第144話 マスカレードイエロー
夕食にみんなが集まった食堂で新しい四人を紹介した。
食べ始める前の「いただきます」食べ終わったら「ごちそうさま」を四人に教え食べ始める。
四人が加わったことで、全部で十三人と一匹が一つ屋根の下で暮らすわけだ。特に新しい四人は孤児奴隷なので、俺がしっかり面倒見る義務がある。
四人は当たり前だがはじめての場所で緊張してたものの、ゴーメイさんの自慢の料理を食べたら、緊張を忘れたように一心に食べ始めた。
「みんな、ちょっと聞いてくれ」
ご当主さまの俺が立ち上がって演説をぶつことにした。みんな食事の手を止め注目してくれる。
「えー、新しい四人は手の甲を見てもらえば分かるように孤児奴隷だ。この家にそのことについて偏見を持つような者はいないと思う。仲良くしてやってくれ。それと、四人には今度でき上がる新しい飛空艇の操縦士になってもらおうと思っている。いきなり操縦できるものではないので、アスカを教官にして明日から訓練だ。四人とも頑張ってくれ。すでに制服の一部は用意している」
アスカが四人を可哀そうな者を見るような目で見ている。
「明日は初日だし、訓練用の機材もまだないから、飛空艇を作っているボルツ工房に行って、挨拶がてら飛空艇を見学しに行こう。そういうことなので、四人は食事が終わったら順番に風呂に入って休むように」
四人が風呂と聞いて顔を見合わせているので、
「だれか、風呂の入り方を教えてやってくれるか?」
「それでしたら、少し遅くなりますが、迎えに行きますから私が一緒にお風呂に入りましょう」
ヨシュアはさすがに人間が出来ている。
「それなら、私も一緒にお風呂に入ります」「私たちも」
シャーリーとハート姉妹も一緒に入るのか? アスカを除いた女性人全員だ。これだと狭くないか?
アスカの方を見ると、黙って食事を続けていた。アスカがあんなことさえしなければ。
「マスター、どうしました?」
どうもしないよ。
翌朝、朝食後。
シャーリーを学校に送り出し、アスカと俺は玄関前で新人四人の前に立っている。
「これが昨日言っていた、制服の一部だ。これからは訓練時にはこれを着用するように」
そういって一人ずつ黄色いシルクハットと仮面を配る。そして、俺は、自分の青いシルクハットと仮面を装着し、マスカレードブルーに変身した。
四人が固まってしまった。そうだろう。そうだろう。マスカレードブルーの正体が俺だったことに衝撃を受けたに違いない。変身ヒーローの正体を知った周りの人は、その事実に驚愕するのは当たり前だからな。
「マスター、四人は変な主人に買われたと思って固まっているんですよ」
いくらアスカでも勝手な想像で物を言わないでいただきたい。勝手な想像のことを人は妄想と呼ぶのだ。彼女たちは自分たちも変身ヒーローの一人になれると喜びに打ち震えているのだ。
「マスター、寒くもないので誰も震えてませんよ」
アスカよ、勝手なことを言っているが良い。
それみろ、四人ともうれしそうさのあまりぎこちなく帽子をかぶって仮面をつけてるじゃないか。
アスカは最後まで俺が渡そうとする自分の変身装備を受け取らなかった。
「それじゃあみんなで走るぞ!」
ゆっくり六人で街を走る。それでも一般人から見たら結構なスピードかもしれない。いつもアスカと二人で走っているときより街の人の注目を集めている気がする。後ろを走っている四人は走ることで体温が上がったようで顔が赤く火照ってきている。少しスピードを落とすか。アスカさん、何か言いたいの?
われわれの装備品であるシルクハットだが、俺の坊主頭だとすっぽり嵌って走ってもずれないのだが、四人は走っていると髪の毛で滑ってずれてしまうようだ。片手で帽子を押さえながら走るのは、走りにくそうだ。しかし、これこそがわがクラン・マスカレードへのイニシエーションなのだ。頑張ってもらうほかはない。
結局二十分ほどかけて、ボルツさんの新工房の前にたどり着いた。ゼーゼー、ハーハーする四人だが、良く俺とアスカについてこられた。走るのが得意といっただけのことはある。
諸君、おめでとう。君たちは、立派にわがクラン・マスカレードへのイニシエーションに耐えたのだ。誇ってもらってもいいぞ。
ボルツさんにわれわれの正体がばれてはいけないので、各々の変身道具はイニシエーション終了後すぐに収納に回収した。クラン・マスカレードのクランリーダー、智謀のマスカレードブルーにぬかりはない。
「マスター、そろそろこちら側の世界に戻って来てください」
はい。
「ボルツさーん。おはようございます」「おはよう」
「おはようございます」
「おはよう、ショウタさんにアスカさん。えーと、そっちの四人は?」
「新しく作っている飛空艇に乗せようと思って雇いました。孤児奴隷なんで買って来たっていうのかな?」
「そうかいな。わたしがこの工房の責任者のボルツや、みんなよろしゅうな」
「よろしくお願いします」
そろって頭を下げる四人。ぴったりそろって動くとなんか見てて気持ちいいな。
「それでさっそくなんですが、この子たちに操縦訓練をさせるために、二人用の操縦装置の実物大模型を作ってくれませんか。レバーと側だけでいいんです。後は、アスカが何とかする予定ですので」
「ようわからんけど、わかったわ。今日中にでも作るさかい、夕方にでも取りに来てな」
「あと『スカイ・レイ』の速度と高度は、アスカが計ってたじゃないですか。普通の人でも速度と高度が計れるような物が有りませんかね」
「そりゃ、もちろんあるよ。でないと普通の人が操縦でけへんもん」
「そりゃそうですよね。後はよろしくお願いします。私たちは、この子たちを連れてしばらく見学させてもらいます。いいですよね」
「かまへんけど、その子らはあんまり危なそうなところに近寄らさんようにな」
「了解です」
「それじゃあ、みんな俺に付いて来てくれ。今作っている飛空艇を上から眺めてみよう」
階段を上って工房本体を取り囲むように作られた回廊にみんなで向かう。
回廊から飛空艇を見下ろすと、まだ本体の骨組みだけで、しっぽ部分はできていないが、かなり大きい。初めて見る四人は、まさに固唾を呑んでいる。
「まだ骨組みだけだけど、四人にはあれを動かせるようになって貰うからな」
少し緊張させたかな。
「大丈夫だ、私が鍛えれば不可能も可能になる」
不可能だったらまずいだろ。もっと緊張させちゃったよ。
「アスカはああは言ってるが、動かし方をちゃんと教えてくれるから安心していいぞ。優しく教えてくれるかどうかは知らんけどな」
とうとう固まっちゃたよ。
「それじゃ、今度は外に置いてある『スカイ・レイ』を見てみよう」
そういってみんなを引率して『スカイ・レイ』のところに向かう。
「後ろが、出入り口になってるから、入ってみよう」
出入り口のタラップを降ろしてやる。
「足元、気を付けろよ」
『スカイ・レイ』の中には、六つの乗客用座席と、前方に二つ並んだ操縦席、それに各所にのぞき窓があるだけなので、引率された四人の若干テンションが下がるが、操縦席周り、特にアスカの座る操縦席の前に並んだレバーの多さに驚いたようだ。
「ここが、『スカイ・レイ』の操縦席だ。操縦席の前に、たくさんレバーが出てるが、これをアスカが一人で操って『スカイ・レイ』を操縦してるんだ。これはアスカにしかできない芸当だから、みんなにはこの操作レバーを二つに分けたものを二人で操縦してもらう。いま、ボルツさんに操縦装置の実物大の模型を作ってもらっているから、それが出来たら操縦訓練の開始だ」
「アスカが一人で操って」の下りで、アスカのドヤ顔、それを尊敬のまなざしで仰ぎ見る八つの目、ちなみに、四人の女の子たちの身長は俺より頭半分くらい低いので、百六十センチ有るかないくらいだろう。そしてアスカのドヤ顔をうざそうに見る二つの目。この俺だ。
「そう言うことだから、本格訓練は明日からになると思うけど頑張っていこう」
さすがに俺でも、エイ、エイ、オーは言いませんよ。




