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2.今の内に都合の良い夢をみておきなさいな。全てを知った後に慌てふためいても、もう遅いってものよ

ヒロイン飲酒中……グビグビ

「ふぅ……」


 冷たいシャンパンで喉を潤し、幾分か冷えた頭で改めて会場に目を向ける。

 準備期間が短かったので突貫工事感は否めないも、業者やスタッフは無茶を承知で引き受けてくれたのだ。不満どころか感謝の言葉しかない。


「それでも自分勝手なクズは文句たらたら言いそうであるけど……」


 そう思いながら、テーブルの一角。綺麗に着飾った貴族令嬢達に目と耳を向ける。




「みました?アーデル様、グラスを握り潰すだなんてはしたないにも程がありますわ」


「仕方ありませんわ。デルフリ王太子様に全く相手されないのですもの。ですが、あんな態度されたら相手にされなくて当然でしょうに」


「デルフリ様もあんな田舎娘を娶らなければならないなんて、可哀想だわ」


「でも大丈夫ですわ。デルフリ様もついに決意したって噂ですから」


「ついにってやつですわね」


「所詮は辺境の田舎娘には分不相応ってことね」



 ひそひそではない、ほとんどアーデルに聞かせるかのような音量で話す貴族令嬢達。

 アーデルはそれらの声を話半分程度に聞き流しながら別の一団、貴族令息達に目と耳を向ける。



「おーこわいこわい。グラスを握り潰すだなんて、どんな育ちすればああなるんだ?」


「辺境の田舎育ちだからこそ……だろ」


「そうだな。骨の髄まで田舎臭さが沁みついてるし、何よりあの不吉な黒髪。あんなのを未来の王妃として敬うなんて拷問だよな」


「その点クラーラ様は最高だ。義姉と違って美しい金色の髪をして可憐でしかも分け隔てなく優しいと来たもんだ。彼女こそ未来の王妃にふさわしい!!」


「自分を虐げてる義姉にすら優しいもんな。本当、クラーラ様の爪の垢を飲ませたいほどだ」


「飲ませても変わらんだろ」


「そうだな。はっはっは」



 こちらは義妹のクラーラを虐げる義姉アーデルの話題で盛り上がっていた。


 その後は双方でデルフリとクラーラがどれだけお似合いかを確かめ合っている。


 義姉に虐げられた義妹が王太子に救い出されて『真実の愛』の元に結ばれる。義妹は幸せを掴み、逆に義姉は今までの行いを咎められて落ちぶれてしまうという、最近流行りだした寸劇をなぞらえながら……



「それも仕方ないといえば仕方ないわけだけどね。なにせ現王は10歳も年離れたブリギッテ様と政略結婚だもの。

 そこはブリギッテ王妃様も同情できるからと平民だけど『真実の愛』でつながっていたという側妃ハイジ様の後ろ盾になって二人の仲を認めたそうだし」



 それでも国王には正妃と子作りという義務はある。

 だが、国王は正妃との子作りを拒否して側妃とばかりやるという恩を仇で返してたわけだ。


 王国をいつでも侵略できるだけの国力を持つ帝国との同盟の証として嫁いできた皇族直系でもある皇女を不当に扱うなんて、この時点で愚王もいいところ。

 王妃とその直属の臣下達が穏健でなければ……帝国の上層部が王妃様の意を酌んでなければ、とっくの昔に首と胴体が永遠のお別れしてるであろう。


 愚王がいまだに国王として君臨できてるのは、あくまで王妃達や帝国の温情にすぎない。



 なのに、クズの周囲は王妃の事を年増のくせに若い側妃を嫉妬して暗殺した悪女と思いこんでいる。

 側妃が亡くなられたのはあくまで事故だというのに、都合の良い『真実の愛』を絶対視するクズ達は断固としてそれを信じない。



 そんな有様だ。

 彼等はアーデルが『がさつな田舎娘な癖して汚い手を使って無理やり婚約者の座を奪い取った卑怯者』で『いつも笑顔で分け隔てないやさしさを向ける義妹クラーラを虐げる悪役令嬢』と思い込み、自分達の行動は正義だと本気で信じ込んでいた。



 自分達が正義と思い込んでる物が偽りだらけだと気づかないまま……


 そんな曇りきった目をした連中の戯言なんて、耳に入れるだけ無駄というものだ。

 それに、彼等が全ての事実を知った際に襲われる絶望の表情を思い浮かべたら……



「くすくす。今の内に都合の良い夢をみておきなさいな。全てを知った後に慌てふためいても、もう遅いってものよ」



 もちろんこれは負け惜しみではなく、夢から覚めた者達は皆例外なく絶望したのは言うまでもない。

ざまぁ劇によくある『もう遅い!』フラグ入りましたw

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