第164話 お米購入編、ブレゾへ
「……というわけだ。みんなこれから、マリアをよろしく頼む」
「マリアです。よろしくお願いします」
屋敷に帰り、みんなを集めマリアを紹介したのだが、その途中でプープーおもちゃを鳴らしながらシローがやって来た。
マリアを新しいおもちゃと思ったのか、ボールのおもちゃを放って、マリアの足に背中をこすりつけしきりに臭い付けをしていた。これには、マリアも対処不能で突っ立ったままシローの臭いづけに付き合っていた。すこしマリアがかわいそうだったので、
「シロー、そろそろこっちに来い」
といったら、シャーリーの方に走って行ってそのまま抱き上げられてしまった。シローのやつ、完全にご主人さまのことをナメてる。
マリアの部屋は、ヨシュアと同室とした。これからマリアは24時間、先輩と一緒の生活が始まるわけだが、孤児奴隷のマリアにとってはその程度のことは全く気にならないということだった。
ヨシュアにマリアを任せ、アスカと俺は、商業ギルドに向かった。気持ちがはやってしまい、いつもより20%増量の走行速度で駆けてしまった。
商業ギルドの玄関ホールの受付で応対をしている三人のお姉さんのうち、いつものように真ん中のお姉さんに来意を告げたところ、わざわざギルド長のリストさんが会ってくれるということで、これもいつものように二階の応接室に通された。
リストさんが秘書のポーラさんを連れてすぐに応接室にやって来たので、お互いに挨拶したあと、コメが手に入らないものかリストさんに聞いてみた。
「ほう、コメですか。当ギルドで数年前まで扱っていたと記憶していますが、いまは扱っていないと思います。仕入れなどの資料を確認すれば、どちらから仕入れたのかわかりますのでしばらくお待ちください」
リストさんがポーラさんに何やら指示をしたようで、すぐにポーラさんが部屋から出て行った。
すぐに、重そうな台帳をかかえたポーラさんが応接室に戻って来て、その台帳をリストさんに手渡した。台帳を慣れた手つきでぱらぱらとめくるリストさん。
「これですね。コメの記載がありました。4年前までこのギルドで仕入れていたようです。仕入れ先は、キルンの南の大森林を超えた先の亜人国家群、最近は亜人などと言う言葉は先方に失礼だと言うことで諸種族連合と呼んでいますが、そのなかのブレゾという国のとある商会から仕入れていたようです。
ブレゾは大森林の真ん中を縦断している街道を南下していき、街道が西に曲がったところから南に続く側道に入り、そのまま南下した場所にある城壁に囲まれた街一つとその周辺が都市国家ブレゾになります」
「わざわざありがとうございます」
「ええと、どういたしますか? ショウタさまがご希望でしたら、コメを継続的に当ギルドで仕入れても差し支えありませんが」
「それですと、最初の荷が届くのはいつくらいになりますか?」
「ブレゾまでですと、このセントラルから片道6週間から7週間かかると思いますので、三カ月から四カ月後になると思います」
「品種などの確認も必要ですから、私の方で一度、『飛空艇』でブレゾまで行き、半年分程度を直接仕入れてきます。そのあとは、リストさんにお任せして仕入れていただけますか?」
「かしこまりました。そう手配させていただきます」
リストさんたちに礼を言ってすぐに屋敷に飛んで帰り、明日からアスカともども、飛空艇で遠出をするむねをハウゼンさんに伝えておいた。
シャーリーもあす、あさって学校なので、連れてはいけない。シャーリーには夕食時にしばらく留守にすることを伝えたところ残念そうにしていたが、聞き分けのいい子なので「気を付けて行ってください」と言ってくれた。なにか、南方だから変わったお土産でも見つけてシャーリーに買ってやろう。
翌日、シャーリーがサージェントさんの箱馬車に乗って学校に行くのを見送った。
先日のワイバーンの攻撃を受けて焦げた外板部分などの取り換えとその他の整備も終わった『スカイ・レイ』はボルツさんのところで受け取って、いまは俺の収納庫に収納している。あとは、ゴーメイさんに作ってもらった軽食を収納して、片道予想6時間のブレゾまでの旅に出発した。
うちの連中が牧草地の隅で見送る中、
「『スカイ・レイ』 発進!」
「『スカイ・レイ』 発進します」
二時間ほどの飛行で前方にキルンの街並みが見えてきた。俺たちの乗る『スカイ・レイ』はそのままキルン上空を通過して大森林を南北に縦断する街道上空を南下していった。下を見ると木々の間に街道が見え隠れしている。
大森林上空を一時間ほど飛行して、そろそろ昼時になったので、アスカにサンドイッチと飲み物を手渡し、俺も適当に食事をすることにした。
さらに一時間半ほど飛行を続けると、眼下の森の中で街道がゆっくりと右方向、西に向かって曲がり始めた。よく見ると、街道から側道がまっすぐ南に向かって延びている。
あと一時間少々で、ブレゾに到着だ。大森林をそろそろ抜けたようで、木がまばらになって来た。この先の地面は草原が広がっているようだ。眼下の道にはところどころ民家の立ち並ぶ集落が見え、その周辺が刈り入れの終わった畑のようで、地面の地肌が見えている。
次に見えて来たのは緩やかな山並みで、標高は三百メートルくらいに見える。道はいったんその山並みを回り込んでまた南に向かって続いていた。
「アスカ、そろそろだと思うが、おまえの目では見えないか?」
「この高度ですと、120キロ先が見えますから、そろそろ見えてきてもいいころだと思います。少し高度を上げてみますか?」
「どうせもうすぐだからこのままでいいよ」
「了解」




