第32話「訓練と問い」
※本作の制作にあたり、誤字確認や構成検討の補助としてAIツールを利用しています。本文は作者が執筆しています。ご了承の上、お楽しみください。
あの事件以来、僕はもう一度意識を入れなおして、魔法の訓練を真面目に行っている。
いや、今までも不真面目にやっていた覚えはない。でも、一層気持ちが込めて訓練する。
あの時の僕は実質何もできていなかった。
僕にもっと力があれば。そう思わずにいられない。
「・・・はっ!」
今は、遠くの石を加重させる。前回の魔物の襲撃で範囲外に出られたら何もできなかった。
その失敗を克服するために、遠くに石を置いて加重する練習だ。
この手の練習は子供の頃からやってたつもりだった。けど、足りなかったのかな。
今も子供だけどね。
「カナメー。」
リーネが僕を呼びに来る。あの事件以来、また僕にべったりになってしまったが、心を閉ざしてる感じはしない。
「うん?」
「少しは、孤児院の手伝いしてって周りの子が怒ってるよ。」
しまった。自分の事だけに集中しすぎてしまった。
「ごめんごめん。さぁ、何からやろうか?」
「今日はお掃除みたいだよ。ディエと一緒かな。」
ディエというのは、イケメンの男の子だ。
「うん。じゃあ急ごうか。」
そういって、手を繋いで孤児院の中に戻る。
そうして、廊下にはすでにディエがいた。
「あー!!遅い!カナメ!お前魔法が使えるからっていい気になるなよな!」
「本当にごめん。忘れてたんだ。」
いい気になったつもりは無いけど、ディエからするとそう見えるのかな。これは気を付けないと。
「どうだか。じゃあ、罰として、床の雑巾掛けはカナメ一人がやるって事でいいな?」
笑いながらディエが言ってくる。こんな言い方だけど、怒ってるわけじゃなさそうだ。
「ちょっと!流石にそれは横暴だよ!」
「忘れた奴が悪いんだろ!」
リーネが助け船を出してくれるが、確かに忘れてた僕が悪い。
「いいよ。リーネ。僕が床の雑巾がけをやればいいんだね。よし。じゃあ、やろう。」
「最初からそう言えば良いんだよ。じゃあ、俺は窓ふきやるな。」
僕は反抗したつもりは無いんだけどね。でも、よし。やってしまおう。
「カナメ。私も手伝う?」
「大丈夫。リーネは窓ふきをお願いね。」
「うん・・・。」
そうして、各自掃除を行っていく。雑巾がけなんて、前世の小学校以来だ。モップとかあればいいのにね。
そう思いながら、床を拭いていく。流石にこの廊下を全部やるのは辛い。
でも、これも足腰のトレーニングになるのだろうか。
もし、トレーニングになるなら、それもアリかな。
そうして、しばらく雑巾掛けをして、ようやく当番の廊下が終わる。
「ふぅ。流石に辛い。」
「カナメ。お疲れ様。お茶でも飲みに行こう!」
「うん。それじゃあ行こうか。」
そうして、リーネとお茶を飲みながら、午後はギルドに行って訓練しよう・・・そう思った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
午後になり魔道ギルドに僕はいる。例によって、リーネが付いてこようとしていたけど、なんとか説得して孤児院で待ってもらう。
こればかりは仕方がない。そう言い聞かせて、ギルドの中に入る。
いつもの通り不愛想な受付の人に案内されて、部屋に入ったら、何とベーゼル様がいた。
「こんにちは。ベーゼル様」
「うむ。カナメ。今日はワシが担当しよう。」
ベーゼル様がいるということは、また無理難題を言われそうだ。
「前回と同様だ。この空間に重力を発生させる練習だ。」
・・・ほらね。やっぱり、無理難題が来た。でも、そうだよね。強くなりたいのなら、無理難題をクリアしないといけないんだろう。
「わかりました!やってみます!」
両手をかざして、目の前に重力球。つまり、ブラックホールを作るイメージをする。
勿論、そんな簡単に出来っこない。でも、ベーゼル様は妥協を許してくれない。
「これ。カナメ。不可能だと思って訓練してるだろう?それをやめい」
「すみません。」
しっかり怒られて、訓練に集中する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「カナメよ。賊と戦ったという話は知っている。」
「僕は全然戦ってないですけどね。」
意識を集中しているときに話掛けられたから、一度中断する。
「お前はなぜ一人で行かなかった?」
「え?」
なぜって言われても、明確な理由なんてない。一人ではどうにもならなかっただけで。
「行こうとはしました。けど、何をしたらいいのかわからなくて。結局ウィルに助けを求めてました。」
「ふむ。」
そうして、ベーゼル様はもう一つ聞いてくる。
「もう一つ聞こう。強ければ、一人でなんとかすることができたか?」
「え?」
困惑する。強かったら、そりゃあ賊は倒せたと思う。けど、リーネを見つけられたかと思うと・・・。
「・・・。」
「答えは今は出さなくていい。でも、考えておけ。」
なんなんだ?今日のベーゼル様は思わせぶりな言い方をする。
「えっと。」
「今は焦る必要はない。さぁ。続きをしよう。」
そう言って、訓練に戻る。何を問われたのかよくわからない。
けど、あの言葉は妙に頭に残っていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
孤児院に帰ってきてからもベーゼル様の言葉が頭から離れない。
(もう一つ聞こう。強ければ、一人でなんとかすることができたか?)
「何が言いたいんだ?強くならなきゃ話にならないじゃないか。」
「うん?カナメ?何か言った?」
「あー。ごめん。リーネ。なんでもないよ。」
そう言ってごまかす。
「むー。」
「どうしたの?リーネ?」
「なんか変。私に何か隠してる。」
「隠してるっていうか・・・。」
相談するべき内容じゃないだけっていうか、どう相談していいのかわからないというか。
「私に言えないことなの?」
「言えないこともないのだけど。」
どう言えば良いんだ?そう思っていると、いきなり話しかけてきた子がいた。
「カナメ!カナメは将来何になりたいの?」
そう言われて、振り向くとディエがいた。
「ディエ?どうしたの急に?」
「急じゃないよ。孤児院を卒業したら、何になるか決めておかないといけないじゃん!」
そっか。いつまでも孤児院に居られるわけじゃないんだよね。
リーネには悪いけど、この話は今はやめておこう。
「そっか。リーネは何がやりたいの?」
「え?私?・・・わかんない。」
うん。そうだよね。
「ディエは何になりたいの?」
「俺は、バウンティギルドに入って賞金稼ぎになってやるんだ!」
バウンティギルド?バウンティって報奨金って意味だっけ?
「バウンティギルド?なにそれ?」
「バウンティギルドは、依頼を受けて仕事して、お金ももらえるギルドだよ!」
前世で言うところのハンターギルドや冒険者ギルドみたいなものだろうか・・・。
「バウンティギルドで、賞金稼ぎになって、大金持ちになってやるんだ!一攫千金も夢じゃないんだぜ!」
凄く生き生きとして目でディエは語る。
「うん。そっか。なんで、お金持ちになりたいの?」
「そりゃ、お金があれば何でもできるだろ!女にもモテ放題だし、俺みたいに身売りされることなんてないんだぜ!」
「そりゃそうだろうけどさ。」
前世の経験のせいか疑ってしまう。そんな簡単にいくだろうか?
「カナメだって、女にモテたいだろ?」
「まぁそりゃあ、モテたいけどね。」
うん。それに対しては本当にそうだけど、モテるために命は懸けられないって感じなんだよね。少なくとも僕は。
「むーっ!」
見ると、リーネが不機嫌になっている。でもそうか。いつかこの孤児院を卒業しなくてはいけないのか。
確かにそれは考えておかないといけない。けど、そもそも選択肢なんてあるのか?
そう思えた。




