第10話「町の外と失敗」
ある日以降、父さんは2~3日休んで、すぐ狩りに行くようになった。
もっと、休んだほうがいいと言ったが。
「いや、もう大丈夫だ。行ってくる。」
心配だけど、本人が行くというのを止められない。
僕のほうはというと、今まで通り村長の講義を受けながら、もっと家の手伝いをやるようになった。
薪割りや水汲みに加えて、畑の芋の収穫や耕す作業も任されるようになった。
もうすぐ冬が来る。冬を越すために食料を溜めておかないといけない。
だからこそ、父さんは狩りに参加したと思う。
それと、いつもの練習に追加して、村長の家に行くときに、ランニングついでに重力軽減で走る練習も追加した。
やっぱり、重力を軽減しすぎると、地面を上手く蹴れないし、どうしてもジャンプみたいになってしまう。
諦めるつもりはないけど、別の方法を考えたほうがいいかもしれない。
今日の朝もいつも通りに狩りに出ていく。
「よし、今日も行ってくる!」
「貴方、気を付けてね。」
「ああ、大丈夫だ。」
「父さん、僕も狩りに行こうか?」
「ダメだ!カナメは家に居て、家の手伝いをするんだ。いいな。絶対に付いてくるんじゃないぞ。村の外にも出るな。いいな!」
「う・・・うん。行ってらっしゃい。」
ピシャリと言われてしまった。
心配だけど、仕方がない。僕は僕のできることをしよう。
今日は畑仕事だったな。収穫した芋を持って、家に帰ってきたが、何故かヴァンがいた。
「お!カナメ!ちょっと付き合えよ。」
ヴァンが話しかけてきた。
「ヴァン。どうしたの?」
「外に行くんだよ。もうすぐ、冬が来るだろ。少しでも食料を取ってくるんだよ!」
小さい声で言ってきた。
「おいおい。外は危険だぞ。止めておけよ。」
「大丈夫だって。無茶はしないよ!ちゃんと何か取ってくれば、絶対褒めてくれるぞ!」
「うーん。やっぱり、止めておいた方がいいよ。」
「嫌ならいいよ。俺一人で行くから。」
まずいな。これだと、本当に一人で行ってしまいそうだ。心配だ。もし、怪我して魔物に食べられでもしたら。
「分かったよ。付いていくさ。」
「よし!そう来なくちゃな!行くぞ。」
渋々、承諾した。
「母さん。ちょっと、ヴァンと遊びに行ってくるね。」
「あらそう?遅くならないように帰ってくるのよ。」
そうして、ヴァンに付いていく。
そして、この判断は間違っていた。もっとちゃんと、ヴァンを止めるべきだった。
僕も重力制御に慣れてきて、この能力でなんとかなるんじゃないかって思い始めていた。
油断していた。この世界の事を甘く見ていたんだ。
すぐそれを思い知らされた。
しばらく、ヴァンに付いていくと、村を囲う柵があったが。
「ここだけ、穴が開いているんだ。ここから出られるぞ!」
丁度、子供が通れるくらいの穴が出来ていた。匍匐前進で村の外に出る。
ちょっとした解放感があったが、それだけだ。
「そういえば、当てはあるのか?獲物を探し回るのは無しだよ。帰るのが遅くなったら、危険だよ。」
「分かってるって!ほら、そこの森に何かいるかもしれないだろ?」
「奥までは行かないぞ。迷ったら最後だからね。絶対に手前で帰るからね。」
「説教臭いこと言うなよ。」
そうして、森に入っていく。本当にこの子は分かっているのだろうか?
しばらく進むと、角のついたウサギのような魔物がいた。
「アレだ!あれを仕留めれば、いつものご飯の足しになるぞ。」
正直、そんなに大きい魔物でもない。
普通のウサギに角が付いたくらいだ。角もそんなに長くない。アレだったら大丈夫かな。
「よし!行くぞ!」
「行くって、どうやって仕留めるつもりさ?」
「石でも大丈夫だろ。あんなに小さいんだし。」
石を持ったヴァンが突撃していく。
「よっし!仕留めるぞ!」
「グルルゥグルァ!」
ウサギが突撃したヴァンの右肩に目掛けて飛びついて、そのまま角で貫いた。
「ぐわあ!!!」
「ヴァン!」
肩を角で貫かれて、石を手放してしまう。
「うう。痛ぇ。痛えーよ。」
「ヴァン。大丈夫か?」
「グルァ」
もう一度、ウサギは角を立てて飛び掛かってきた。
流石に、見えていたから僕は腕をクロスして防御した。
グサッ!
「うぐぅ!」
左腕を貫かれた。まずい!小さいからと完全に油断していた。
魔物を過小評価していた事を後悔した。
「クソ!痛い。・・・」
「グルルゥ」
ウサギは一瞬こちらを睨み、次の瞬間、角を立てて飛び掛かってきた。
「グルァ!」
僕は反射的に右拳を握り上げて、重力制御で加重して振り下ろした。
「うわあああぁ!!!」
掛け声も情けないものだったし、前世で武道をやっていたのも全然活かせなかった。
完全に冷静じゃなかった。
でも、角を避けて、振り下ろした拳がウサギの頭に直撃して、グチャ!って音がした。
頭を完全に潰した。血が上った頭が冷静になってくる。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
息が上がっている。精々1分ぐらいのやり取りだったのに。完全に疲れてる。
「ヴァン。大丈夫か?」
「ううぅぅ。痛いよ。」
「もう帰るよ。ウサギは・・・持って帰ろう。アレ?」
右拳が上手く動かない。まずい。これ右手が骨折してる。手首までいってるかもしれない。
そう思ったら、もっと痛くなってきた。
「とにかく帰るよ!ほら、立って」
何も言わなくなったヴァンを引っ張っていく。
ウサギは・・・諦めよう。命の方が大切だ。
そうして家に帰ったら、大騒ぎだった。
「ヴァン!お前と言う奴は!!!」
ヴァンもお父さんに怒られている。
「カナメ!!」
母さんがちょっと目に涙が浮かんでいる。泣かせてしまった。
「歯を食いしばれ。カナメ」
「え?」
パシッ!
父さんからビンタされた。前世も含めて、初めて親から引っぱたかれた。
「俺は言ったはずだ!付いてくるな!村の外に出るな!なぜ、村の外に出た!?」
「ごめんなさい。父さんの力になりたくて。」
「お前はまだそんなことまで背負わなくていい!全く、生きて帰ってきたからいいものの。」
リーネが村長と一緒にやってくる。
「カナメ!大丈夫なの?」
「うん。大丈夫だよ。」
「ヴァンに付き合うからだよ!ヴァンなんて放っておけばよかったのに!」
それは流石に言いすぎだと思うが、甘く見ていたのは確かだ。
「カナメ。ヴァン。こっちに来なさい。」
村長が近づいてきて、僕達も村長の元に行く。
父さんと同じように手をかざして、光出す。
僕の身体もヴァンの身体も光って、怪我を治していく。
「どうやって、その右手になったかわからんが、これで身をもって分かったじゃろ。外は危険じゃ。二度と村の外に出ないようにな。」
「はい。ごめんなさい。」
「ごめんなさい。」
ヴァンと一緒に謝る。この経験は僕にとって苦い経験になった。
そして、重力制御は身体強化できないこと。この能力を使いこなせていないこと。
この世界で生き残るのは簡単じゃないことを理解した。




