第14話「初めての狩り」
僕はついに9歳になった。
身体のほうも確実に成長している。家の柱に印を付けて身長が伸びていることを確認する。
重力制御も勿論練習している。基礎になるかわからないけど、最初の重力軽減や加重もしっかり練習する。
魔力量が上がっているせいか、長い時間練習することが出来る。そのおかげで重力制御の範囲もかなり広くなったし、距離も長くなった。
今は、今までより高度な事を練習を追加している。重力を範囲加重して特定の物だけ軽減する練習もやり始めた。
今は役に立つかわからないけど、練習しておくことに越したことはない。
今日も家の手伝いが終わったので、練習しようかと思っていたら、父さんから声が掛かった。
「カナメ。お前も9歳になったんだ。狩りに行ってみるか?」
おお!ついに狩りか!あの時の失敗は思い出すけど、父さんと一緒なら大丈夫なんじゃないかと思ってる。
「貴方!カナメを狩りに行かせるなんて、大丈夫なの?」
「ああ、もうそろそろ経験してもいいんじゃないかって思ってな。ミレイは反対か?」
「まだ、早いんじゃないかしら?」
「そうかもしれない。ただ、今回は俺も一緒だし、村の男達も一緒だ。だから、大丈夫だ!」
「・・・わかったわ。カナメ。無茶はしちゃ駄目よ。」
「うん。わかった!」
重力制御もかなり上手になった。あの時のようにはならないぞ!多分。それに、大人たちと一緒にいれば、死ぬことはないと思う。
こうして、僕と父さんは村の門の前に行く。
大人たちが沢山いる。何故かわからないが、ヴァンもいた。
「カナメじゃん。お前も狩りに出るのか?」
「うん。前から参加してみたいと思っていたからね。」
「楽しみだよな!」
「こら!ヴァン。甘く見ていると大怪我するぞ。」
「分かってるよ。油断しないって。」
本当かな?調子に乗るんじゃないぞ!
「よし、ヴァン。カナメ君。これが君たちの盾だ。」
ヴァンのお父さんが盾を渡してくる。
「盾?槍とか剣とかは?」
「それは大人達の仕事だ。まずは、盾で受け止める役からだ。」
盾役に子供を抜擢していいのか?それのほうが危険な気もするけど。最初だから様子見か。
「その盾でアグルニを止めるんだ。でも、正面から止めるのは、俺達がやる。カナメとヴァンは受け止めて、両側から盾で抑えるんだ。」
流石に、正面の盾はやらせないか。そうだよね。
「よし!行くぞ」
父さんが声かける。大人は大体10人くらい。僕らも含めると合計12人か。盾持っている人が5人。そこに僕とヴァンで7人。残り5人が槍を持っているから、それが攻撃役か。
村を出て、森に入る。しばらく歩くと、最初に外に出た時に、煮え湯を飲まされたあのウサギがいた。
「あれは・・・あの時の!」
「カナメ?ホーンラゴスがどうした?」
あのウサギはホーンラゴスというらしい。
「攻撃意思を見せなければ、攻撃してこない。放っておくんだ。」
そうか。あの時は、ヴァンが石を持って攻撃意思を示したから防衛本能で襲ってきたのか。
そうして、しばらく歩くと、一人の大人が言った。
「よし!ここらで、俺が行ってくる。皆はここで待て。」
行ってくる?どこに?って思ったら、走って森の奥に行ってしまった。
「カナメ。ヴァン。用意しろ。今からアグルニを連れてくる。左右に陣取れ。」
言われた通りに、左右に散る。多分、さっきの人は斥侯役なんだろう。
しばらく待ってると、走る音と振動が響いてきた。
「釣ってきたぞ!皆準備はいいな!」
そうして、走ってきた大人が見えた。その後ろには・・・。
「ガルルルル、ガアアァ!」
出てきたのは、大人ぐらいの大きさのイノシシだ。
おいおいマジかよ今までもお肉になったものを見てきたが、生きてる状態だとこんなにでかいのかよ!
ってか、こんなにでかくて受け止められるのか?盾もろとも吹き飛ばされそうだぞ!
「グルゥ・・・グルゥ!!!」
アグルニが一度止まった。なんだ何をしようとしている。
「カナメ!怖気づくな!大丈夫だ。俺達がいる!」
父さんが声をかけてくれる。危なかった。いつの間にか放心してた。気をしっかり持たないと。
「ガアアアアァァ!」
アグルニが突進してきた!
「盾役!前に出ろ!」
ヴァンのお父さんが指令を出して、大人5人が前に出る。5人でアグルニの突進を止めた!
マジかよ!この人達すげえ!
「ヴァン!カナメ!お前達も続け!」
「はい!」「おう!」
返事をして、僕は左から、ヴァンは右から盾で抑えに行く。
抑えていても、全然力負けしていて、僕がいる意味無いんじゃないか?
そうだ!こんなときのために重力制御があるんだろ!何で思いつかなかった!こんな時のために練習してきたんだろ!
思っていた以上に緊張していて頭が真っ白になっていた。
アグルニを盾で抑えながら、加重していく。
「ググググルゥ・・・」
マジかよ!結構加重しているのに、まだ動けるのか!?だが、アグルニの足は土に埋まっている。
「よし!仕留めろ!」
前後左右から槍を刺していく。そして・・・。
「グググ・・・ウウウゥゥ」
アグルニは動かなくなった。
「よし!仕留めた。皆良くやった。」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
大したことやっていないのに、疲れた。思ったより緊張していたようだ。
「へっへ!どんなもんだい!」
「ヴァン!調子に乗るな!原因は分からなかったが、槍で刺してから大人しかった。普段は死にそうになるともっと暴れてくる!今回は運が良かった。」
うん。それは僕が重力制御で加重をしていたからだと思う。
いや、結構加重したのに、動けるとは・・・。もっと、加重できるようになったほうがいいな。
なんというか、僕は毎回見積というか、想定が甘いのかもしれない。
ここまでだと、冗談抜きに100Gとか1000Gとか掛けられるようにならないといけないな。
「よし!血抜きして、持って帰るぞ!」
父さんが声をかける。そうして、今回の僕の初狩りは終わった。
家に帰ってきて、母さんが駆け寄ってくれた。
「カナメ!大丈夫!?」
「うん。大丈夫だよ。」
「良かったわ!本当に!」
僕を抱きしめてくれた。
「貴方!おかえりなさい!」
「ああ。ただいま。今日も無事帰れた。獲物も・・・ほら!」
「まぁ!大きなお肉ね!」
大きいといえば、大きいが、税の話もあるため、大部分は村の倉庫に保管するらしい。今回はほんの一部だ。
「うん。じゃあ、晩御飯にしましょう!」
そう言ったら、母さんがふらついた。
「ミレイ!」「母さん!」
父さんと僕が母さんを支える。
「貴方・・・カナメ。実はね。お目出度みたいなの!」
突然の朗報にびっくりして、父さんも僕も絶叫した。




