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第34話「初めての遠征(上)」

※本作の制作にあたり、誤字確認や構成検討の補助としてAIツールを利用しています。本文は作者が執筆しています。ご了承の上、お楽しみください。

卒業式からしばらくすぎて、僕とリーネは11歳になった。


「カナメ。私達、後2年で卒業なんだよね。」


いつも通りに掃除当番をやっているとリーネが心配そうに僕に言ってくる。


そうだよな。不安だよな。そう思いながら僕も語り掛ける。


「うん。でも大丈夫だよ。きっとなんとかなるさ。」


そう言いつつ、僕がなんとかするしかないよな。


「君たち。卒業が不安かい?僕は正直不安ではあるけど、なんとかなると思っているよ。」


話掛けてきたのは、ローレンという男の子だ。この子もディエと同じくイケメンだ。


どうして、こんなにイケメンなのに、この孤児院にいるのか不明なんだよなー。


顔は関係ないのかもしれないけど。


「うん。不安もあるけど、大丈夫だと思っているよ。」


僕は無難に答えたけど、リーネは黙っている。あんまり得意な子じゃないのかな?


「リーネももしダメだったら、僕の元に来ればいい。可愛がってあげよう。」


・・・癇に障る。そもそもお前も孤児だろ。貴族気どりか?と大人げなくそう思ってしまった。


リーネは答えず、僕の近くに来る。


「勿論、カナメ。君も面倒見てあげるよ。」


取って付けたような言い方だな。


「うん。ありがとう。もしもの時は頼るからね。」


「うん!それじゃあ、僕は買い出しがあるからね!」


そう言って、外に行ってしまった。


「元気な子だったね。」


そうリーネに言うと、あまりいい気分では無かったのだろう。


「あの子・・・好きじゃない。」


うーん。ヴァンとかディエの時もそうだけど、リーネは露骨に態度に出るんだよな。これは治したほうがいいのだろうか?


それとも、成長すればもっと社交性を身につけられるのだろうか?今はわからないな。


「でも、悪い子じゃなさそうだよ。ほら、最悪面倒を見てくれるっぽいし。」


「うーん。カナメがそういうなら。」


渋々納得って感じかな。本当に見てくれるかどうかは怪しいものだけどね。子供の事だもんね。


リーネと一緒に掃除を終わらせて、掃除道具を片付ける。


「リーネ。お外に行こうか。」


「え?・・・うん。」


ずっと孤児院の中にいても気が滅入る。たまには外に出ることも良いと思う。そう思って、リーネを連れ出して外に行く。


いつもは僕の方から手を繋ぐことが多い。でも、今回はリーネの方から手を繋いできた。珍しいなって思ってリーネの方を振り向く。

「・・・ダメ?」


ははは。可愛い奴め。


「大丈夫だよ。」


そうして、二人で外に出る。


「それじゃあ、ちょっと散歩しようか。」


「うん!」


商店街の方に二人で歩いていく。今日もにぎわっている。ローレンが買い出しに行ってるはずだから、どこかで出会うかも。


「人が沢山いるね。」


「うん。」


色々見ながら、回っていく。雑貨の露店があったので、僕達は足を止める。


二人で商品を眺めていると店員さんが話しかけてきた。


「少年。可愛い彼女連れてるな。その子のために、漢気を見せなきゃいけないんじゃないか?」


店員さんが僕を煽ってくる。でもなー。お金持ってないんだよなー。


「すみません。僕達お金持ってないんです。」


「おや?じゃあしょうがないな。でも次来るときはちゃんと何か買ってくれよー。」


「はい。でも、これとかリーネに似合うんじゃないか?」


綺麗な簪を持ってリーネに聞く。


「うん。すごい綺麗。」


「もし、お金を稼ぐことが出来たら、これリーネにプレゼントするよ。」


「え!?本当!?」


「うん。本当だよ。でも、かなり先の話になるけどね。」


「えへへー。嬉しいな。」


うんうん。リーネは笑ってるほうが可愛いよ。勿論お金は持ってないから買わずに他の露店も見ながら孤児院に帰ってくる。


「あれ?ユミル先生と・・・ウィル?」


ユミル先生とウィルが孤児院の前で話してる。ウィルがこっちに気付いて挨拶をしてくれた。


「やあ。カナメ。こんにちは。」


「こんにちは。ウィル。今日はどうしたの?」


「え?カナメ。知り合いなの?」


リーネはちょっと戸惑った感じで聞いてきた。あれ?リーネは初対面だったか?


前回の事件の時にもいたと思うけど。ショッキングな出来事だったから覚えられなかったのかもしれないな。


「うん。この人はウィル。魔道ギルドでお世話になってる人だよ。」


「私はウィルと申します。よろしく。お嬢さん。」


「リーネです。よろしくお願いします。」


ウィルは礼をする。こういう所はちゃんとエリートなんだなー。


リーネが一応自己紹介をするけど、及び腰だ。僕の時もそうだったけど、初対面の人は苦手なんだろうな。


「ウィルと話してたんですか?」


「はい。カナメ君。ちょっと依頼を受けましてね。」


ユミル先生のほうが話してくれる。


「依頼?どんな依頼なんですか?」


「それは私から説明しよう。」


ウィルが途中で挟んでくる。


「そんなに大事じゃないんだけど、教会と魔道ギルドと騎士団の合同で小型のワイバーンを駆除するために遠征するんだ。それの依頼をユミル様にお願いしようかと思っていたんだけど。」


いやいや、教会とギルドと騎士団の合同ってそれは大事じゃないか?


「ごめんなさい。私はこの孤児院を離れることはできません。頼りにしてくれるのは嬉しいですが、お断りさせてください。」


「うん。この通り振られてしまったのさ。でも、良かったよ。代わりがいたからね。」


代わり・・・?嫌な予感がする。まさかとは思うけど。


「カナメ。君、今回の遠征に参加してくれないか?」


やっぱり。そうだと思った。


「ウィルさん!!」


ユミル先生が焦ったような声でウィルを咎める。


「カナメ君は確かに魔力適正はありますけど、現時点ではまだ私の孤児院の子です。許可できません!」


「ユミル様。これはカナメにとっても良い経験になる。それに、いずれ孤児は卒業しなくちゃいけない。雛鳥はいつまでも雛鳥ではいられない。それはわかってるはずですよね。」


「・・・貴方。最初からカナメ君が目的でしたね?」


「いやいや。ユミル様が来て頂けるなら、それが一番ですよ。」


ウィルもどこ吹く風のような態度で躱す。


この腹芸もエリートならではなんだろうか?


「それで。カナメ。来てくれるかな?」


うーん。悩んでいると手をぎゅっとされた。


「カナメ・・・。」


リーネがこっちを見てくる。リーネを思うと拒否したい所だ。まだ事件があってそんなに時間が経ってない。


ここで、遠征に参加するのはなー。


「私は反対ですよ。カナメ君。まだ外に出るべきではありません。」


「ユミル様。お言葉ですけど、この孤児院を卒業した子達がどのような結末になっているか知らないわけじゃないですよね?」


ユミル先生が今まで見たことないような顔をしている。悔しそうだ。


「大切に育てるのは結構。ユミル様は何も間違えていない。でも、それだけで生きていけるほど、世界は甘くない。これは私にどう論破したって変わらない現実です。ならば、少しでも社会経験を積んでおく方がよいと私は思います。カナメにはその力がある。」


「・・・」


ユミル先生は何も言わない。この感じだと、やっぱり卒業生達はあんまり良い未来が待ってるわけでは無さそうだな。


「カナメ。私は君に参加してほしい。実践は自分の足りないものを認知する事が出来る経験だよ。急かすわけでは無いけど、いずれ君もこの孤児院を卒業する。その時に、訓練のみで生きていけるかな?」


まるで僕が騎士団か賞金稼ぎになることが確定しているような言い方だな。


でも、おそらくそうなのだろうな。この感じだと、僕の将来の職業は決まっているようなものだよな。


「さっきも言ったけど、今回は教会や騎士団、魔道ギルドの人達も同行する。一人でなんとかするわけじゃない。勿論、私もフォローするつもりだよ。」


そこまでいうなら、参加してみよう。


「わかりました。僕は参加します。」


「カナメ・・・。」


「大丈夫。何も心配いらないさ。」


「でも!」


不安そうなリーネだ。でも、たしかにウィルの言い分に一理あると思った。


「ユミル先生。リーネをお願いします。」


「はぁ・・・。カナメ君。貴方。リーネちゃんと一人にするんですか?」


ユミル先生。あんまり痛い所を突かないで欲しい。


「ユミル先生。僕は死ぬつもりはありません。ちゃんと帰ってきますよ。」


「わかりました。貴方の意思を尊重します。」


ユミル先生はウィルに向き直った。


あれ?雰囲気が変わった?空気が重いというか・・・なにこれ?息苦しい・・・?


「ウィルさん。もし、カナメ君を死なせたりしたら・・・私はあなたを怨みます。そのことはしっかり認識しておいてください。」


「ユミル様。そんなに殺気立って脅さなくても大丈夫ですよ。」


ユミル先生の迫力すごいな。そう思ったら、リーネが青い顔をしている。怖がらせてしまったようだ。


「それじゃあ、カナメ。明日の朝に迎えに来るから、よろしくね!」


そうして、ウィルは帰っていった。ウィルもギルドの中では話しやすい人だけど、結構食えない人なのかもしれない。


その後はいつも通り、リーネと一緒に過ごした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日朝起きるとリーネが僕の顔を覗き込んでいた。


「うーん。リーネ?どうしたの?」


ちょっと寝ぼけ頭で身体を起こす。どうしたんだろう?いつも僕の方が早く起きるのに。


でも、リーネは僕を凝視する。様子がおかしいな。


「リーネ。どうしたの?調子悪いの?」


反応が悪いから心配になる。


「カナメ・・・今日は本当に行っちゃうの?」


心配そうな顔をしている。僕は全て察した。


「大丈夫だよ。リーネ。絶対に帰ってくるさ。大丈夫。リーネを一人にはしない。」


そう言って安心させるために、リーネを抱きしめる。思えば、最初に魔道ギルドに行くときもこんな感じだったかも。


こうしてみるとリーネも成長したものだ。いつの間にか女の子らしくなってきた。


「ちゃんと帰ってくるからさ。」


「・・・うん。」


勿論納得していないだろうけど、一応返事してくれた。これは帰って来てからちゃんとフォローしないといけないな。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ウィルに案内されて、街の外に向かう。


到着したら、馬車が10台ぐらい用意されていた。


「そういえば、今回の遠征って遠いんですか?」


「うん。それなりにね。5日間ぐらい掛かるからね。」


「5日間!?いやいや!聞いてないですよ!」


「そりゃあ今言ったんだから、聞いてないのは当然だよ。まさか遠征が1日で終わると思っていたのかい?」


・・・完全にやられた。これは、帰ってきたときにリーネに平謝りするしかないかも。


しばらく、待つと続々集まってくる。


「ウィル殿。今日は共同作戦だ。」


「わかってますよ。リッケル様」


「うむ。その子が。」


「ええ。助っ人ですね。カナメです。とても、優秀ですよ。」


いかにも教会にいそうな服を着ている。この人はリッケルという名前なんだな。覚えないと。


「初めまして、リッケル様。カナメと申します。」


「・・・・・・うむ。リッケルだ。」


何か反応が悪いな。そう思ったら、ささやき声が聞こえる。


「黒髪・・・?」「ちょっと待て。黒髪がいるって聞いてないぞ。」


ちょいちょい聞こえる。ここでも黒髪で言われるのか。


「カナメ。気にしなくていい。」


そう言ってくれるけど、気にするなというほうが無理だ。これは、後でウィルに聞いてみよう。


さらに人が集まってくるけど、その中に見知った顔があった。


「アメリア騎士団長!お久しぶりです。」


「うん?君は・・・?ああ。あの時の少年か。元気にしていたか?」


「はい。おかげさまで。」


「魔力適正のある子を連れてくるとは聞いていたが、君だったか。」


「ええ。そうみたいです。でも、少年はやめてくださいよ。僕はカナメって名前があるんですから。」


「ああ。申し訳ない。カナメ。頼りにさせてもらうよ。」


アメリア様は本当に人間が出来てるな。それに比べて・・・。


ざわ…と空気がざわつく。


「おい。子供だぞ。しかも黒髪の。」「大丈夫なのかよ。」


この言われ様である。全くもう。


「カナメ。すまない。気を悪くしないでくれ。」


「はい。大丈夫です。」


そうしたら、緑髪の子供がこちらに歩いてきた。子供と言っても僕よりは年上だと思う。


僕も今は子供なんだけどね。


「君が今回の魔道ギルドが推薦した助っ人か!子供と聞いていたが本当に子供だな。」


そりゃ子供と聞いていたなら、子供が来るに決まっている。


「初めまして。カナメと申します。」


自己紹介すると、アメリア様が割り込んでくる。


「カナメ。この方はエルス・アルケール様だ。この街の領主の嫡男になる方だ。」


「いかにも!エルス・アルケールだ。カナメ。よろしく頼む!」


偉そうな言い方だけど、実際偉いみたいだ。アメリア様も下手に出てるから。


アルケール・・・。この街の領主か。


「よろしくお願いします。エルス様。」


「うむ。しかし、力まなくていい。私は若輩者だが、貴族だからな。平民達を守る義務がある。さらに、我は火属性の魔力適正を持っている。十分安心してくれていい。」


「はい。お願いいたします。」


・・・なんというか。ノブレスオブリージュを気取っているけど、今の所の印象はお金持ちのボンボンって感じだ。


僕としてもあの村の悲劇がある。正直好意的に見れないな。


さすがに前世での経験もあるから、あからさまな敵対心は出さないようにしないと。


なんだかんだで、30人くらい集まってきた。でもおかしいな。馬車は10台。人数は30人。


馬車多すぎじゃないか?


「ウィル。人数に対して、馬車が多すぎじゃないかな?」


「うん。今回は5日間の遠征だからね。補給も考えて、馬車を手配されてると思うよ。多分3台くらいは、食料と水。後、倒したワイバーンの素材を閉まっておく用の馬車だね。」


「なるほど・・・?でも補給なら、3台の馬車で足りるの?」


思えば、村からこの街に来た時も2日間くらいだったけど、ちゃんとご飯は出たな。


「うん。それはね。ほら、今来たよ。アレの事さ。」


騎士様達が、見た感じ宝箱みたいなものを馬車に乗せている。なんとなく予想がついた。


「ウィル。あれは?」


「あれは、ストレージボックスって魔道具でね。箱の中が異次元になっていて、ある程度のものなら収納できる箱だ。勿論無限に入るわけではないのだけどね。」


やっぱり!そんな便利なものがあるんだな!これで、兵站と輸送の問題は全部解決じゃないか!


「へー!!便利なんだね。僕も欲しいなー!」


「うん。欲しいだろうね。でもおそらく手に入らないよ。」


「どうして?」


「まずストレージボックスはかなり高価。アレ一個で1憶ルグはするよ。そんな大金用意できるかい?」


い・・・一億ルグ!?マジかよ。


「買わないにしても、ダンジョンの奥の方に出現する魔道具だからね。運と実力が無いとまず無理だよ。」


なるほど。っていうかこの世界にダンジョンなんてあるの?初めて知った。


「そんなのだから、基本王族か貴族。もしくは教会かギルド、騎士団といった組織しか持ってないさ。個人でストレージボックスを所持してる人なんていないさ。」


悔しい。いつか手に入れてみたいな。


ストレージボックスを3台の馬車に乗せるのを確認して、エルス様が声を上げて宣言する。


「これから、ワイバーンの駆除に出発する!心してかかるように!」


その宣言を聞いて、僕も馬車に乗った。


そして――


僕の初めての遠征が始まった。

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