第220話 ドール
アスカがドールを組み立てたのだが、ドールは横たわったままだ。
「動かないな」
「動力炉が稼働していません」
「そもそも、こいつの動力源は何なんだ?」
「おそらく、mk9まで進化しているということは、次元位置エネルギー転換動力炉かと思います」
「次元位置エネルギー転換動力炉?」
「次元の歪みを利用できる形のエネルギーに変換する装置です。要は、わたしと同じ理屈で動いているということです。確証はありませんが、可能性はありますので、再起動可能かショックを与えてみます」
「壊れないかな?」
「壊れる可能性はありますが、動かなければ同じことですので、試してみましょう」
「そうだな。それじゃあ、やっちゃってくれ」
「マスター、少し危険ですから、一応部屋から出ていてもらえますか。宝物庫の中にでもいていただければ安全です。あと、私の服もお願いします」
そういって、マッパになったアスカから服を受け取った俺は、言われた通り、宝物庫の中に引っ込んだ。すこししてコアルームから、
「マスター、それでは開始します」
とアスカの声が響いてきて、すぐに電気溶接の閃光を何十倍にもしたような青白い光があたりを覆った。それと同時に、
ドッガーーン! まさに雷の落ちる音がコアルームから響いてきた。
「マスター、成功しました」
一度でうまくいったらしいが、コアルームに戻って様子を見たところまだドールが動く気配はない。あずかっていた服をアスカに返し、
「アスカ、まだ動いていないようだが?」
「いえ、ドールの動力炉の起動には成功しましたから、現在内部でシステムチェックなどを行っているものと思います」
俺も、アスカの隣にしゃがんで、ドールを観察していると、
銀色の体の上半身がいきなり起き上がった。
「うおおお。びっくりした」
ドールのノッペラボウの頭の部分から言葉のようなものが流れてきたが何を言っているのか俺にははまるで分らない。
そのドールの頭に向かって、アスカが両手をのばして、手のひらを広げて左右からそのドールの頭部を押し包んだ。しばらくして、
「マスター、ドールへの言語のインストールを終えました。マスターの現代用語の知識も付け加えていますので会話に支障はないはずです」
今さらだが、アスカは何でもできるな。それでは、さっそく、
「ドール、おまえの名前は?」
「私の名前は、……ありません。製造IDは、ドールmk9-0012です」
「番号で呼ぶのはいやだから名前が欲しいな。アスカ何かいい名前はないかな?」
「それは、マスターにお任せします」
「そうか? ウーマの時や、シローの時みたいに俺がつけた名前に文句言うなよな」
「そんな覚えはありません。まさか、このドールの名まえをドールだからと言ってドルドルとか付けないですよね?」
「えっ! どうしてわかった? これが以心伝心なのか!」
「マスターの名づけは、いつもそうですから」
「それじゃあ、どうする? このドールは男なのか女なのかによって名前が変わるじゃないか?」
「通常、ドールには愛称として女性の名前が与えられていましたから、女性名の方が似合うと思います」
「そうか、それじゃあ、……、おまえの名前は、ペラだ」
「マスター、ペラに何か意味はあるんですか?」
「ノッペラボウのペラだけど何か?」
「……」
「それじゃあ、ペラ、いいな」
アスカさん、今さら名前は変えられないんだから、俺の顔をそんなに見るなよ。
「はい、私の名前はペラです。マスター」
ほう、ペラは俺のことはちゃんとマスターと認識しているらしい。アスカが頭の中もいじったんだろうからあたりまえかもしれないが、アスカ以外にもそう呼んでもらえると、ちょっと偉くなった気がするな。
「ところで、アスカ。ペラだけど、このノッペラボウは何とかならないか?」
「戦闘特化型のようですのでそのような変形は自力ではできないようです。私が適当にアレンジしてしまいましょうか?」
「アスカ、そんな整形手術みたいなことができるのか?」
「ペラの材質は簡単に加工可能ですので問題ありません」
「女の子で丸坊主はないから髪の毛もつけてやってくれよ」
「分かりました。少し時間がかかりますから、マスターはそこらへんで椅子でも出して休憩していてください」
「それじゃあアスカ頼んだ」
収納庫の中にアスカが以前作った芸術品の椅子が有ったのでそれを取り出して、アスカの整形手術の施術を眺めることにした。
最初に、アスカがペラのどこをどういじったのかは分からないが、ペラの銀色のいかにも金属製であることを主張していた表面の色合いが、一瞬のうちにやや白めの肌色に変わった。これだけでも、だいぶ人形臭さが薄らいだ。
アスカの施す整形手術は切った張ったといういう訳でないようで、ペラの顔の部分を淡々と押したり伸ばしたりしているうちに目鼻立ちがはっきりしてきた。目玉自体は頭の中に隠れていたらしく、それを顔面に出したうえ、何か微妙な作業にそれなりの時間をとって最後にまぶたをくっつけたりして、その開閉を確認していた。
見ていると、ドールの表面は単純な金属という訳でもなさそうで、軽くしわができたりすぐに戻ったりと、皮膚に近い性質も持つらしい。確かにアスカの手なども体温はないようだが、思った以上に柔らかいので、俺の想像を超えるテクノロジーの結晶ででき上がった体表なのだろう。
思っていたほどは時間もかからず、だんだんと人らしい顔かたちができてきた。
「だいたい、顔の造作はこんなものですがいかがでしょう?」
まだ髪の毛はないので、坊主頭なのだが、見た感じは、幼い感じの美人さん。どこかで見たような気がするが思い出せない。
「それでは、体の細部を作っていきます。マスター、胸の大きさのお好みはありますか?」
いきなりそういうのを聞かれても困る。
「Cでお願いします。あとはアスカに任せるから適当にやっててくれ」
「やはりそうでしたか。それではもう一段階アップしておきます」
その後、アスカがペラの両脚を開いて股間の辺りの作業を始めたので、一応明後日の方を向きながらぼうっと考え事をした。
だんじて、盗み見などはしていない。




