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妹が可愛すぎて悪役令嬢になりました  作者: 雪月花


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6/9

6:吟味する姉


 マリーとジュリアン王子は、あれからいい感じに仲を深めていった。

 ジュリアン王子も、素直な好意をにじませるマリーを、確実に意識し始めている。

 恒例のお茶会では、ふたりの会話は弾んでいた。

 ーーもちろん今日も、私の目の前で。

 



 頬を薄っすら染めたマリーが、はにかみながら王子に聞く。

「学園の様子は、どんな感じなのでしょう?」


 ジュリアン王子も優しく見つめ返しながら答えた。

「みんな仲が良くて、楽しいよ」

「わたくしも早く通いたいですわ」

「うん、来年を楽しみにしてるね」

 

 私とジュリアン王子は、貴族が通う3年制の学園に通っていた。

 来年私たちは3年生になり、マリーは1年生として入学してくる。


 ……物語の前半で起きた出来事は、ほとんどこの学園の中だった。

 だから、ここにマリーが加わるということは――

 ようやく、役者が揃うということなのだ。

 

 マリーは嬉しそうに頷くと、クッキーを指先で支え、小さくかじって口に運んだ。

 ジュリアン王子がその様子に目を細める。

「今日のお菓子も美味しいね」

「……はいっ」

 マリーがニッコリ笑って返事をした。

 その眩しい笑顔から、お菓子よりも王子と一緒にいることが嬉しいのだと、すぐに分かった。


 私はその様子をニコニコと見守り、クッキーを黙々と食べていた。




 和やかな時間がひと段落すると、マリーは決まって少し早く席を立った。

「では、わたくしはこれで……」

 どうやら、婚約者である私に遠慮しているらしい。

 そこがまた、いじらしくて可愛い。


 彼女の小さくなっていく後ろ姿を眺めながら、私は思わずほぅと息をこぼした。

「マリーは今日も愛らしいですわね」

「アンナは本当に、マリーがいるだけで楽しそうだね」

 ジュリアン王子がクスクスと笑う。


 けれど私は、じっと据わった視線を向けた。

「マリーは今日のために、数日前から悩み抜いてあのドレスを選んだのですわ。メイクだって大人っぽく見せようと、いつもと違う色を選んで……ちょっとくらい、褒めて差し上げればよろしいのに」

「…………そうなんだ」

 言葉にしなかった〝ジュリアン王子のために〟という部分に、彼が照れる。


 私は呆れてため息をつきながら続けた。

「しかも今日のお菓子は、マリーの苦手なアーモンドが入っていましたわ。気付いていまして?」

「だからアンナが、いつもよりたくさん食べていたんだね……」

 ジュリアン王子は目を見張って、すっかり腑に落ちた態度を取る。


 すっかり舞い上がっている王子には、私の言いたいことが最近ちっとも伝わらない。

 私は思わず小さく肩をすくめた。


 ……ダメダメじゃん。

 もっとマリーを喜ばせようとか、思わないのかしら??


 そして悶々とした思いが、少しずつ膨らんでいくのだった。


 


 ーーーーーー


 ある日、私が部屋のクローゼットで次の社交会で着るドレスを選んでいると、マリーがひょっこりと訪ねてきた。

 彼女に気付いた私は、ドレスに伸ばしていた手を止める。

「マリー、どうしたの?」

「……少し、様子を見に来ただけですわ」


 そわそわした彼女を不思議に思いながらも、そばに仕えていたメイドに「このドレスにするわ」と指示を出す。

 するとメイドは心得た様子で頷き、そのドレスを丁寧に抱きかかえて去っていった。


 少しして、マリーが私の隣に並ぶように静かに立った。

「緑色系のドレスが増えたね」

()()()()()家だからといって、緑が象徴だなんて……単純よね」

 ふたりして、クローゼットに並ぶドレスを何となく見つめる。

 するとマリーが、かすかに震える声で喋り始めた。

「……お、お姉ちゃん。小さい頃はよくお姉ちゃんのドレスとかオモチャとか、貰ったよね??」


 うんうんと聞きながら〝あ、これも物語であったセリフだ〟と薄っすら思い出す。

 

 たしか『だから、婚約者も私に頂戴』って言うんだよね〜

 え?

 もしかして小悪魔マリーが見れるの!?


 と、反射的に振り向き、妹の顔を食い入るように見つめる。

 マリーはそんな私に気付かず、前を向いたまま言葉を急ぐように続けた。

「それでね、もし婚約者も頂戴って言ったら……どうする??」

「もちろん、いっーー」


 私はとっさに言葉を飲み込んだ。


 あっぶない!

 いいわよって言うところだった!

 全然譲ってもいいんだけど……

 

 ちょっと待って。

 本当にあの王子でいいの? 

 マリーの目に入る相手が、今は王子だけだからって可能性も……

 せめて学園に入って、いろんな男の人を見てからでもいいよねっ!


 瞬時にそこまで考えた私は、返事を慌てて変えた。


「ーーっ嫌に決まってるじゃない。家同士が決めたことだから、個人の感情で簡単に変えられることじゃないわっ」

 マリーに嘘をつく後ろめたさから、私は冷や汗を流した。

 目を泳がせながら、そっとマリーの横顔を盗み見る。

 けれど思っていた反応とは違って、彼女はホッと安心して笑っていた。


「……そっか、よかった。いくらなんでも婚約者まで私に差し出さないよね〜。お姉ちゃんには誰よりも幸せになって欲しいから、ちょっと試しただけ」

 ニッコリ笑ったマリーが振り向くと、一瞬だけ泣きそうな顔をしてグッと唇をかんだ。

 その表情を見られないように、すぐに顔をそらす。


 私のことを思って、ジュリアン王子への気持ちを押し殺そうとしているのが、バレバレだ。


「〜〜〜〜ッマリー!!」

 私も泣きそうになりながら、マリーをガバッと抱きしめた。


 なんて可愛らしいんだろう!

 なんて姉想いの優しい子なんだろう!!

 天使すぎやしませんか!?

 絶対、幸せにしてあげるからね〜!!!!




 ーーこうして、マリーへのシスコンぶりが最高潮に達してから、妹の学園生活が始まったのだった。




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