荒野
荒涼とした荒野の中を、一人の男が足を引きずりながら歩いている。
だが、途中で石に躓き、声を上げることなく地面に倒れてしまう。
そして、そのまま動かない。否、動けないのだ。度重なる疲労によって。
男の背後には亡者の仮面を付けた群れが、男を逃すまいとしていた。
男に対して、生贄の仮面を幾重にも被せて。男のことを知る由もしないで。
そして、男が倒れたとしても、さらに生贄にしようとする。生贄の仮面を被せて。
されど、次の生贄の仮面を被らせることは失敗に終わる。
男が倒れた時、3人の仮面を付けた人影が男を囲むようにして立っていた。
亡者の仮面群は、3人の人影の元に行こうとしたが、できなかった。
何故ならば、3人のうちの1人。黒雷の鬼神の仮面を付けた黒衣の男が、亡者の仮面群を睨みつけていたから。
それだけ。それだけだというのに、亡者の仮面群は足元から麻痺したかのように動けなくなってしまったのである。
どうしてなのか、彼らにも分からないのだろう。しかし、分かっているのは黒雷の鬼神の仮面の男のせいだということ。それだけしか分からないのだ。
黒雷の鬼神の仮面の男は、亡者の仮面群を睨みつけながら、おもむろに指を鳴らす。
すると、倒れた生贄の仮面を付けられた男の周囲に闇が生じ、3人を包み込むと、いずこかへとワープさせた。
まるで、この場所から別の場所に転移したかのように。
そこで亡者の仮面群は麻痺が解かれたように、黒雷の鬼神の仮面の男のもとへと歩みだした。男に生贄の仮面を被らせるために。生贄の代わりにしようとして。
しかし、その企ても失敗に終わる。彼らの目的はもはや果たされることは無い。絶無へと帰しているのだから。
そのことを知っているのか、認めようとしないのか。亡者の仮面群は黒雷の鬼神の仮面の男へと、雪崩のように迫ってくる。
数歩のところで、黒雷の鬼神の仮面の男はいつの間にか手にしていた黄金の剣を薙ぐカのように払った。
すると、迫ってきた亡者の仮面群の一部は消え去ったのであるーー。




