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第11話「納税の義務」

あれから時間がたち、冬を越して春になった。


僕は8歳になった。


あの失敗以来村の外に出たことはない。


柵の穴も補修されて塞がれている。


僕の腕の痛みはもう無くなった。


確かに前回の出来事は失敗に終わったけど、時間が経つと反省して改善の余地もあると考えることができた。


僕の重力制御は今まで自分の身体と手に持ったものしか制御していなかったけど、離れたものや範囲一面を重力制御することはできないかを試している。


まずは、その辺の土で作れる粘土を1mぐらい離れて、重力を加重するようにしてみる。粘土が潰れたら成功だ。


正直、粘土が潰れることはすぐできた。でも、粘土を2m、3mと離してみると途端に難しい。


範囲も粘土をそれぞれ、前後左右に50cmぐらい離して、重力を加重してみても、中々粘土が潰れない。


それに、手に持っている時とは比べ物にならないくらい魔力消費するみたいだ。すぐ虚脱感が出てくる。


でも、これをやらないと。僕は成長できない。よーし!毎日トレーニングして頑張るぞ!


「カナメー!こんにちは!」


振り向くと、リーネがいる。


「こんにちは。リーネ。」


「うん!何やってるの?」


「いや、なんでもないよ」


「?」


特に隠すような事でもないのだが、誤魔化してしまった。


最近、リーネがよく会いにくる。内容は遊びだったり、冬の間は村長の講義は無かったけど、春になったら講義が再開したから、一緒に受けに行ったりと理由は様々だけどね。


「村長の所に行くよ!」


ああ、今日はそっちでしたか。


「うん。いいよ。ちょっと待ってね。」


水をちょっとだけ、小さい器に移して手を洗う。


リーネと並んでに村長の所に行く。


「カナメは髪が黒いからすぐわかるね!」


「え?そうなの?」


言われてみると、黒髪は僕と父さんだけだ。


黒髪は珍しいのだろうか。


「リーネは最近よく来るね。」


「うん。また、勝手にお外に出ないように見張ってるの!」


そうか。監視でしたか。信用が無くなったものだ。前科者は辛いね。


村長の講義をちゃんと受ける。


文字はかなり読めるようになったし、計算もお手の物だ。


と言っても、前世に比べて、かなり算数のレベルは低いからね。


リーネも大分計算はできるようになったようだ。


ヴァンは・・・相変わらずだな。まぁ家でも勉強させられてるらしいから、最低限の文字は読めるようにはなったけどね。


そうして、今日の講義が終了して、またリーネとヴァンの3人で帰る。


「なあ!村の外に出ようぜ!」


「ダメ!また、カナメを誘って!そんなのダメなんだから!」


ヴァン・・・お前と言う奴は、まだ懲りてないのか。


「ヴァン、あんな怪我したのに、まだ外に行きたいのか?」


「英雄は一回の失敗で諦めることはしないんだ!」


勇ましいな。向こう見ずなだけだと思うけど。


「むー!カナメ。行っちゃダメだからね!」


何故か、リーネは僕の手を繋いでくる。


「分かってる。もうお外には行かないよ。」


「うん」


安心したように笑顔になる。うん、良い顔だ。


「ちぇ・・・つまらないの・・・」


ヴァンは退屈そうにしている。正直、子供の頃は無鉄砲なくらいが丁度良いのかもしれない。


冒険心に溢れていた方が将来大物になる気もする。


僕は・・・どうなんだろう。2度目の人生・・・冒険するべきなのだろうか。それとも・・・。


そんなことを考えていると、広場が騒がしいことに気が付いた。


「何かあるのかな?」


リーネに聞いてみる。


「わからない。」


うん。まぁそりゃそうか。


「行ってみようぜ!」


ヴァンが一人走っていってしまった。


「僕達も行ってみよう。」


急ぐことはせず、リーネと手をつないだまま広場に向かう。


全身、鎧に包まれた人達が10人はいた。


おそらく、騎士団だ。


「税の徴収をする。ごまかしたりするな。お前たちが肉を溜めているのは知っている。さっさと出せ!」


何か偉そうだ。実際偉いんだろうが、釈然としない。


「よせ、もっと穏便に行え。騎士団に嫌悪感を持たれるのは、双方の関係構築にひびが入る。」


クリーム色の髪を腰まで伸ばした女の騎士様が忠告している。


「は!騎士団長!」


団長様でしたか。女の人なのに・・・きっととっても強いのだろう。


「綺麗な人ー。」


リーネがつぶやく。


「うん。とっても美人だね。髪も綺麗だ。」


同調するように言うと、リーネはむっとした顔になった。


「カナメは髪が長い人のほうが好きなの?」


「いや、そういうわけじゃないけどね。」


「ふーん・・・」


リーネが不機嫌になった。嫉妬かな?


「おお!すごい美人だー」


ヴァンもつぶやくが。


「そうだね。」


リーネは一貫してヴァンには塩対応である。


ヴァンお前はもっと好感度を稼ぐべきだ。


「アルケール領であるこの村の税は今までと同じくらい徴収する。異論は無いなはずだ。」


騎士団長が言う。今更だけど、この村はアルケール領っていうらしい。8歳まで住んでいるのに知らなかった。っというか、誰も教えてくれなかったな。そんなに重要な事でもないから、誰も言わなかっただけかもしれないが。


「はっこれが税でございます。」


リーネのお父さんのアルスさんが馬車に積んでいく。


アグルニのお肉を量にして、約5体分と約30kgくらいのお芋を載せていく。


おいおい。流石に税を取りすぎじゃないか?


いつもこんなに取られているのか?っていうか、どのくらいの周期で税の取り立てが来るんだ?


「え!ちょっとまって、持っていきすぎだろ!こんなに持っていかれたら、俺たちの分が!」


ヴァンが突っかかる。止めようとは思ったけど、リーネと手を繋いでいたし、正直、僕もそう思ったから、止められなかった。


「なんだ!この子供!」


苛立ったように騎士様がヴァンに迫る。


流石に短気すぎじゃないか?そんなんで、騎士団が勤まるのか?自分たちが特権階級だと勘違いしていないか?


勿論、口には出さないが。


「止さないか!少年。これは必要な事なんだ。社会を構築するのに税は必要不可欠なんだ。そのうち君にもわかるようになる。」


諭すように騎士団長様がヴァンに言う。


「よし、また10日後に徴収する。」


結構な頻度で徴収に来るな。社会構築に必要経費か。


確かにそうなんだろうが、この村でいうなら、魔物の被害は自力だし、村は自衛している。治安維持とか行政サービスを享受している実感が無いから、納得しがたいだろう。


この世界で生きるということを、また一つ思い知らされた日だった。

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