第16話「違和感」
前世の僕がテレビの前で座って、ゲームで遊んでいる。
これは、夢だ。前世の夢。
「(うっわ!敵強い!ブラックホールとか強すぎだろ!)」
夢が移り変わっていく。
「(グラビティ・シールド!これで敵の攻撃を2割カットだ!)」
夢の中の僕がしゃべっている。とても、楽しそうだ。
学校でも必殺技の名前をノートに書いてた。
オリジナルの技を空想していたこともあった。
そうか・・・そうだった。前世で年齢を重ねて忘れていた。
僕は重力制御に対して憧れがあったんだ。
(だから……この力を持って生まれてきたのか?)
そう思ったところで、目が覚めた。
懐かしい夢だ。思えば、今まで重力制御って声の主から言われたから、重力の加重と軽減しか練習していなかったけど、他の技の可能性も模索していいのかもしれない。
そう思いつつ、今日は気持ちを切り替えて、父さんに狩りに参加してもらえるように頼んでみよう。
「父さん。税が上がったって話を聞いたんだ。僕も狩りに参加させてもらってもいいかな?」
「カナメ。お前はそんなことを心配しなくても・・・いや、そうだな。カナメ、参加してくれ。」
「うん。父さん。」
父さんも母さんの事や税の事を考えて、僕の参加を承諾してくれた。
前回と同じように村の出口に集まって、盾を貸してもらって、村の外に出る。
ヴァンも一緒なところも前回と一緒だね。
「カナメ。下手こくなよ!」
「分かってるさ。」
お互いに軽口を叩く。
「よし!今日は俺が行く!」
大人の一人が手を上げて、森に潜っていく。
しばらくして、魔物が歩くような振動が伝わってきた。
「来るぞ!準備はいいか!」
大人が帰ってきて、その後ろからアグルニが出てきた。
大丈夫、今度は落ち着いている。
「カナメ!」
「うん!分かってる!」
僕は、前回と同じように左に展開する。
あの時の失敗がよぎる。拳が砕けた時の痛みを思い出す。
大丈夫だ・・・大丈夫。やるべきこと・・・出来ることは分かってる。落ち着け、僕。
「グルアアァ!」
深呼吸をしようとしたら、アグルニが突進してきた!
しまった!反応が遅れた!でも、今回は前回の通りには行かないぞ!
突進の瞬間を狙って、アグルニに重力を一気にかける。
突進しようと突っ込んできたアグルニが躓いて突進が転ぶ。
「行け!皆!押さえろ!」
よしよし!これで盾役は楽勝だ!後はしっかり押さえて、槍持ちが仕留めてくれれば。
「よし!槍で仕留めろ!」
一斉に槍持ちがアグルニを仕留めるべく槍を刺す。
「グググゥ!」
アグルニが動きを止めて絶命した。
「よし!今回も運が良かったな。アグルニが躓いた。」
うん。僕のおかげなんだけどね。
そう思っていると、森の影から大きな狼のような魔物が出てきた。
「ビックリュコス!なぜこんなところに!?」
父さんが叫ぶ。
なんだ?珍しい魔物なのか?
そう思っていたら、ビックリュコスは僕の方に向かって走ってきた!
うわ!速い!そう思って盾を構えた。
「うぐ!」
危なかった噛みつかれたら腕とかもっていかれてたかも。ちゃんと盾で防いだからなんとかなった。
「カナメ!皆、ビックリュコスを仕留めろ!」
そうして、大人達が僕を助けようとすると、ビックリュコスは後ろに跳躍して距離を取った。
うわ。マジで速い。けど、アグルニに比べたら、そんなに力は無かったのかも。
そう思って、僕は魔物に向かって、重力加重してやった。
「くらえ!」
そしたら、魔物は地面に這いつくばる。
やっぱりだ。アグルニに比べて、力が無いぞ!
「もういっちょ!」
多分もう動けないと思うけど、盾で頭を押さえてやれば安全だ!
「よし、仕留めるぞ!」
そうして、槍持ちが槍を四方から突き刺し、ビックリュコスは絶命した。
「ふぅ。なんとかなった。しかし、突然ひれ伏したぞ。何が起きたんだ?」
ヴァンのお父さんがひと仕事した感じでつぶやいた。
「カナメ。お前は・・・いや、今聞く話じゃないな。」
父さんが僕に何か言おうとしたが止めたようだ。
「父さん。この魔物は?」
「この魔物は、ビックリュコスって言ってな。肉は少ししか取れないが、皮は売れる。高くはないが、行商人が来たときのいい土産になる。」
おお!一応お金になるのか。
「こいつは素早くて危険なわりに、過食部位が少ない。だから、こいつが生息しているところには人は住まない。だから、この辺りにはいない魔物のはずだ。一体なぜ?」
成程。ここら辺にいない魔物なのか。
税の徴収が上がったこと。普段いない魔物が現れたこと。
何やらきな臭い感じがして、落ち着かない雰囲気になった狩りだった。




