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第3話 予兆と闇

今回は、少し胸が苦しくなる展開があります。

書いている私も、なかなかしんどい回でした……。

それでも、ルカたちにとって大切な転機のお話です。

温かく見守っていただけたら嬉しいです。

 使者との顔合わせが終わり、翌朝。

ドーマとエルメナを含む民たちは、朝食と庵の案内の準備に追われていた。

 そして、一緒に早起きしたルカは使者達が連れてきた馬と楽しそうに遊んでいた。

 馬はとても穏やかで、まるで母と子のような光景に癒しすら感じる。

「お馬さん。乗ってもいいかな?」

馬は一度、ルカをじっと見つめると、静かに前脚を折り、その背を差し出した。


 するとルカは、ほんの一瞬だけ人が変わったように馬に命じる。

「俺に従え...。」馬は甲高い鳴き声を上げ、前脚を大きく跳ね上げた。

ほんの一瞬の出来事だ。ルカは、何事もなかったように馬を愛でる。

 ゴール以外の使者は、馬の鳴き声にしか反応しなかった。

 

 その異変に気づいたのは、三人だけだった。

ドーマ。エルメナ。そして――ゴール。

偶然とは、どうしても思えなかった。

  ただの一大臣ではない。

何か特別な力、もしくは――歴史を知っている。

 

 ドーマとエルメナは、朝食の準備をしていた。2人は、顔を見合わせお互いに何かを感知した事を、共有した。

これについて、2人は口を紡いだ。2人とも、何が起こったのか全く分からなかったからだ。

 そして朝食を摂り、その後、使者一行は庵の見学を終えた。

長であるルカの自宅。

長老の自宅。

井戸。(今そこから汲み上げられるのは、ただの澄んだ水だけだった。)

食品貯蔵庫。

庵の畑。 ほかにも、生活に必要な場所を一通り案内した。


一通り視察を終えた、使者一行は帰路につくこととなった。

これといって、特に指摘は無かった。

最後に、ゴールは「我々は、ここをルカの集落と認識し王への報告を行う。その後の知らせを待て。」

 「承知いたしました」と、集落の者たちは一斉に頭を下げた。

 「バイバイおじちゃん!また来てね!今度は、もっといっぱいお馬さん連れてきてね!」ルカは満面の笑みで、見送った。

 (ちょっとそれは、意味が変わってくる...。)エルメナは、最後まで緊張が解れなかった。

 ドーマは大きく手を振り、見送った。

 住民とエルメナは、深々とお辞儀をして見送った。

そして、初めての苦難は去っていった...。


「...はぁ。疲れた。」

「あなた何かした?」

「しただろ!あんな奴らに片膝つくなんて、魔王のすることかよ!」

「何が魔王よ。ただの筋肉ゴリラが。」

「バカ言え!フィジカルこそ最強だ!お前も一緒に鍛えるか?いくらでも、付き合うぞ!」

「やめてよ。私までバカになったら、誰がルカを王にするのよ!」

「あのな。力があれば簡単なことだ。こんな、チマチマしなくても殴り込みに行けばそれで終わりだろ?そうすれば、ルカはすぐに王だ!こんなとこから出て、国ごと乗っとればいいんだよ。」

「ルカをどんな王にするつもりよ。まったく...。」


「ねぇドマちゃん、ママ。ルカはね、もう王様だから良いんだよ!みんな今は、お腹いっっぱいのお顔してるもん!ドマちゃんもいるし、ママもいる。おじいちゃんもいるし、みんなもいる。ルカはねすっっごく幸せなの!みんなは、違うの...?」

「ううん。みんな幸せよ。ルカのおかげだね。ありがとうルカ。」

 (あんたが、余計なこと言うからでしょ!)

 (おまえだろ!) 二人は、小言で言い合う。

しかし、この平和な日々が脅かされようとしている...。

 使者達が帰国してから、おおよそ半月後王国より国書が届く。

 ドーマ、エルメナ、長老は緊急の会議を開いた。

代表して、エルメナが読み上げる。

 

 「パール王国国王アルカーナ・パールより、ルカ殿へ。」


貴殿の集落の発展、ならびに治世の安定、まことに見事である。


その才を高く評価し、ここに正式にルカ殿を一地方王として認め、パール王国の庇護下に迎え入れることを提案する。


属国として王国に連なるならば、交易の権利、軍事的保護、ならびに王としての地位を保証しよう。


ただし、その証として、定められた租税を納め、王国の宗主権を認めることを条件とする。


これは勧告であると同時に、最後の機会でもある。


返答を待つ。」

(...やっぱりそうなるわよね。これは、チャンスよ。これを足がかりにここを帝国へと発展させ、ルカを王とする。そして、いずれは...。)エルメナは、これに応じるつもりだ。


「ふざけんなよ!属国だ?納税だ?何様のつもりだ!王は、ルカだ!これは、宣戦布告でいいんだよな?」


 「待ってドーマ!これは受けるべきよ!段階を踏まないと!!ここで、こちらから仕掛けたら集落のみんなだって危険になる!ほぼ確実に殺されるわ!」


 「だまれ!ここまで、ナメられていいはずがねぇ!!王のために、命を捧げるは民の役目だろ!その覚悟もねぇで、あいつを王としたのか!お前らは!!」


 「そうじゃない!犠牲は少ない方がいいに決まってる!確かに貴方なら、王国を堕とせるかもしれない!!でも、力での支配からは、何も生まれない!それに、そんなことしたら、ルカが...。」


 「俺は行く。...お前らは、黙って見てろ。必ずあの国を消してくる...。」

 ドーマは完全に、冷静さを失っていた...。今のドーマは、かつての力で支配していた頃の魔王そのものだ。


 「行かせない...。ルカの為にも絶対に!力尽くでも止める。」

 「調子に乗るなよ...。魔法だか、なんだか知らねぇけどなお前は、俺たちの王を他国に売ると言った。即刻処刑だ。俺がお前を、殺してやる。」


 「お待ちくだ...」

 

その瞬間。

空気が、凍りついた。


次の瞬間、床が砕け、衝撃が庵を揺らした。


――もう、言葉では止められなかった。


 ドーマは、本能からかエルメナの首を掴み森の影へと消えていった...。


 ルカは異変に気付き、長老の自宅へと駆けた。


そこには、戦いの衝撃に巻き込まれたのか、頭から血を流し倒れている長老。


ルカは、叫んだ。「なんでーー!!」

突如として、あたり一面はとてつもない光に包まれた。

ルカの目の前には、小さなピクシーが現れた。ルカは、即座に命令を下した。

 「おじいちゃんを治して!!」

 「うん!」

ピクシーが、倒れる長老の頭上を一周した。

すると、長老の傷が癒えている。まるで、作り替えられたかのように...。

 ルカは、さらに命じた。

「ルカを、ドマちゃんとママのとこに連れてって。」

「任せて!」


 ピクシーの周りには、謎の魔法陣?の様なものが構築されルカとピクシーは、一瞬にして消えた。


 住民達は、絶望した。「終わりだ...。」


 ドーマとエルメナは激しくぶつかり合う。


木々は消え、森は燃え盛り、巨大なクレーターまでもが現れた。

――人の戦いでは、ありえない光景だった。


 「もうやめて!分かったから!もう一度、一緒に考えましょ!だから...。」


 「......。」ドーマはひたすらに、攻撃を撃ち込む。

豊かな森は段々と消えていく...。


「奈落の引力アビス・グラビティ!」

(これでも、止まらない...。)

 「...このままじゃ、押し切られる。この私が...。とにかく止めないと。」


 「っ!!」

 「っ!!」

 「なに!?」

 「...!?」

「やめて!!」ルカの迫力に、二人は止まった。

まるで、時の流れが止まったかのように...

 「何してるの!二人とも!ルカ怒るよ!もぅ、やめて!森が壊れちゃう!けんかはダメ!」

 「だめ!ルカ!離れて!」

 「やだ!もぅ終わり!」

「ルカ...。」やっと、口を開く。

「嫌い!2人とも大嫌い!おじいちゃん、死んじゃうとこだったんだよ!どうして、そんなことするの!ルカは、優しい王様になりたいのに...。」意識を失った。

「とにかく、一旦集落に帰るぞ。」ピクシーが機転を効かせた。


「断る...。」

「何を言っ...」

「俺は、ルカを泣かせた。このまま、帰るわけにはいかない...。あとは、頼む。」

「待って! ドーマ!」

「ほっとけ!とにかく一旦帰る。」ピクシーにより、ルカとエルメナは帰宅した。


 「...ということがあり、皆さんにはご迷惑をおかけいたしました。本当に申し訳ございませんでした。」


 「お顔を上げてください。お2人が、ルカ様を思ってのこと。それは、我々も同じです...。誰も、怒ってなどおりません。お2人がルカ様を思う気持ち...大変嬉しく思います。

今後とも、我々を導いてください。エルメナ様。」

 「ありがとう。長老。みんな。」

「それよりも、ルカ様です。正直、見ていられません...。ドーマ様が居なくなってから、魂の抜けたような恐ろしくも感じます。あれほど、天真爛漫なルカ様がこのような...。ルカ様にとって、お2人は特別な存在です。どちらかが欠けてもいけません。どうか、ドーマ様をお探しになってください。あのお方は、我が集落には必要な方なのです...。」


「ごめんなさい……。」

その声は、震えていた。

「少し、頭を冷やしてくるわ。ルカをお願いします。」

「...はい。」


「戻りました。」

「それでは、今後についてですが...。まずは、ドーマ様の捜索をお願いします。私どもは、集落の復旧を行います。そして、今回の本題ですがあの、ピクシーです。何か、ご存知ですか?」

「噂では...。異世界より転生、あるいは転移してきたものは、特殊な才に恵まれる。それは各々、多種多様であり、歴史上で記録されている情報では、遥か古の時代3柱の精霊を宿した勇者が居たとか...。」

「勇者...ですか。ちなみに、ルカ様は...?」

「恐らく、そのどちらかよ。只、あのピクシー...1柱だけだった。全然、分からないことが多すぎる。」

(流石に、まだ...。)

「それでは、当面ルカ様の様子を注視していくということで、よろしいですね? 」

「えぇ。実際長老はどう思った?私たちの話。」

「どちらも正しい。やり方が違うだけ...。ルカ様を思う気持ちは、皆平等。しかし、あれだけの力をお持ちのお二人が武力行使はいけませんな...。まして、ルカ様の居るところで。」

「その通りね。私もどうかしていたわ。あいつが暴れた時、本当に殺されると思った。あの時、ルカが来てくれなければ私は...。」

「本当にそう思いますか?あれだけルカ様を思っているドーマ様が、さらにルカ様を悲しませるとは思えません。恐らく頃合いを見て、負けるおつもりだったのではと思います。本気で我を失っていれば、わざわざ場所を変えたりしません。まぁ、本当のところは分かりません。」

「確かにそうね...。とにかく私は、ドーマを連れ戻す。そして、ルカも正気に戻す。本当に見ていられない。まるで、頭の何かが切れたかのような。」


 ドーマを失ったルカ。再起不能なほどの、心の傷。この世界での初めての友達が居なくなり、今後のルカはどうなるのか。ルカの心に残された傷は、あまりにも深かった。

この先、彼女がどんな道を選ぶのか...。

今回は物語の大きな分岐点となる回でした。

まだ分からないこと、説明していないことが多く出てきていますが、

今後、少しずつ明かしていく予定です。

ここから先のルカたちの行く末を、楽しみにしていただければ幸いです。

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