第173話 穀物問屋、パンプキン商会2
ハリーさん連れられ、倉庫に向かった。店の裏口を出るとかなり広い裏庭に倉庫があり、その中に入ると、魔道具の照明で明るくなった先に、米俵そのものが積み上げられていた。
「これ一つが、50キロになります。こちらの16個が1号米、そちらの10個がモチゴメになります」
「それじゃあ、ここで収納しますね」
そう言って、コメとモチゴメの俵を一気に収納して見せた。
「やはり、ショウタさんはアデレート王国で噂の収納魔法の使える冒険者の方だったんですね」
「まあ、一応」。詳しく言っても仕方ないので、いつものようにあいまいに答えておいた。またまた、ラッティーが目をむいて俺を見ている。すごいだろ。この次は目をむくんじゃなくて尊敬の目で俺を見てくれよ。
「あれ、そこの樽の中に入っているのはアズキじゃないですか?」
「はい、よくお分かりですね。これを煮て、砂糖を加えてアンコを作るのですよ。ご存じでしたか?」
「はい、アズキも探していたんですが、その樽ごと譲っていただけませんか?」
「そうでしたか、これは去年の今頃仕入れたものですので、差し上げますからどうぞお持ちください。少し、煮込む時間が長くなりますが、傷んではいませんので大丈夫ですよ」
「そうですか、ありがとうございます。それではお言葉に甘えて」
やったー! アズキまで手に入ってしまった。これは、お礼を何かしないといけないな。何か収納庫の中に適当なものはなかったかな?
商人さんにとってアイテムバッグは重宝するアイテムだろうが、あいにくそれ系統は俺の収納庫の中にはないようだ。
これなんかどうだろう? ウサギの足の形のアイテムだ。爆運の俺から見たらなんてことはないアイテムだが、商人のハリーさんにはいいんじゃないか?
一応鑑定してみるか。
『鑑定!』
「黄金ウサギの足」
黄金ウサギの足を乾燥させて、アクセサリーとしたもの。持ち主の金運が若干だが上がる。肩こりに効く。
最後に微妙にうれしい一言がついていた。
アズキを樽ごと収納し、
「お礼と言ってはなんですが、これを受け取ってください。金運が少し上がる効能と、なぜだか肩こりに効くらしいので、できれば、いつもポケット辺りにでも入れておいてください」
「そうですか。ありがとうございます。大事にさせていただきます。Aランク冒険者のショウタさんと、アスカさんにいただいたということで、家宝にさせていただきます」
「しまい込まずに、身につけておかないとご利益がないようなので、ちゃんと身に着けてくださいね」
「承知しました。さっそくですが、ポケットの中に入れさせていただきます」
『黄金ウサギの足』を上着のポケットにしまったハリーさんが、急に首を左右に振って肩を上げたり下げたりし始めた。
「ショウタさん、びっくりしました。肩のこりがスッと引いていきました。これはすごい。アズキなんかでいただいてよかったのでしょうか?」
そこまで、ニコニコ嬉しそうにされると逆にこっちがかしこまっちゃうな。金運が上がってせいぜい儲けてくれればいいな。
「気にしないでください。それでは失礼します」
「店先までご一緒しましょう」
「それでは、ありがとうございました」「ありがとう」「ありがとう」
ちゃんと、ラッティーが『ありがとう』って言ったよ。アスカでさえ適当に流すことが多い挨拶をちゃんとしてくれたのには驚いた。
「それじゃあ、目的も達成したから、屋敷に戻るか」
「はい、マスター」
「そうか、もう帰るのか。それじゃあな」
「ラッティー、おまえなにいってるんだ? おまえも一緒だよ。帰るところが今までなかったんだろ。今日からおまえの帰るところは俺たちと一緒だ。いいだろ?」
「ほんとに、俺、わたしを連れて行ってくれるの?」
「うそをついてどうする」
「ラッティー、われわれがおまえを商店街で見かけた時からこのことは決まっていたんだ。諦めろ」
ラッティーの目が少しうるんでいる。
アスカの術中にはまってしまったわけだが、アスカよくやった。
「街の外に出て、飛空艇を出そう」
「了解」
その言葉と一緒にアスカが、ラッティーをお姫さま抱っこしてしまった。
「マスター、急いで駆けていきましょう」
呆然とアスカに抱えられたままのラッティーを無視して、走り始めた俺たち。
吹き抜ける風は季節柄冷たいが、非常に気持ちがいい。通りを行く人には迷惑だろうが、大目に見てくれ。今回の買い出しはおまけまでついて大漁だった。
到着した時着陸した街の外壁から5キロほど離れた草地まで、アスカがラッティーをお姫さま抱っこしたまま、20分ほどで草地に到着した。
アスカのお姫さま抱っこから解放されたラッティ-が、
「こんなところで、いったい、どうするんだ? どうするんですか?」
「見てれば分る。それじゃあ、『スカイ・レイ』を出すぞ」
俺が何を言っているのか分からないラッティーだが、現れた飛空艇『スカイ・レイ』を見て、かなり驚いたようで、文字通り尻餅をついてしまった。
「なんだ? これはー。 びっくりしたー」
「俺の飛空艇、『スカイ・レイ』だ、これでアデレード王国までひとっ飛びだ」
「これが、空を飛ぶ? これが乗物?」
「いいから、中に入れば分かる」
そう言って、『スカイ・レイ』の後部にあるタラップを下ろして中に入ったのだが、ラッティーがなかなか入ってこない。
「アスカ、ラッティーを連れてきてくれるか」
「はい、マスター」
すぐにアスカが、ラッティーを小脇に抱えて、『スカイ・レイ』に戻って来た。アスカから降ろされたラッティーが『スカイ・レイ』の室内をキョロキョロ眺めまわしている。
「ラッティー。俺たちはあそこの操縦席に座るから、おまえは俺たちのすぐ後ろのそこの席に座ってろ。舌をかんだり転んだりすると危ないから俺がいいと言うまで立ち歩くなよ」
「……」
「それじゃあ、アスカ。『スカイ・レイ』 発進!」
「『スカイ・レイ』 発進します」
こうして俺たちは、空路、アデレード王国、王都セントラルのわが屋敷を目指した。




