part2 エルフの街''リヴァリエル''へ
光が弱くなるとそこは森の中だった。こんな感じなのか。森の中は静かで、ゼオルヴァの言っていた枯れてしまった町には想像がつかないほどだ。
(そりゃそうだろ。枯れたのは森ではなく、街だ。おまえの試練は街を立て直すこと。その辺しっかりしとけよ。)
「何だ!?何でゼオルヴァの声が聞こえるんだ?」
(そういう設定よ、なんかだいたい転生したときってスキル獲得すんじゃん?だからせめて俺の声が聞こえるだけでもあげといた方がいいのかなって。)
「普通スキルってそんな適当に付ける?」と呆れながらも、
「じゃあエルフの町に案内することくらいできるよね。」と皮肉たっっっぷりに頼むと
(そのくらい出来るわ!私を舐めるんじゃない!) と目の前にマップが表示され、その上に矢印が表示される。
(その矢印の先にエルフたちの街''リヴァリエル''がある。そこに行ってさっき渡した紙みたいなやつ見せるとその街の長になれる。)とそんなに簡単にできるもんなのかと思ったのは置いといて。
「とりあえずそこに行けばいいんだな。ところでエルフって魔法を使えるのか?」
(勿論だ。エルフたちの魔法能力は、他の民族よりも飛び抜けている。人間、ドワーフと大陸を三等分しているほどだ。) へぇ~そんなにエルフって強いのか。でもだったら俺が街造りする必要ないんじゃない?まあ行ってみれば分かるさ、と言われ渋々森の中を歩いていく。
それから数分歩くと、リヴァリエルに到着した。すると、エルフたちがざわめき始めた。何だ?と思っていると、
(おまえ人間だし、全裸だからな。)と言われる。はっとして下を向くと何も着ていなかったのだ。
「どうすんだよ!どうにかしてくれよ!」とゼオルヴァに怒ると、時間が止まり、パッと制服が着せられた。
(もう大丈夫だ。一応エルフたちの記憶もなくしておいたからな。まあいつでも記憶は戻せるけどな。)
ゼオルヴァに弱みを握られてしまった遼であった。
すると、時間が始まってある一人のエルフが話しかけてくる。
「冒険者の方ですか?こんな所来ても何もないですよ。」
「いや、冒険者ではなくて。」といってゼオルヴァに渡された紙を見せると、
「失礼しました!創造主の使いの方でしたか!こちらへどうぞ!」と少し大きな屋敷の部屋に案内された。
(おじさんってそんなに凄いのか?)と聞くと
(私を舐めるでない!創造主だぞ!)と怒られた。っていうかなんでエルフたちはゼオルヴァのことを知ってるんだ?まあいいか。
自分の部屋となる所に案内され、古びたソファに座った。
「先程は失礼いたしました。私の名前はセリフィア。この町の元町長の娘です。父から話は伺っています。この町の運命を宜しくお願いします!」とかしこまられて、こちらもかしこまって
「いえいえこちらこそ。結城遼と申します。ちなみにお父様は?」
「父は昨年亡くなりました。」
「申し訳ない。辛いことを思い出させてしまって。」
「いえいえ大丈夫です。ところでこの町の町長になってくださるんですよね?」と聞かれ、
「勿論です。」と自信満々に答える。それとは裏腹に、
(ゼオルヴァ、これからどうすればいい?)と聞いてみた。
(何も考えずに引き受けたのか?) そりゃそうだ。俺はちょっとモテてる高校生だからな。
(とりあえず街の現状を知ることから始めろ。そのあとは私は何も手を貸さないぞ。)まあいいか。
「それでこの街の状況を知りたいんだけど。」
「その前に町長室にご案内します。そこに資料をお持ちしますので少々お待ちください。」
セリフィアに先に案内してもらった。思ったよりも広い部屋で、町長の仕事に必要そうなものは一式揃っていた。数分後、ほかのスタッフ?みたいな人たちとともにたくさんの資料を抱えて帰って来た。
「お待たせしました。これが街の地図、王国の地図、世界地図、人口の推移や、戸籍、定期的に行ってきた国に対する不満などがあるかどうかのアンケートなどです。」と、十分すぎるほどの資料が届いて正直驚いている。で、ここからどうしよう?あっそうだ。
「王国の地図があるって事は、リヴァリエルは王国の領土なの?」
「はい。私たちの待ち、リヴァリエルはエルフの王国、リスト王国の領土になります。王国はさらに細かく12の州に分かれています。その中で、リヴァリエルは12ある州の中で元も貧しい州、アストラス州に属しています。」
なるほど。この街は結構貧しい状況にあるのか。でも見た感じは貧しい感じはなかったけどな。まあ、まずはこの街の経済状況の回復から手を付けなければならのか?
「この国の通貨は何を使ってる?」
「リスト王国ではマイスという単位の通貨を使用しています。ちなみに、人間の国、ライド帝国は、シード、ドワーフの国、ライディス王国はエディスという通貨を使用しています。」
なるほど。国ごとに違う通貨を使用しているのか。すると、この街の収入と支出の推移など細かく書かれた資料を見つけた。よく見ると、収入に対する支出の割合が大きく上回っている事が分かる。
「何でこんなに支出が多いの?」
「それは、この街を見ていただくと分かります。この街は最も貧しい州に属しているのに、街の整備は整えられています。私の父、前町長がその分野を重点的に開発していたので。」
確かに。道も舗装されていて、街灯もある。住民たちの家も結構しっかりとしている。ということは、この世界の技術力は結構発展しているんだな。
「ちなみにこの街に特産品みたいなのってある?」
「農作物が有名ですね。ライド帝国やライディス王国にも輸出しています。」
「エルフは魔法が使えるって聞いたんだけど、魔法関係の製品とかは作ってたりしないの?」
「魔法に関わる製品の多くは、王国からの輸入がほとんどで、この街で生産している人は、数人しかいないです。」
「税金を徴収したりしてる?」
「してはいるのですが、全て国に回収されてから、州ごとに決められた分の税が戻って来るというシステムになっています。」
税金にはあまり期待できないな。どれだけ収入を増やし、支出を抑えるかだな。少し集中したかったのでセリフィアには部屋から出て行ってもらった。ここからが沢山の資料たちとの格闘が始まった。
セリフィアが部屋から出て行くと、まずこの街の人口を確認した。すると、街自体はそんなに大きくはないのだが、人口がおよそ1万人ほどいることが分かった。この中で仕事に就いている人は9割以上。そのなかで半分の人数が農家をやっていることが分かった。だからこそ他国へ輸出しているのだろう。1割は近くにある鉱山での採掘作業を行っている。1割はその取れた鉱石を製品などに加工している。工場で働いているらしい。2割はその商品や、農作物など生活に必要なものを販売して生計を立てている。いわゆる商業ってやつ。残りの一割には、この街のちょっとした軍隊のようなものに500人、大工や医者、教師、魔法製品の製造などの仕事に就いている。子どもを除くと、働いていない~いわゆるニート~は200人ほど。
「思ったよりもニートってどの世界にもいるもんだな。」
さあ、ここからどうやって経済を発展させていこう?