表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹が可愛すぎて悪役令嬢になりました  作者: 雪月花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/9

5:あざと可愛い


 ジュリアン王子に恋してしまったマリーは、最近ため息が増えた。

 ぼんやりと宙を見つめては、物言いたげな視線をこちらに投げてくる。


 ――どう見ても、恋煩(こいわずら)いだ。


 そんなマリーは、今も潤んだ瞳をそっと私に向けていた。

 一緒に勉強をしている彼女の手が、さっきからずっと止まっている。

 マリーの隣で机に向かっている私は、涼しい顔をして気付かないフリをしていた。

 内心ニヤニヤしながら。


 恋する妹を見るの……楽しいっ!


「……いいわよ、次のお茶会に参加しても」

 私は〝お姉ちゃんは何でもお見通しよ〟とでも言いたげに、フフンと笑ってマリーに言った。


「え? ……ジュリアン王子がいいって言ったの?」

「ううん、でもいいんじゃない? お姉ちゃんが許します。むしろ王子よりマリーと喋っていたいもの」

「…………さすがにお邪魔じゃない?」


 私の大袈裟なセリフは無視するようになったマリーが、怪訝(けげん)そうに首をかしげた。

 私はつい、じっとりとした視線を返してしまう。


 ……どうしよう。

 妹が出来た人になってしまった。


「もっと物語みたいに、グイグイと……自由奔放に行動してくれてもいいのに」

 思わず心の声が漏れた。

「……??」

 けれどマリーには聞こえなかったようで、私を見て首をかしげる。

 そんな彼女の反応も気に留めず、私は考え事を続けていた。


 まぁでも……

 だいたい物語通りねっ!


 うんうんと大きく頷ずき、ひとりの世界に浸っていると、「お姉ちゃんって、なんだか変わってるよねぇ」と、さすがのマリーも眉をひそめていた。




 **===========**


「ということで、マリーも参加することになりましたわ」

「……ということで? 何につながったんだい??」

 いつものお茶会で、開口一番に告げた私の一言に、ジュリアン王子が苦笑する。

 人の良い彼は、いきなり妹を参加させるという私の身勝手さを、笑って許してくれていた。


 マリーは厚かましい姉とは違い、私たちの間で身を縮こませていた。

「……ぉ、お邪魔します……」

 それに気付いたジュリアン王子が、優しく笑いかける。

「そんなに緊張しなくていいよ。アンナの妹ってことは、僕の妹でもあるし」


「ありがとう、ございます……」

 瞳を輝かせたマリーが王子を見つめ、ポッと頬を染める。

 その様子を私はニヨニヨと眺めながら〝物語でもそんなセリフあったなぁ〜〟と思い出していた。



 ーー物語では、妹のローナが無理矢理お茶会に割り込んだ。

 アンナが(たしな)めても、彼女は王子にだけ上目遣いで甘える。


「私もジュリアン王子とお話ししたかったんですぅ。ダメでしょうかぁ?」


 そして人の良い王子は、決まってこう言うのだ。

「いいよ。アンナの妹ってことは、僕の妹でもあるし」


 それから味を占めたローナは、毎回お茶会に参加するようになり……

 猫撫で声で「お兄様ぁ」と、王子を呼ぶようになったのだ。



 マリーが呼んだら……どうなるのかしらっ!?

 と、ワクワクしてしまったので、あえて私から切り出してみた。


「そうね。マリーにとっては兄になるのだもの。ジュリアン王子ではなく『お兄様』でよろしいのではなくて?」

 そう言ってから私はカップを手に取り、優雅にほほ笑んでみせた。

 するとマリーは肩をピクリと震わせたあとに、おずおずとジュリアン王子を上目遣いで見た。


「お、お兄様……」

「…………っ」


 これにはさすがのジュリアン王子も照れたようで、フイッと顔を逸らし「何だか慣れなくて……」とモゴモゴ言った。


 あぁ!!

 王子も絶対キュンとしてるっ!!

 このあざと可愛いマリーの様子にっ!!


 けど、なんか……

 なんかーー

 


「許せない……」


「「えっ?」」


 私の低い声に、王子とマリーが思わず振り向く。

 私はカップをダンッと机に置いて、言い放った。


「本当のお姉ちゃんは私だけなんだからー!!!!」


 私の魂の叫びに驚いたのか、そばの木に止まっていた鳥たちが一斉に羽ばたいていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ