表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ゆいこのトライアングルレッスンM〜ひろしのバレンタイン〜

掲載日:2026/02/22

「体験入学?」

「そ。今日の中学生クラスにオレの従兄弟が参加するんだと」

 バイト先の塾へ向かう途中、憂鬱そうにタクミが言った。

「あーもー!あいつの前で授業するとか、最悪。まるで父兄参観じゃないか」

 オレも親戚の前で「先生」をすることになれば緊張するし、気恥ずかしいだろう。タクミの気持ちはよくわかる。

  塾が近づくにつれ口数も元気もなくなっていったタクミに同情し、ポンポンと背中を叩いた。

「もしも入塾したらお前の受け持ちになるかもしれないんだろ?まぁ頑張れよ」



 塾の近くの交差点。

 ユイコが一人立っていた。

「ヒロシ、タクミ!会えてよかった~。…はい、これ!」

 手には小さな紙袋が2つ。中身はチョコだった。

「今日バレンタインでしょ?塾生の女子達より先に渡したくて待ってたんだ」

「サンキュー!おおっ、手作りじゃん!」

 ユイコのチョコのお陰で機嫌が直ったようだ。

「ありがとう、ゆいこ。…寒かっただろ?これやるから持ってろ」

 ポケットに入れていたカイロを渡した。

「あったか~い!ヒロシ、ありがとう!」

 どれくらい外で待っていたのだろう。鼻の頭を赤くしたユイコがカイロを頬にあてて幸せそうに微笑む。

「あ、そうだ!ねえねえタクミ、今日むっくんが体験入学に来るんだって?」

「…なんでお前がそれを知ってんだよ」

「カナちゃんから聞いた」

「余計なことを…」

「中学生クラスだから授業が早く終わっちゃって会えないのが残念。よろしく伝えておいてね~」

 そう言うとユイコは塾へ入っていった。

 タクミはというと、現実に引き戻され頭を抱えていた。

「まぁ…頑張れ」


 バイトが終わり外に出ると、タクミと中学生くらいの男の子がいた。

  彼がうわさの『むっくん』なのだろう。

「お疲れ。タクミ、先に帰ったんじゃなかったのか?」

「おう、ヒロシ。…いや、こいつがユイコを待つって聞かなくてさ~」

「…はじめまして、従兄弟のムサシです。ヒロシ先生、ですよね?」

「ああ。よろしく」

 礼儀正しいいい子じゃないか。

「中学生なんだから、早く帰れよ。カナが心配するだろうが。送っていくって言ってんだろ」

 タクミがここまで不機嫌なのは珍しい。

 帰宅が遅くならないよう心配しているというよりも、何か別の考えがあるような…。

 その時だった。

「……あれ?むっくん?」

 振り向くとユイコがいた。どうやら高校生クラスの授業が終わったようだ。

 嬉しそうに駆け寄ってくる。

「うわあ~久しぶり!こんな時間までどうしたの?もしかしてタクミ達と待っててくれたの?」

「べ、別に待っていたってわけじゃ…」

「元気そうで何より!ここの塾生になるのかな?そうしたらまた会えるね」

 嬉しそうに話しかけるユイコと、真っ赤になりながらぶっきらぼうに答える『むっくん』。

 その様子を見てタクミが不機嫌だったわけがわかった。早く帰そうとした理由も。

「ほら、もういいだろ。さっさと帰るぞ」

 むっくんの首に腕を回してユイコと引き離した瞬間、タクミのカバンの隙間からチョコが入った紙袋が落ちた。むっくんが拾う。

「ほら、チョコ落とすなよ。…あれ?これ、ユイコ姉ちゃんの?」

「ふふん。そうさ、ユイコがオレのために作ったチョコだよ」

「……」

 むっくんの表情が陰ったような気がした。

「あ、あのね、むっくんのは…」

 用意していなかったのだろう。慌てるユイコの背後に回り、こっそりオレの紙袋を渡した。

「!」

(これを渡してやれ)

(…ごめん)

「も、もちろん、むっくんのチョコもあるよ!はい!受け取ってくれると嬉しいな」

 むっくんの顔がほころぶ。

「あ…ありがと!ユイコねえちゃん!!」

 紙袋を片手に満面の笑みを浮かべたむっくんは、くやしそうにするタクミに連れられ帰っていった。



「ごめんね、ヒロシの分なくなっちゃって」

 帰る途中、ユイコは申し訳なさそうに何度も謝ってきた。

「いいって。オレは毎年もらっているんだから」

「でも…せっかくヒロシのために作ったのに」

 いつもの元気はどこへやら。しょんぼりとするユイコを見て、やれやれとため息をついた。

「じゃあまた作ってくれよ。ホワイトデーにお菓子を交換しよう。それでいいだろ?」

「うん!今度はヒロシ専用のチョコを作るね!」

 どんなチョコにしようかな~と張り切って歩きだすユイコに愛しさがこみ上げる。

「だから、さ」

「…なあに?」

「今日はこれだけもらっておくよ」

 振り向くユイコにキスをした。

「小説家になろうラジオ」の「ゆいこのトライアングルレッスンM」に投稿した作品です。


折角の特別企画の「むっくん回」なのに、ひろし愛が強すぎて、ひろし目線のハッピーエンドしか書けませんでした…


残念ながら不採用でしたので、供養します。

楽しんでいただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ