第2話 魔女と使者
今回は少しだけ情報量の多い回になります。
固有名詞や設定がいくつか出てきますが、物語を読み進めていくうちに、自然と分かるようにしてあります。
ルカの可愛さもちゃんとありますので、気楽に読んでいただけたら嬉しいです。
前回、王となったルカ。まだまだ、小さな庵だがルカもドーマもとても楽しそうだ。すると、ドーマはある事に気付く。この庵には水がない。今まで、どうしていたのかを民に聞くと、川まで汲みにいっていたらしい...。
「...お前ら、井戸を掘るって発想はなかったのか...?」
ドーマは、首を傾げる。
「...。あ!そっか!その手があった!」
すると一人の民が。
「あ、でも井戸を掘ると言っても何も道具がないんですよ...。森で手に入る物しか、使ったことがありません。まぁ、子うさぎ一匹捕まえられのないですが。」
ドーマは誇らしげに腕組みをして言う。
「そうか!なら、俺が手本を見せてやる!なに、簡単なことだ。とにかく、深く掘れば必ず水が湧くと聞いたことがある!」
それを聞いたルカは...。
「ルカもやるー!穴掘り!」
「ルカ。お前は、見ていろ!すげー面白いのを見せてやる!」
ドーマはルカと民たちに、自分から少し離れるように告げる。
「よしっ! ぅおらぁよっと!!」
ドーマが軽く地面を叩くと、何故か穴が開き綺麗な水が吹き出した。それは、光を帯びたように輝く水だった。
当然ルカは、ハイテンションだ!
「ドマちゃんすごーい!キラキラだよ!」
ルカは、突然噴き上げる水に向かって走り出した!
「おいルカ。濡れるぞ〜。気ぃつけろよ〜。」
ドーマはルカを止める気は一切ない。そして、とても誇らしげだ。
すると一人の民が...。
「しかし、ドーマ様。水がこれだけ噴いていれば井戸としてどうなんですかね?この小さな庵では、すぐに飲み込まれてしまうのでは...?」
ドーマは、苦い顔してる。
「すぐに収まるだろ!つか、ルカ!何だ?その格好?」
「ん?どしたの?ドマちゃん?」
噴き上がる水を浴びたルカは、変貌していた。
ドーマと同じ、白髪に青い瞳。そして1番の謎は、くまさんパジャマを着ていることだ。しかも、フード付き。
「わー!何これ!くまさんだよ!ドマちゃん!」
「なんだっそれ!まぁ、でもいい格好になったな!」
続けて、とある民の女性が反応した!
「ルカ様可愛い〜!」そう言うと、ルカを抱き上げた。
「ルカかわいい?おねぇちゃんも可愛いよ!」
「キャーーー!」
噴き上がる水。ルカの変貌。これにより、庵は大騒ぎだ。
すると、森蔭から怒りのような呆れた女性の声が...。
「やってくれたわね...。どうせ、そこの筋肉ゴリラの仕業でしょ?」
ドーマは、とてつもない圧を感じ、咄嗟にルカへ下がるよう指示した。
しかし、その女性はドーマには見向きもせず歩きながら、魔法を唱え聖水の噴き上げを鎮めた...。
「鎖...。」
「全く勘弁してよ。あと、200年は大丈夫と思ってたのに。あなた達は、転生者?転移者?どっち?」
この女性は、ルカとドーマがこの世界の人間ではないとすぐに理解した。
ルカは、女性に向かって歩き出し足元に抱きつく。
そして、見上げながらこう言う。
「ねぇ、お姉ちゃんもドマちゃんと同じ目をしてるね。ルカのママになってよ。ルカは、王様!ドマちゃんとみんなは、お友達。」
「私があなたのママに?よく分からないけど、こうなっては私も隠居してられないの。私のお手伝いをしてくれるかな?ルカちゃん?あ、あと自分のペットはちゃんと躾けないとだめよ?」
「ペット?ドマちゃんはお友達だよ!だから、ママとドマちゃんもお友達なんだよ!」
「そうね。わかったわ。それであなた達(ドーマと、民たち)、おそらく、近いうちに王国から使者が派遣されてくる。まずは、その準備をしましょう。」
「王国から?お前何か知ってるのか?」
ドーマは、聞く。
「えぇ。もぅわかると思うけど、さっきの水は聖水。古い時代の遺物よ。それをあなたが、無茶苦茶な力で復活させてしまったの。それと、あなた達ルカちゃんに気を取られすぎて気づいていないけど、そこのおじいちゃんも腰が治ってるみたいよ?」
民とドーマは、長老に目を向け驚いた。
「長老!杖が浮いてます!見た目は、変わらないけど腰が真っ直ぐになってる!」
「本当だね...。これは一体。」長老本人も驚きを隠せない。
「おいおい。どういうことだ。ルカといい、長老といい何で、お前らだけ...。あの水は、俺を含めほとんど皆被ったはずだぞ...。」ドーマの頭の中は、ぐちゃぐちゃになった。
「簡単な話よ。あ、それより私はエルメナ。魔法使いよ。先に言っておくけど年齢には、触れないでね。もし触れたら、即刻消すから...。」
「はい...。」皆、察した。
因みにルカは、いつの間にかエルメナに抱かれている。
エルメナの胸に顔を埋め、今にも眠ってしまいそうなほどだ。エルメナも、ルカを落とさないように優しく抱き抱える。まるで、本当の親子のようだ...。
「あ。そうそう。聖水のことよね?まず、そこの長老?はおそらく、女神アステリアの末裔よ。 噂には聞いたことがあるでしょ?古代王国パドルスが、この地下に沈んでいる。そのせいで、聖水が噴き出たのよ。それによって、直系である長老は、恩恵を受けた。まだ、腰以外の恩恵があるのか、ないのかは判断できないわ。」
「私だけが...?ここに居る皆が女神アステリア様の子孫であると聞いていましたが...。」
「何千年も前の話よ。血が残っている方が、むしろ異常よ。それと、ルカちゃん。……私の想定を、完全に超えている。そもそも、何故そこのゴリラと同じ白髪に青い瞳なの...。それに、この世界で青い瞳を持つものは、私を含め破壊者と呼ばれていた...らしい。恐らく長老も噂を耳にした事はあるでしょ?何故このゴリラを受け入れたの?」
「私達は、ドーマ様ではなくルカ様を受け入れたのです。あのお方は、この世界を変えてくれる救世主もしくは、神であると感じました。神など存在しないこの世界に誕生した、青い瞳を持つ子供。そのルカ様に仕えるドーマ様であれば全く問題ございません。あくまでも、直感です。青い瞳の者は、破壊者。これは、古の伝承にすぎません...。」
「そうね。とにかく、ここの発展を急ぐわよ。使者が到着した時、まずは穏便に帰ってもらうことが先決よ。当然、聖水のことは話しちゃダメ。とりあえず、今日は休ませてもらうわ。この子も寝ちゃったみたいだし。案内してくれる?」
「なんで俺が…。お前、少し詳しすぎやしないか?」
「そうね...。あなただけには、言っておくわ。パドルス王国が存在していた時代から、生きているのよ...。だから、離れてこの土地を見守ってた...。」
「そうか...。わかった。とりあえず今日は、ここで眠れ。俺は、外にいる。何かあれば声をかけろ。」
「あなたは、眠らないの?」
「俺は、睡眠を必要としない。……魔王だからな。」
「魔王...。」
エルメナは、昔のことを思い出していた。
(魔王。まさか、今会うことになるとはね...。ようやく、この世界も動き出したのね。期待してるわよ。ルカ。ドーマ...。)
そして、エルメナは眠りに落ちた...。
朝が来た。ドーマは朝イチで熊を捕獲していた。
ちょうどそれを、自慢の手刀で切り刻んでいた時エルメナが起きてきた。「おはよぅ〜。」
民達は、小さな畑から野菜を収穫していた。
「おはようございます。エルメナ様。」
「起きたか。ルカは?」
ドーマは、聞く。
「えぇ。おはよう。まだ寝てるわ。ほんと、かわいいわね。」
「あいつのこと、どう思う?俺は、神の再来だと思ってる。
この世界に神はいない。それは聞いた。でも、あいつが姿を変えた時、一瞬だがイヤな感じがした...。」
「私もそう思うわ。確かに何か、イヤな予感がするのよ。」
「ママ〜?ドマちゃ〜ん?どしたの?」ルカが、まだ眠そうに起きてきた。
「何でもないわ。朝ごはんにしましょう。」
「うんっ!!今日も、お肉だね!美味しそう〜。」
そして、エルメナの加入により庵の整備は着々と進んでいった。ルカ。ドーマ。エルメナ。この3人は、同じ屋敷となった。長老の知恵、ドーマの材料採取、エルメナの魔法。
これにより、着々と建築が進み井戸は当然、家も世帯分建った。
これに伴い、訪問者用の宿も作り、火や、水、塩なども手に入り、料理の幅も広がった。
この庵にエルメナの加入は、必須だった。
そして、今後会議は長老の自宅で行う事となりエルメナは庵を囲うように、低級の防御結界を張った。
そして、パール王国の使者が決定した。
恐らく、聖水の可能性が高いことを国王は予見し少数精鋭のメンバーを決めた。
外務大臣 ゴール。
外務大臣秘書官 ジルス。
騎士団長 スクアード。
一等騎士 カトレア。
以上4名が派遣された。
そして、数ヶ月後使者が到着した。
「我らは大帝国、パール王国より参った使者である!結界を解き、我らを歓迎せよ!」
騎士団長 スクアードが命じた。
そして、ルカの庵はルカ、ドーマ、エルメナ、長老の4人で出迎えた。
4人全員が片膝をつき、使者に対して敬意を払った。
それを見た、外務大臣 ゴールが口を開く。
「この場所には、小さな庵しか無かったはずだ。そこの老人以外の3名よ。貴様らは一体何者だ。答えよ!」
エルメナが口を開く。
「私は、ただの低級魔法使いです。そして、この男は庵の用心棒です。こちら小さき子供は、我らが長であります。」
「ほぉ。我らパール王国に対して虚偽を発するか。貴様は良しとして、その大男只者ではあるまい。そして何より、そのふざけた格好の子供だ。何故このような子供が、貴様らの長なのだ?確実に説明できるのか?」
「ふざけてないよ!ルカだよ!おじちゃん偉い人?でもね、ルカは王様なんだよ!もっと偉いんだよ!」
(ルカぁ...。お願いだから、もうやめて。喋らないで〜。)
エルメナは心の中で、必死にお願いした。
一方ドーマは、膝をつき下を向いてはいるが肩がピクピクしている。
「貴様!ガキが誰に口を聞いている!パール王国 外務担当大臣!ゴール様であるぞ!今ここで、処刑されたいか!この、騎士団長スクアードが直接手を下してやろう!」
「やめろ...。子供相手にムキになるな。
まぁ、よい。とりあえず、今晩はここで世話になろう。案内せよ。」
(こいつらの青い瞳...。まさか...な。)
ゴールは、一体何を知っているのか?
「長老。あとは、お願いします。私とドーマは、ルカを寝かしつけてくるわ。」
ドーマは、ルカを抱き抱えエルメナはその後につづく。
「はい。おまかせを。」
長老は、客人用の宿へと4人を案内した。その際、ゴールよりいくつか質問がでる。
「長老よ。あの魔女が申していたことは、誠か?どうも、私にはあの大男が大変危険に感じるのだが...。それに、あの子供。一体何者だ?強者の覇気を感じる。決して確信はない。ただ、隠し事だけはするなよ...。」
「もちろんでございます。」
長老は、宿へご案内し後は庵の女性達に任せその足で、帰宅した。
そして、ルカを寝かしつけたエルメナとドーマは長老の自宅へと向かう。
「遮音結界」
エルメナは、3人の会話が聞こえないように魔法をかけた。
「ほんと、便利だな魔法は。」
「そんなことより、ドーマ。今回のメンバーどう思う?」
「よく分かんねえけど、今回のメンバーに関しては特に気になることはなかったな。」
「とにかく明日、改めて今回の訪問に関して聞いてみるわ。あなたは、余計な事をしないでね。」
ドーマは、怪訝な顔でただ頷いた。
一方使者達もまた、会議を行う。
「明日、まずは庵の見学だ。少しでも怪しいものを見つけたらメモをしておけ。そして、戻った際国王の指示を仰ぐ。それとスクアードは、ドーマという男から目を離すな。魔女には、手を出すな。」
こうして、エルメナの加入と使者の訪問と少し忙しい展開を見せた「ルカの庵」
今後は、パール王国との関係やさらには近隣諸国の動きも気になる。
突如異世界から現れたルカとドーマ。
その答えを知る者は、まだいなかった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は情報量の多い回になってしまいました。
古代王国や聖水、破壊者、使者たちなど、たくさんの名前や設定が出てきましたが、
これらは今後の物語の中で少しずつ明かしていく予定です。
無理に覚えなくても大丈夫ですので、物語の流れを楽しんでいただけたら嬉しいです。




