7話 はじめての戦闘
「ミミ? ミミミィ~?(あれ? リリティは行かないの?)」
「わ、わたしには無理だよぉ! だってわたし、ロクに攻撃魔法も撃てないし……!」
わたしは生まれつきとっても魔力総量が多いらしいけど、それを操る魔力制御のセンスがこれっぽっちもない。
だから簡単な身体強化魔法しか使えないのだけど、それも重い物を持ち上げられる程度の練度しかない。倒せても、せいぜい初級魔物までが限界なんだ。
「よし! 行くぞ、オメーら!」
「「おぉー!」」
ベヒーモスの群れの中に突入していく冒険者風の方々。何とも勇ましいというか、さすが常日頃から武器を携行しているだけのことはあるね。
皆さん、それなりに腕に覚えがあるようで、ベヒーモスの群れが相手でも良い勝負をしている。
「さ、さすが冒険者! これならベヒーモスの群れも倒せるんじゃ?!」
おそらく、ベヒーモスの数が一〇体なら皆さんでも何とか倒せたと思う。
でもベヒーモスの群れはその倍の二〇体はいる。多勢に無勢で、冒険者の方々は焦燥を滲ませていた。
「くそっ! 思ったより数が多いな!」
「おい、大丈夫か?! かなり出血してるぞ!」
見ると、冒険者のひとりがベヒーモスに肩を噛まれたようで、膝を着いて顔を歪ませている。
かなり出血しているし、あのままでは命が危険だ。
「どどど、どうしよう、ミーちゃん?! あの人、大怪我してるよ~!?」
動揺するわたしに対して、それでもミーちゃんは黙って状況を静観しているだけだった。
わたしはミーちゃんがとびきり優秀な召喚獣だって知ってる。もしミーちゃんがポテンシャルを発揮してくれれば、あのベヒーモスの群れくらい余裕で倒してくれるんじゃ?
「み、ミーちゃん! ミーちゃんはとっても強い魔神なんだよね?! だったら、あの人たちを助けてあげられるよね?!」
「ミミィ~。ミミミ、ミィ? ミミミミミ。(それはもちろん。でも、リリティも少しは戦い方を覚えたほうが良いんじゃない? 大魔女エリクシアを倒すなら、今のおいらだけの力じゃ足りないし)」
「で、でも……。……わたし、魔力制御が下手すぎて攻撃魔法が使えないんだよ。一応、身体強化魔法は使えるけど、わたしの身体強化なんてベヒーモスには……」
「ミミミミミィ~! ミミミミ、ミィ! ミミミミミミ!(身体強化ができるなら十分だよ! 今のリリティには、おいらの魔力も加算されてるんだから! きっと、びっくりするくらいパワーアップできるよ!)」
「そ、そうなのかな? ……わかった、やってみるよ」
そういえば、召喚士は召喚獣の魔力も魔力総量に加算されるって、昔読んだ古文書に書いてあったっけ。それが本当なら、ミーちゃんを使役した今のわたしなら超絶パワーアップできるかも?
わたしは意識を集中して、身体強化の魔法を発動する。刹那、わたしの体内から青白い光が溢れ出す。
同時に、筋力、持久力、敏捷性など、ありとあらゆる身体能力が大幅に強化された感覚に包まれた。
「こ、これが、わたしの力……?」
信じられないよ。とてつもないパワーを感じる。
正直、これまでの一〇倍以上のパワーだ。
「ミミィ~! ミミミミミィ!(良い感じだね! 今のリリティなら、きっとドラゴンでもぶっ飛ばせるパワーがあるよ!)」
たしかにこれならいけるかも?
今、わたしが立っている馬車の荷台からベヒーモスの群れまでの距離は三〇メートルくらいあるけど、今のわたしなら、一瞬でそこまで疾駆できる気がした。
「と、とにかく、やってみるよ!」
このまま冒険者の皆さんを見殺しにするわけにはいかない。わたしは荷台から飛び降り、全速力でベヒーモスの群れに突撃した。
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