓練状況を見ていなかったが、ペラに言わせると、一期生と同等だそうだ。頼もしい限りである。三期生もその調子で鍛えてもらいたい。
スケジュール的に実習旅行の五日間は、ちょうど王宮への出仕の日に重ならなかったので結局王都とヤシマ間の送り迎えだけでなく、アスカともども実習旅行に同行することにした。
今の展望車で二十数名なら問題なく乗れるが、次回は四十五名程度となる。展望車自体はそんなに大きな車両ではないので、大きな荷物を持った四十人では狭くなるだろう。ヤシマ線はまだ貨物専用線なので、大抵のことに対応できる俺とアスカ以外は、旅客運送には使用できない。信号などの整備が進めば旅客列車の運行も視野に入ってくるが、当面は無理だ。
次回は三カ月後なので、客車を一両増やす方向で対応する方がいいだろう。アスカに頼めば、客車なら数時間で製作できるだろうからそうしよう。
待てよ。生徒を運ぶという意味では車両を増やすだけで済むが、実習という意味で、同じ場所での四十人の実戦は厳しいような気がする。そのうちペラを交えて相談する必要があるな。
今日と四日後の展望車の運行については商業ギルドを通して鉄道の方には伝えてある。線路は、セントラル南駅とここトンネル東口の間ですでに敷設が終わっているので、今日の待ち合わせは、トンネル東口だ。
待っていたら、カンテラを照らしたペラを先頭にトンネル内を助手の四人と生徒たち二十名が下りてきた。柵をいったん収納して道を空けてやり、レールの上で発車準備完了した展望車に乗せてやった。
すぐに列車は出発して、セントラル南口に向かう。支線から本線へポイントで繋がっているため、ポイントを切り替える必要があるが、アスカが機関車から髪の毛でポイント操作できるので停車しなくても大丈夫だ。
南駅の手前で先に行った貨物列車との時間調整をしばらくした後、ヤシマに向けて出発。
俺は一番前の席で前方を見ながら到着までペラと打合せのようなことをして時間をつぶした。
ヤシマ駅の手前で全員降車して、ペラの号令の下、二列縦隊で整然とした足取りでダンジョン入り口に向かっていく。
展望車と機関車を収納し、俺とアスカは最後尾を歩いて彼らについていった。
ダンジョン内での生徒たちの動きはキビキビして実に頼もしい。
一期生との違いは、10層、20層でのボス戦を六時間の間を空けて二回行うというところだ。一期生の時は、三チーム十二名全員でかかったのだが、二期生では、ボス戦だけ十名一チームを二組作って対応するようだ。その際元の四名一チームは考慮していないとのことだった。将来にわたって今のチームで冒険者を続けることはないだろうから、慣れないチームでの連携も必要となるのでいい訓練になるとは思うが、何分実戦なので、生徒たちが大ケガなどしないようペラと助手の四人はサポートしてやる必要がある。
生徒たちは全く危なげなく、出会うモンスターを斃していき、階層を一層一層無理なく下っていく。
「ペラの言った通り二期生も一期生に比べて全くそん色がないな。よくここまで鍛えたな」
「助手の四人が頑張ってくれたおかげです」
ペラは相手を持ち上げて謙遜までできるのか。大したものだ
結局、ボス戦を十人ずつの二組で、10層のゴブリンロード、20層のオーガロードを各組一匹ずつ斃してしまった。斃し方も一期生同様情け容赦もなく、寄ってたかってのタコ殴りで仕留めてしまった。まあ、それはそれでいいんじゃないか。
今回も『オーガロード』を十名ずつで二周して計二体斃してしまったわけだが、前回の冒険者学校一期生の実績があったため、俺が口添えするまでもなく生徒たちによる『オーガロード』討伐があっさり認められて、めでたく全員Bランクに昇進した。
Gランクの木札のギルドカードから、銀色のギルドカードを首に下げてうれしそうにしていた二十名の生徒達だが、ペラの号令一下、気を引き締めて整然と来た時同様の二列縦隊でヤシマ駅に向かって行進していった。
生徒たちのその行進を道傍で見ていた先輩冒険者たちが眩しそうに銀色のカードを首から下げた生徒たちを見ていた。
そのあと、ヤシマ駅の少し先で展望車に乗り込み、セントラル南駅を通過して、一時間少しでトンネル東口に帰ってきた。展望車に乗り込んで座席に座った生徒たちの顔を見ると、にこやかにしているのだが、どこか余裕のある顔つきになったような気がする。
生徒たちはトンネルの坂道を上って冒険者学校に二列縦隊を崩さず行進して帰って行く。学校に戻れば今日は宴会の予定なのだが、最後まで気を緩めない生徒たちの仕上がりに、大いに満足した。
俺たちも宴会に顔を出すので、生徒たちの後に続いてトンネルの坂道を登りながら、
「アスカ、ペラがいてくれて良かったな」
「そうですね。私ではここまで付き切りで生徒たちの指導はできません。これもマスターの運の強さが引き寄せたものなのでしょう」
「そうかもしれないな。最初、ペラの部品がダンジョンから出て来た時には驚いたがこのためだったんだな、とか思うよ」
「マスターは、この世界に好かれていますから、本当にそうなのかもしれませんね」
冒険者学校での卒業旅行を兼ねた実習旅行の打ち上げの宴会を終えた翌日。
第二期生の卒業式だ。
綺麗に整列した生徒たち一人一人に、ペラが一言かけて卒業式は簡単に終わった。生徒たちは、そのあと自室をきれいに片づけて、荷物を纏めてセントラルに戻っていく。入学時は冒険者ギルドから馬車を出してもらったが、帰りも馬車を出してもらえることになった。冒険者ギルドでもうちの生徒たちにかなり期待しているのだろう。
今回卒業した二十名のうち何人が王都に残るのかは聞いていないが、王都のBランクの冒険者数はかなり増加するだろう。Bランクに昇進したとはいえ、経験不足は否めないが、ダンジョンでのモンスター対応なら問題ないだろう。
翌々日には三期生の入学式だ。




