表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹が可愛すぎて悪役令嬢になりました  作者: 雪月花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/11

10:卒業パーティ


 そしてとうとう、卒業パーティーの日がやってきた。


 ……頑張ったぁ〜

 この日のために、頑張ったよ私!!

   

 悪役令嬢としては、上出来だったんじゃない?

 何故かマリーとの仲は、ますます良好だけど……

『お姉ちゃんが王太子妃の心得を教えてくれてる!』って感じで、期待に満ちた顔で見られてるような気がするけどっ!


 予想外の結果にはそっと蓋をして、私はマリーと一緒に会場の扉をくぐった。

 並んで入場すると、すでに集まっていた生徒たちが一斉に私を見る。


 それもそのはず……

 ジュリアン王子のエスコートなしで、私が入ってきたからだ。

 

 ……マリーはともかく、王子からはいい感じに嫌われたんだよね。

 私のエスコートも断られたし、今日ここで何かを発表する計画が、裏で進んでいるみたいだし。

 ふっふっふっ。


 思った通りの流れに、ニヤニヤしながら会場の中央まで進み出た。

 少し距離を置いて見守る生徒たちが、ざわざわと囁き合う。


 そんな中、私は背筋をピンと伸ばし、彼らをゆっくりと見渡した。

 この日のために仕立てたドレスを、見せびらかすように。

 いつ始まるのかしら?と、キラキラした眼差しも向けてしまう。


「お姉様、わくわくしてる?」

 隣にいるマリーが、わんぱくな子供を見るような目でクスクスと笑った。

 どうやら彼女には、()()()()()()()を心待ちにしていた姉に見えているらしい。

 その様子から、彼女だけが知らないようだ。

 この場で何が行われるのか。


 ……サプライズってわけね。

 やるじゃない、ジュリアン王子。


 私は思わず口元をゆるませて、マリーを振り返った。

「そうじゃな……はぅっ!」

 途端に彼女の眩しさに目がくらみ、体をのけ反らせる。

 妹もまた磨き上げられたドレス姿で、ひときわ輝いていた。


「…………」

 マリーは、今日何度目か分からない私の反応に、無言で呆れていた。


 美しい……

 美しすぎるぅ……


「お姉様、拝んでるの?」

 手を合わせ出した私に、思わずマリーが声をあげる。

「マリーが女神様に見えて……」

「変な儀式にしか見えないから、やめてよ」

 妹が愛らしく頬を膨らませていると、私の背後からひときわ大きな靴音が響いてきた。


 コツコツと一直線に向かってくる足音。 

 会場にいる生徒たちの張り詰めた空気。

 そしてーー

 私の背中に突き刺さる視線!


 ついにこの時が来たんだと、私は心の中でほくそ笑んだ。


「アンナ、君に話がある!」

「……何でしょうか?」


 もったいぶったように振り向くと、案の定ジュリアン王子が立っていた。

 彼もこの日のために、非の打ちどころのない正装に身を包んでいた。

 カフスボタンやクラバットを飾る宝石を、マリーのアクセサリーとしれっとお揃いにしている。


 ……物語の、筋書き通りね。


 品定めするように下から上へと視線を滑らすと、怒りに満ちた彼の瞳と目が合った。

 それが合図だったかのように、王子がすぅっと息を吸う。

 同時に場内がしんと静まり返った。


「君との婚約は破棄させてもらう! アンナの悪意ある行為は、王太子妃に相応しくないと判断したからだ!」

「…………悪意ある行為?」

 私はわざとらしく扇子を広げて、口元を隠した。

 扇子の奥から、ジュリアン王子を(さげす)むような視線を向ける。


 ここまで来たんだから、この場を盛り上げるのに一役買いましょう。

 

 くつくつと愉快そうに笑っていると、王子が厳かに罪状を並べ始めた。


「一部の生徒への脅迫」

「……あぁ、マリーの悪口を言った方々ですわね。脅迫なんて、事実無根ですわ」


「特定の人物を称えた思想誘導の演説」

「諸事情でマリーに対して言えなくなってしまったので、鬱憤(うっぷん)が溜まりまして。妹が可愛いと宣言して何が悪いんですか?」


「そして……()()()誹謗中傷だっ!! 君が生徒たちの前で僕をなじるせいで、王宮でもひそひそされる始末だ! どうしてくれる?」

「それはーー」

 

 私は眉をひそめ、言葉を切った。

 一拍置いてから声を張る。


「ーー認めましょうっ!」


 突然始まった寸劇に、見守っていた生徒たちからもどよめきが起こる。

「フフッ、認めるんだ」

「マリー様のことになると、人が変わるわよね」

「王子もこんな場所で言うなんて……ククッ」


 そんな周りの声を打ち消すように、ジュリアン王子が大声で宣言した。


「よってアンナとの婚約は解消し、代わりに妹のマリーと婚約する!」


「「え?」」

 私とマリーが声を揃えた。


 それまで控えていたマリーが、ためらうように前へ出て、私の隣に立った。

 喜びと罪悪感が混じった複雑な表情を浮かべ、おずおずと声をかける。

「おねえ…………っ!?」

 けれど私の顔を覗き込んだマリーは、息を呑んだ。




 ……顔を伏せた私は、おろした両手を握りしめたまま、わずかに震えていた。


 悲しみに打ちひしがれたその姿に、誰もが言葉を失う。

 

 けれど私はーー


 はらわたが煮えくり返っていた。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ