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真・巻き込まれ召喚。 収納士って最強じゃね!?  作者: 山口遊子


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第162話 ヨシュア、ポーション作り


 四人娘たちの訓練もほぼ完了した。後は、実機での訓練を繰り返すだけだ。


 飛空艇の2号艇も完成が間近に迫っている。外板の貼り付けも終了し、後はダンジョンガラス製のキャノピーの取り付けと、内装。最終調整を終えれば試験運転でそれらも合わせて、あと10日くらいで竣工(しゅんこう)する予定だ。2号機が完成したら、四人娘たちが実機での訓練を繰り返し慣熟(かんじゅく)していけば、2月には商業路線を開業できそうな気がする。


 商業路線は王都セントラルとキルンを結ぶということだけ決めてはいるが後は商業ギルドのリストさんに丸投げである。


 2号機が完成するまで四人娘たちに手がかからなくなったところで、これまで屋敷の家事をしていたヨシュアにそろそろ錬金術を教えていこうということになった。四人娘たちには、数日休暇を与えることにし、小遣(こづか)いを渡しておいた。これまでかなり頑張ってアスカのしごきに耐えてきた彼女たちだ、たまには息抜きも必要だろう。聞いたところ、四人揃って、芝居見物に行くそうだ。


 彼女たちはすでに観劇する芝居の演目(えんもく)は決めているようで、休みの初日は王都で話題の『赤き彗星(すいせい)はつらいよ-奮闘篇(ふんとうへん)-』を観ると言っていた。『赤き彗星』と呼ばれる無頼(ぶらい)の男が活躍する一連の人情(にんじょう)もので、この『-奮闘篇-』はシリーズ7作目だそうだ。


 次の日にも芝居を観るそうで、演目は『アナグマと雪崩なだれの王女さま』。ことあるごとに雪山で雪崩を起こしててはヒステリックに大笑(おおわら)いする困った王女さまとその王女さまに恋をしたアナグマの悲恋(ひれん)を描いたラブロマンスという触れ込み(ふれこみ)だ。なんだか、精神病を研究する学者さんの研究対象になりそうな話だ。



 ヨシュアに錬金術を教えるといっても、ヨシュア自身は錬金術については全くの素人なので、まずは座学、アスカの講義から始めることになった。


 アスカが言うには、薬草名や効能を覚えるのはもちろんだが、ポーションづくりでもっとも大切なことは、時間感覚だそうだ。1分を正確に感覚でつかめるよう何度もヨシュアに1分を言い当てる練習をさせていた。時間感覚がしっかりすることにより攪拌(かくはん)速度の一定化など応用が広がるんだとか。俺にはとてもできないが、ヨシュアは半日練習することで、1分をプラスマイナス1秒以内で言い当てることができるようになった。



 なじみのない錬金術の講義にはヨシュアもかなり苦労したようだが、何とかついていけているようで、そのかいあってか今日は初めてヨシュアにポーション作りの入り口であるスタミナポーションを作らせるということだった。


 スタミナポーションの材料の純水と黄躁草きそうそうはすでに用意しおり、使用する器具なども純水で洗浄済みだ。


 屋敷の錬金作業場で、俺とアスカが見守る中、ヨシュアが慣れない手つきで、黄躁草きそうそう薬研やげんで細かくすりつぶしてできた青汁を、布製の濾器こしきでゆっくり濾している。座学で習ったことはちゃんと覚えているようだ。し終わった後の濾し布をちゃんとゴミ箱に捨て、純水が適量入ったビーカーを錬金板の上に置き、濾過(ろか)した青汁をゆっくり入れながら攪拌かくはん棒で混ぜている。


「ヨシュア、攪拌速度が一定になるように注意するように」


 見ていると、最初緑色をしていたビーカーの混合液の色が徐々にうすれて、薄黄色の液ができた。そのでき上がったビーカーの中身をポーション瓶に入れ替え、ろう付け機で封をしてポーションの出来上がりだ。


「ヨシュア、完成だ。それがスタミナポーションだ。今の感覚を忘れないうちにもう一度」


「はい」


 どれどれ、出来たポーションを鑑定してみるか。


「スタミナポーション、ランク1相当 1本、 スタミナ11回復」


 売ってるのはランク1で回復量が10だった。初めてのポーションづくりで成功するとは大したものだ。当然アスカには(おと)るが、最初の試みとすればヨシュアにはかなり才能が有るんじゃないか?


 黄躁草きそうそうを1本、収納庫から取り出しヨシュアに渡す。そう、俺はいつもの通り、薬草の手渡し係だ。




……


「なかなかいいぞ、次」


……


「良くなってきてるぞ、次」


……


 その後、ヨシュアは、スパルタ教育好きのアスカさんの指示で、数十回スタミナポーションの作成を繰り返し、「スタミナポーション、ランク3相当」がコンスタントにできるようになったところで、本日の錬金術実習は終了した。


 かなり疲れたような顔をしたヨシュアに向かって、


「ヨシュア、今日はここまで。かなり良くなった。スタミナポーションはこれで卒業だ。最後に作ったスタミナポーションを自分で飲んで自分で効き目を確かめておけ」


「ありがとうございます」


 アスカが気をきかせて、ヨシュアにスタミナポーションを飲ませて疲れを取ってやるようだ。アスカが気づかいのできるようになったことは実に喜ばしいことだ。きっとアスカは俺に対しても気づかいを示してくれるだろう。


「マスターは、薬草を手渡してただけですから疲れなどありませんよね」


「はい。全然疲れていません」



 次の日は、PAポーションの作成だ。これが安定的にできるようになれば、錬金術師として食べていけるらしい。今日も今日とて俺の仕事の薬草の手渡し係は変わらない。PAポーションの材料、黄躁草、紫棘草むらさきとげぐさ青葉草あおばそうを順にヨシュアに渡していく簡単なお仕事です。


 これでも、王都では新進気鋭(しんしんきえい)の大錬金術師として名の通ったコダマ子爵閣下なんだがな。本当は、この暇な時間エリクシールを作りたかったが、アスカにタイムキープしてもらえないと俺一人ではエリクシールを作れないのでじっと薬草手渡し係に甘んじているのだ。俺は自分で言うのもなんだが、すごいことはすごいんだ。だが少しだけ中途半端(ちゅうとはんぱ)なだけだ。


 ヨシュアは3日ほど、PAポーションの作成練習を繰り返したあと、最後にアスカがOKを出した。ここまで来るのに講義と実技で1週間ほどしかたっていないが、少なくともヨシュアはこれで、立派な錬金術師で独り立ちできる技能を身に着けたわけだ。アスカ教官の指導の賜物(たまもの)だろう。



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