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3話 ミーちゃんは超凄い魔物だった?!

 木々の隙間から木漏れ日が差し、小鳥たちが春の到来を喜ぶように歌っている。若木の香りが鼻腔をつき、わたしは新鮮な空気を吸いたくて大きく深呼吸した。 


「ここが、いつもわたしが薪を取りに来る森だよ! 美味しい木の実もたくさん取れるし、キイチゴも狩れるんだぁ! あ、キノコには毒があるのもあるから勝手に食べちゃダメだよ~!」

「ミィ~!(了解!)」


 わたしは身体強化の魔法を使って、それなりの太さの木の枝を見つけてバキッとへし折った。身体強化の魔法を使えば、わたしみたいな小さい女の子でも丸太くらいの太さの枝なら簡単にへし折れる。


「ミィ、ミミミィ?(その枝、薪に使うの?)」

「うん。わたし身体が小さいから、ちょっとずつしか家に持って帰れないんだけどね」

「ミミ? ミミミミミ? ミミミィ~!(え? それって効率悪くない? おいらならもっと効率良く薪を作るけどな!)」

「え? でもどうやって?」


 首を傾げるわたしに対して、ミーちゃんは得意げな顔をしてから太めの大木のほうに近づいていく。


「ミィイイイイ!」


 そして気合を入れると、ミーちゃんの身体から凄まじい魔力の奔流が生じ、辺りに強烈な旋風が巻き起こった。


「え? え? えええ?! み、ミーちゃん、なんか凄いよ……?!」


 魔法使いとして未熟なわたしでも、ミーちゃんの体躯から溢れ出る魔力の甚大さは見て感じ取れる。多分、一国を代表する宮廷魔術師クラスの魔力を放ってると思う。

 ミーちゃんが発動したのは身体強化の魔法だ。でもわたしが発動している身体強化魔法とは、根本的にレベルが違う。デコピンで分厚い鉄板すら貫く程の圧倒的なパワーを生み出しているんだ。


「ミィイイイイイイイイイイイイ!」


 そして勢いよく大木に飛翔したミーちゃん。ミーちゃんが大木に頭突きした瞬間――辺り一帯を巨大地震のような縦揺れが襲い、動物たちは吃驚しながら遁走していった。


「……ひぃい!」


 すっかり怯えてしまったわたしは、頭を抱えながらしゃがみ込む。おばあちゃんが残してくれた魔導書に封印されていた魔物だから、ひょっとしたら凄い魔物なんじゃ? とは思っていたけど、まさかこんなに凄いとは思ってなかったよ……!

 わたしは恐る恐る目を開け、周囲の状況を確認した。


「う、嘘……」


 言葉を失った。ベテランの木こりでも切り落とすのに数日はかかるはずの大木が……ミーちゃんのたった一度の頭突きで、へし折られていたのだから。


「ミィ~! ミミミィ! ミィ~!(へへん! どんなもんだい! 凄いでしょ!)」

「す、凄いってもんじゃないよ?! ミーちゃん、いくら何でも強過ぎだよぉ?!」


 まるで大砲みたいな威力の頭突きだったよ?! ミーちゃん、もしかして上級魔物のドラゴンより強いんじゃ……?!


「ミミ、ミィ~! ミミミィ~!(さて、ここからが本番だ! 見てて!)」


 言って、ミーちゃんは体毛を針のように飛翔させ大木をカッティングしていく。ミーちゃんから放たれた体毛は綺麗に樹皮を削り、薪の形に加工していく。

 そしてものの十数秒で、目の前に数か月分の薪が山積みになった。


「す、凄すぎだよ、ミーちゃん……」


 感動以上に畏怖を覚える。ミーちゃんは「これくらい、ぼくにかかれば余裕だよ!」と言って鼻を高くしているけど、何者なの……?!


「で、でも、こんなに大量の薪、わたしの手じゃ持っていかれないよぉ。……どうしよう」


 懊悩していると、ミーちゃんは「任せろ!」と鳴き、大きく息を吸った。そして息を吐くと同時に、凄まじい旋風を巻き起こして大量の薪を空高く飛翔させる。


「いやぁあああああああっ!」


 体重の軽いわたしはミーちゃんの息で吹き飛ばされそうになったけど、近くの木に抱き着き辛うじて耐えた。

 一方、大量の薪は空高く舞い上がりあっという間に見えなくなる。


「……み、ミーちゃん! 薪、無くなっちゃったよぉ!」

「ミミィ~! ミミミミミ! ミミミィ~!(大丈夫! 薪はリリティの家の前まで飛ばしておいたから! これでしばらく薪を取りにこなくて大丈夫だね!)」

「い、家まで飛ばした……?」


 さ、さすがにそれは嘘だよね。この森から家まではかなり距離があるし、よほど魔力制御に優れた風魔法が得意な魔術師でも、わたしの家まで大量の薪を運ぶなんて芸当は……。

 さすがにハッタリだと思う。ミーちゃんは見栄を張っているに違いない。

 そう思っていたけど……、……家の前に戻ると、本当に大量の薪が山積みになっていた。

 もうね、言葉を失うしかなかったよ。

数ある作品の中から本作をお読みいただき誠にありがとうございます!


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